- Amazon.co.jp ・本 (478ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167431099
感想・レビュー・書評
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猪瀬直樹が三島由紀夫の生涯をきる。
実は、ろくに三島由紀夫って読んだことがない。多分「潮騒」ぐらい。それも、なんだかなぁって…。それより、軍服の写真だったり、割腹自殺とかで、すごいファッショの匂いがして近寄りたくなかったのだ。
なので、祖父、父と続く官僚の家に育ったとか、祖母が病気で彼をほとんど閉じ込めて育てたとか、そういうバックボーンは全くしらなかった。
…これじゃあ、ああいう方向に走っていっても仕方ないか…。
しかしながら、人がその育ち方で歪むのは、多かれ少なかれ誰にでもある。三島は、文学というその歪みを利用できる技を持っていたのに、それで昇華できなかったのか。とその不器用な生き方に哀れを感じた。
「ピカレスク―太宰治伝」もそうだったが、猪瀬直樹の目は常に冷静だ。不思議なほど、主観もない。(あるとしても、それは構成とか言葉の選択にあって、文章そのものはとても客観的である) だからこそ、三島の不器用さがあぶり出しのように浮かび上がってくる。
上手い。
次は、川端康成の本、「マガジン青春譜―川端康成と大宅壮一」だ!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
修善寺に向かうため東海道線の三島ゆきに乗った。雄だとちょっと重い。夫ならちょっと軽いかんじ。ペンネームは三島由紀夫とした。冗談ではない。バルザックが病床で自分の作中で描いた医者を呼べといった。作家はときどき現実を混同する。三島は言った。私は決して混同しない。いつも現実の対立と緊張から作品が生まれてくる。インタビュー記事より。あなたを突き動かしている情熱って何なのですかね?戦時中に育って二十歳までのことはご破算だったといわれたときにその人間がどういうことを考えるか。。。それだけのことですよ。官が悪くて民が良いみたいな風潮あなたが悪くて私はわるくないみたいな逃げ口上。官僚一家の血とはいったい何なんだろう。日本っていったい何だろうって。葉隠を愛読した三島。人間は明日死ぬかもしれないよくできた操り人形だと。
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三島由紀夫というよりは、祖父・父・そして三島の平岡(三島の本名)家3代に渡る歴史に重点が置かれている。その分、三島の作品自体には思ったほど触れていない印象を受けた。