陰陽師 太極ノ巻 (文春文庫 ゆ 2-15)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167528157

作品紹介・あらすじ

安倍晴明の屋敷で、いつものように源博雅が杯を傾けている所へ、橘実之の娘、虫が大好きな露子姫がやってきた。何でも晴明に相談があるというのだ。広沢の遍照寺にいる僧が、眠る前に読経していると、黄金色をした虫が現われるが、朝には消えてしまうらしい。この虫の正体は-。「二百六十二匹の黄金虫」他、全六篇収録。

感想・レビュー・書評

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  • 虫愛る姫君の露子姫が前半に出てきて嬉しい!!

  • 短編が6篇。
    『百六十二匹の黄金虫』のきらきらと光って飛ぶ虫の群れを想像してうっとりしました。見てみたいものです。

    『棗坊主』の自分が亡くなっていることに気付いた恵雲の寂しい様子が切ないです。ほんの少しの道草のつもりが50年…それでも寺へ戻れただけ良かったのだろうか。

  • 安倍晴明の屋敷で、いつものように源博雅が杯を傾けている所へ、橘実之の娘、虫が大好きな露子姫がやってきた。何でも晴明に相談があるというのだ。広沢の遍照寺にいる僧が、眠る前に読経していると、黄金色をした虫が現われるが、朝には消えてしまうらしい。この虫の正体は―。「二百六十二匹の黄金虫」他、全六篇収録。

  • 呪について博雅が分かったような気がした時私も分かったような気がするし、博雅が分かってない時は私もあんまり分かってない気がする

    「陰陽師」の話はどれもあまり怖いと思ったことがないけど今回「覚」はちょっと怖いと思った

  • 「しんしんと雪が降りてくる。

    天から降りてきた雪で庭は、一面、白い。

    優しい雪であった。

    雪はあらゆるものの上に降り積もり、地上の何もかもを、

    清浄な天の白で覆ってゆく。」

    いいですね…。
    情景が一瞬で立ち現れるような。
    冷たくて優しくて白い。
    たぶん、雪の降る映像を見たり、実際の雪を見たりする以上に、鮮やかに“白”を感じる。

    そこが本というものの魅力かな。
    実際に目に見える以上のものを見せてくれる。
    行間含め文章をじっくり味わうと、果てしなく広い世界が目の前に広がる。

    そんなふうに、私の中には、動かしがたい確固たる陰陽師の世界がある。


    『陰陽師 太極の巻』 夢枕獏 (文春文庫)


    お正月といえば、まったりと平安絵巻でしょう。
    ということで、シリーズ6作目、(たぶん)文庫の最新刊!

    安倍晴明と源博雅が晴明の屋敷の簀子(すのこ)に座し、季節とともに移ろう庭の景色を眺めながら、ほろりほろりと酒を飲むシーンからこの物語はいつも始まる。

    何にもせかされていないゆったりとした時間をこの二人と過ごしたくて本を開く。
    時にはほそほそと降る雨を、時にはしんしんと降る雪を、そしてまたしずしずと散る桜の花びらをともに見つつ。
    100%脱力状態…。
    蜜虫になりたいねぇ。この際呑天でもいいけどさ。
    (って亀やん!)

    陰陽師はドラマや映画や漫画にもなったが、私はやっぱりこの原作の陰陽師が一番好きだ。
    あんまりそつがなく完璧、というよりは、ちょっとバンカラ晴明がいいな。
    白い狩衣にふうわりと身を包み、いつも飄々としててさ。
    聖人扱いするよりは、下世話なことに右往左往して大騒ぎをする都の人々を懇切丁寧に助けるお助けマンの晴明がいい。

    さて、この本は6作の短編から成っているが、その中で私が一番好きなのは「鬼小槌」という話である。

    まあ事件じたいはアホらしいというか何というか、女のもとへ通う途中に鬼に出会ってしまったがために鬼の手伝いをさせられることになってしまった平実盛が、恋のライバルの藤原中将を病気にさせる、という話である。

    ところが、この一件には蘆屋道満が絡んでいた。
    病が重くなった頃を見計らって自分が出て行き、病を治してひと稼ぎしようという魂胆だったのが、あっさりと失敗に終わる。
    道満いわく、あまりに寒いので何か温かくておいしいものを食べたかったんだそうで(笑)。

    晴明は道満を酒の席に招待する。
    炭のよくおこった火桶で暖をとり、こともあろうに晴明に酌をさせ、道満は幸せそうにお酒を飲むのだ。
    悪人に描かれがちな蘆屋道満が何だか憎めない。
    泣きそうになるところなんか子供のようだ。
    そしてこの話は、冒頭にも書いたように雪の描写が美しい。
    第1巻に登場した白比丘尼の話題も出てきたりする。

    あと、「針魔童子」の針をつかまえる晴明が何ともいえずかっこいい!


