豪雨の前兆 (文春文庫 せ 3-9)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167519094

感想・レビュー・書評

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  • ブエノスアイレスの旅の記憶、そこで案内してもらった人が夫妻で日本へ来た時の案内が一番印象に(関川エッセイは女々しいという感想のようだったが)。また文豪たちの暮らしの一端がわかるエッセイも。豆腐の値段からにじみでる光景など。◆漱石の入院。毎日刺身が出る。腹の上に乗せた一丁一銭八厘のこんにゃくを千切って食べては看護婦に意地汚いと怒られ。胃潰瘍の療法として熱した板こんにゃくを腹にのせて焼く、というのがあったとか。(p.76より)というあたりには時代を感じる。一時期、独歩と花袋が、飽きずに375g一丁一銭五厘豆腐ばかりたべてた、とかね。また、「経験を食べる」という一節が頭にのこる。最近読んだ「おいしい味の表現術」の「情報を食べる」に通ずるものがあるな、と。

  • 38047

  • 漱石先生のロマンティックを描いた、表題一連の文章は抑制が利いた筆致で見事に明治文学の息吹を伝えている。

  • 【本の内容】
    明治の文豪から昭和の文士、現代の作家まで、書かれた物を通じて過去に思いを馳せるとき、不思議と現在が垣間見える。

    樋口一葉、夏目漱石、司馬遼太郎、須賀敦子、藤沢周平、伊丹十三…。

    行間の一瞬から、彼らが生きた日常が浮かび上がり、鮮やかに切り取られる。

    名手による巧みなエセーを愉しむ二十二篇。

    [ 目次 ]
    1 操車場から響く音
    2 豪雨の前兆
    3 須賀敦子の、意志的なあの靴音
    4 東京旅行
    5 大久保利通の「発見」
    6 焼いた塩鮭の皮

    [ POP ]
    短いエッセイなのに静かに雨が降り続いているような重い文章だ。

    文豪達の作品を引いて、その作家の生涯をなぞっていく。

    本を開いている時間は、その場所に自分も立っているような気持ちなる。

    死者がこの本の中では脈々と生き続けているのだ。

    長い伝記でも出来ないことをこの量のエッセイで実現できる筆力はさすが。

    書く対象への入り込みと、反対に対象になりえないものの切り捨ての対比が鮮やか。

    「私はどちらかというと厭世的なタイプだから、泣き言をいいたがる。聞いてくれる人がいなければ、もっと泣く」とはあとがきの言葉だが、その心情をこれだけさらけ出し、読み物として質の高い作品になっている。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 明治~昭和までの文人達の作品を通して時代の変遷、空気感を伝えてくれる。
    未読の題材も多かったが、作品の解説が本旨では無く、作品を通して時代を見るという意味では問題無く楽しめた。

  • この本も関川夏央の得意範囲から少し外れた作品をまとめているように思える。いくつか面白い作品もなくはないが、残念。

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著者プロフィール

1949年、新潟県生まれ。上智大学外国語学部中退。
1985年『海峡を越えたホームラン』で講談社ノンフィクション賞、1998年『「坊ちゃん」の時代』(共著)で手塚治虫文化賞、2001年『二葉亭四迷の明治四十一年』など明治以来の日本人の思想と行動原理を掘り下げた業績により司馬遼太郎賞、2003年『昭和が明るかった頃』で講談社エッセイ賞受賞。『ソウルの練習問題』『「ただの人」の人生』『中年シングル生活』『白樺たちの大正』『おじさんはなぜ時代小説が好きか』『汽車旅放浪記』『家族の昭和』『「解説」する文学』など著書多数。

「2015年 『子規、最後の八年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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