- Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167525019
作品紹介・あらすじ
昔から様々な物語がウォーターフロントで繰り広げられてきた。本書は淀川、利根川、木曽川、筑後川を中心に、全国の河川の歴史と文化を解き明かす。都市づくり、町づくりが21世紀への環境問題の優先課題として論じられる今日、本書は水という最も基本的な問題を、自然と歴史と文化から見直した世評高い名著である。
感想・レビュー・書評
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日本の環境問題を取り扱った(といわれる)先駆け的名著だ。『沈黙の春』が1962年だから、それに遅れること18年の開きがあるが、単に環境汚染を取り上げているのではなく、日本人と河川・水との付き合いを諄々に説いている。このような視点はこの頃としては新鮮だった。
ブックオフ(のネット)でたまたま見つけたので入手し、3度めの再読に挑もうとしている。
手に入れたのは1990年発行の11刷で、初版は1980年だからよく売れたみたいだ。
三島由紀夫は本の価値は古本の価格に比例すると書いたが、この本はたったの220円。さすがはブックオフだけあって見る目がない。僕はこのような「非対称」の価値観(つまり目利き)だから、いつも超割安な本をここで見つけてしまう。買うのは高くても500円まで。ネットで注文して、近くのブックオフ店で手に入れるので送料もかからず効率もよい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
江戸時代まで物流の中心を担った河川がいかに重要な役割を果たしてきたかが見えてくる。淀川が琵琶湖、日本海を通じて北陸や東北の河川とつながっていたことを知ることで、各地の産業の成り立ちを理解しやすくなった。
利根川編以降は富山節が強くなるが、その趣旨は「環境問題とは何か」でも読んだ。
淀川編
・日本海側の平野では、冬に積もった雪が徐々に融けて水を供給してくれるため、米の単作地帯として発展した。北陸は暖流の影響で暖かく、近畿から近く、開発が早かったため、江戸時代後期の一人当たりの米の生産高は高かった。幕末の大阪に集められる米の7割近くが北陸と出羽の米だった。
・8〜9世紀に渤海は、沿海州に沿って南下するリマン海流にのって使節を送り、多くが能登半島に到着した。
・十三湊の安東氏は、瀬戸内海、熊野地方のほか、中国、インド、フィリピンとも交易を行った。
・江戸時代に大和地方や淀川下流部の自然堤防上では木綿やナタネ、タバコの栽培が発展し、魚肥の需要が増えて瀬戸内海の沿岸漁業が発展した。
・木綿が普及した後も、青苧は近江の蚊帳、越後の小地谷縮、奈良晒の原料として用いられた。
・岩木川流域など青森県一帯にはヒバ林が茂り、ヒノキの性質に近い。平泉の中尊寺や伊勢神宮の修築、能登の輪島塗りにも用いられ、安東水軍が君臨できたのもヒバのおかげ。
・秋田の米代川流域はスギの森林地帯。室町時代に竹のタガが発明されてスギの桶や大樽が出現してから、酒、味噌、醤油などの醸造業が発達し、都市の屎尿を農村に運ぶこともできるようになった。
利根川編
・利根川の瀬替えにあわせて、葛西用水路が利根川や荒川の旧河道を利用してつくられた。※現在は見沼代用水や羽生領用水などと合口とされ、埼玉用水路から分水。
・船戸と深井を結ぶ利根運河が開削されたのは明治23年。
・明治29年に河川法が制定され、河川の大改修工事に着手したのが現代の治水の始まり。
筑後川編
・水車の需要が大川の木工を育て、木工家具の木材需要が日田の造林を促した。