    作者のあとがきによると、縁側で晴明と博雅がお酒を飲みながら会話をするシーンはいくらでも書けるそうだ。
    マンネリをおそれない、とか言ってるし(笑)。
    一生書きそう、とか言ってるし(笑)。

    まあね、続きが待ち遠しくて仕方がない、とかいう類の本ではないんだけど、なんとなーく一生のんびりと付き合ってそうな…。

    次はいつこの二人に会えるんでしょうね。
    やっぱり楽しみかも。

  • 二百六十二匹の黄金虫
    幻想的で美しいな。そして不思議だ。

    鬼小槌
    最後とても楽しそうで良いなぁ。

    棗坊主
    「そこまでだ、晴明」っていいな。博雅の反抗。
    昔は同じものが見えていると、見えていると考えることもなく
    そうだと思っていたけれど、同じ体験は誰にもできないって本当だよな。

    東国より上る人、鬼にあうこと
    どうしてそれを美しく感じるのかというところは気になっていたけれど、
    美そのものを存在させるのは何かまでは考えていなかったな。
    西洋哲学のような気もするけれど、西か東かを問わず
    突き詰めて考えるとそういうところに行き着くのだろうか?
    哲学には詳しくないからよくわからないけれども。


    修行をしても何も思わないのは難しそうだ。
    その人に見えるように見えるのなら、本当のそれはどういうものなんだろう。
    相手の心を当てる以外の揺さぶりができないのではという気もする。

    針魔童子
    播磨と針魔か。少し播磨国についても学びたくなってきたな。
    命だけを取り出してみること/見せることはできないって
    他の巻にも出てきた気がするが、説明が変わると変わると復習になってよいな。
    仏教の本を読んでみたことがあるけれど、いまいち把握できずにいたけれど
    今読んでみたら前よりは意味を想像できるところが増えているかもしれない。

  • 大好きな陰陽師シリーズ
    二百六十二匹の黄金虫と播磨童子が好きだった

  • 陰陽師シリーズの短編集。
    良い意味で、いかにも安定の陰陽師シリーズ、と言った感。

    二百六十二匹の黄金虫で露子姫が黒丸を伴って登場し、「とても不思議なぶんぶんがいるのです、清明様」嬉しくなります✨

    ~~~~~~~~~~~~~~~
    ・二百六十二匹の黄金虫
    秋、露子姫、黒丸、遍照寺の明徳、寛朝僧正
    般若経から逃げ出した文字たち

    ・鬼小槌
    冬、平実盛、藤原中将、蘆屋道満、鬼
    猿叫の病

    ・棗坊主
    春の終わり、祥寿院の恵雲、北斗星と南斗星

    ・東国より上る人、鬼にあうこと
    春の終わり梅雨の前、平重清、鞍櫃に住む大鼠

    ・覚
    蛍の季節、源信好、藤原恒親、紀道孝、橘秀時
    さとり
    ・針魔童子
    秋、播磨の性空聖人、毘沙門天の眷属の善膩師童子
    逃げ出した針

  • いつもの通りの安定感

  • 「二百六十二匹の黄金虫」露子姫は異形の美形を連れた男装キャラでもある。まさかお経が伏線になってるとは・・・。
    「鬼小槌」すっかり飲み友になりつつある道満殿。
    「棗坊主」これはわりかしコンパクトかつベター。いや怖いけども。
    「東国より上る人、鬼にあうこと」久々に今昔物語集っぽいな。妖物の正体を探る方法が面白い。
    「覚」何コレめっちゃ怖いやんけ・・・。
    「針魔童子」健気さあまって困ったちゃん。しかし善膩師童子がなんでそんなに性空聖人に惚れ込んだのか知りたかった・・・いや、徳が高いからなんだろうけども・・・。

  • 二百六十二匹の黄金虫◆鬼小槌◆棗坊主◆東国より上る人、鬼にあうこと◆覚◆針魔童子

    著者:夢枕獏(1951-、小田原市、小説家)

  • シリーズ第7弾。

    今回も、「虫愛づる姫君」の露子が登場します。平安時代を舞台にとった小説では、女性たちが現代の小説のようなしかたで活躍することがむずかしいと思うのですが、本書の露子のキャラクターには、そうした制限を越え出ていく痛快さが感じられます。エンターテインメント小説としては、成功といってよいのではないでしょうか。

    女性キャラクターは多く登場しないものの、それを補って余りある晴明と博雅の色気を感じさせる会話も、おもしろく読みました。

  • いつも通り、どこかで聞いた話ばかり。(^^;
    ま、オーソドックスな奇談が骨格になっていますからね。
    キャラクターのやりとりが楽しめれば、それで良しというシリーズじゃないかと思います。(^^;
    今回は「棗坊主」が良かったかな。

  • 2018.4.1(日)¥180(-2割引き)+税。
    2018.4.24(火)。

  • 今回はあまり盛り上がるお話が無かった印象。清明が他人の前では博雅に丁寧な口調になるという設定もいきなり出てきた気がする。今までそんなこと無かったような・・・。

  •  京都に出張したときに購入しました、陰陽師シリーズ。すらすら読めるし、続きが気になるしで途中でやめられなくなりました。
     それにしても毎回登場する清明と博雅の縁側の酒宴シーン、おつまみが美味しそうです。清明の自宅の庭を眺めながらが多いですが、この雰囲気も最高のおつまみだよなー、いいなーと羨ましがってます。

     「鬼小槌」。雪見酒を飲みながら、雪について語る博雅。好きだなぁ、この完成。私もこんな風に世界を感じたいなぁ。それにしても鬼達にも一目置かれる道満。すごいねぇ。

     「棗坊主」。ちょっと切ない最後でした。うん、でも良かったのかな。

     「東国より上る人、鬼にあうこと」。ほらー、だから名前を聞かれてもほいほい名乗っちゃいけないんですよね。みんなうっかり名乗ってますが、自分もいってしまいそうで心配。それにしても追われるのは怖いですね。

     「覚」。この方法、清明でないと無理ですよね。私は雑念だらけで頭を無にはできないので、即食われるなと思いました。

     「針魔童子」。最初の生命の話。人はいつ死ぬか、か。うん、答えが出ないですね。

  • 心のなかを描く巻。おどろおどろしいのが少なくてしんみり読める。

  • 最近、頭をフル回転させながら読む本ばかり読んでいるので、ちょっと息抜きに♪
    安定の楽しさ面白さで良いリフレッシュになりました^^
    著者があとがきで「いつ、誰がどこから読み始めても、いつもの風景が広がっている」と書いていましたが、この型通りの展開が『陰陽師』の何よりの魅力だと感じます。
    どの本を手にとっても、どこのページを開いてもそこには晴明と博雅が仲良く座している・・・
    この安心感がいいなと♪

  • 表紙の絵柄が愛嬌があってなんともいえない可笑しさと可愛らしさ。
    やっぱり面白い陰陽師。博雅の季節や生命、美に対する優しい眼差しと考え方にいつもながらあったかい気持ちになる。どれも好きだけど今回は雪から始まった呪の巡りに気づくとこが一番好き。
    ちょっぴりトラブルメーカーの道満なんだけれど晴明や博雅とお酒を飲む時は本当に嬉しそうでそんなところが可愛らしく憎めないのよね。

  • 安定の面白さ。
    あとがきにもあったように、『マンネリをおそれない』これが本当にうまくいってるんだと思った。

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著者プロフィール

1951年、神奈川県出身。第10回日本SF大賞、第21回星雲賞(日本長編部門)、第11回柴田錬三郎賞、第46回吉川英治賞など格調高い文芸賞を多数受賞。主な著作として『陰陽師』『闇狩り師』『餓狼伝』などのシリーズがあり、圧倒的人気を博す。

「2016年 『陰陽師―瀧夜叉姫― ⑧』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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