- Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167549022
作品紹介・あらすじ
勤め先の小学校で、ヒロインは「あそぼ」とささやく子供の幻に出会う。そんな折、校内プールに女性の死体が…。その謎にせまる表題作ほか、夢の「場所」捜しから始まる内面の旅を描いて名作の聞こえ高い「たった一人」など六篇を収録。巧みな伏線、鮮やかな舞台設定。清新にして熟達の筆致をおたのしみください。
感想・レビュー・書評
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人がなかなか手放せないものの一つに「執着心」があると思っています。
『とり残されて』には表題作を含め七篇の物語が収録されています。
ある人や物に心が囚われていることを「執着心」というのならば、登場人物たちが、それぞれあるものに執着したがために起こってしまった物語、私にはそんなふうに思えました。
たとえば、殺したいほどの憎しみ。
たとえば、過ぎ去った十年の歳月。
たとえば、お金、うしろめたさ、愛、夢のなかの記憶……
それらを手放せなかった人物がたどり着く未来には、背筋が寒くなる結果が待っています。
逆に囚われた心を解放できた人物には、希望がちらちらと見えはじめます。
そのなかで中篇『たった一人』にあっては、主人公がこれから何処へ向かうのか、非常に気になる終わりかたでした。
なぜなら、主人公が執着していたものが明確化され、ある人物へと定まります。
私はその人物を取り戻すため、どこまでも追い続けようとする主人公の姿に怖いものを感じ、一歩引いてしまったのです。ところが解説には、それは主人公の力強さであると書かれていました。そうなれば、ラストの印象は自ずと全く別物へと変わっていきます。
これは執着ではなく「執念」なのかな。
全篇どれをとっても面白く、SF、ミステリ、ホラーな展開が用意され一気読みでした。
宮部みゆきさんてすごいな。
なんといっても物語の力が強くて、心を持っていかれてしまうのですから。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久しぶりの宮部みゆき。少し地味だけど、等身大の普通の女性を描くと抜群にうまいと思う。話しとしては現代の怪談、或いはSF的な味付の物が収録されている。
個人的には長編の方がいい作品が多い気もするが、短編も改めて読むと良い。デビューして30年くらい経っていると思うが、正に、現代版清張という感じがする。 -
郷内作品を読んでる途中に並行して読んでた
通勤時間でしか読まないからかやたら読み終わるまでに時間がかかった
文体がやけに90年代っぽくてあまり得意ではないから読みづらかった。
「囁く」は好き -
16/08/28
表紙がださい。。
けど中身は極上です。SFミステリーというのかな。どれもドラマにできそうだ。
・「九歳のときの僕──二人の先生を殺してやりたいと願っていた僕は、ずっとここにいたのかもしれません。とり残されて、ずっと待っていた。誰かが来て掘り起こしてくれるまで」(P61-62 とり残されて)
・訴訟とは、原告と被告の争いではない。それぞれが時と争うだけのことだ。(P79 おたすけぶち)
・運命を変えてはいけないなんて、戯言だ。それじゃ生きる価値もない。
どうしよう?どうしたらまた彼を取り戻すことができる?
どこを見たらいいのだろう。どの角を曲がれば、一度手放してしまった、彼の住む次元へ、彼が生きてあの事務所を開いている、あの褪せたカーテンの脇に立って窓から外を見おろしている、あの時間軸の支配するところへ戻れるのだろうか。
一度できたのだ。もう一度できる。梨恵子は思う。かならず彼を探しだしてみせる。きっと、きっと。あきらめずに目を開いていれば、ある日突然、ふと振り向いた拍子に、梨恵子が通りすぎた街角を左に折れてゆく、あの前かがみの肩を見かけるかもしれない。そうしたら、追ってゆこう。かならず追いつける。(P350-351 たった一人) -
1話目から学校で聞こえる小さな足音の話で、苦手なホラー系かと思いきやそれだけでなく。怖いけど不思議で、少し寂しい。「おたすけぶち」はオチまできっちり面白かった。曼珠沙華の美しさと寂しさがよく似合う物語だった。
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カテゴリー分けが難しい。
ホラーでもありSFでもあり。
幽霊に取り憑かれた話が2編。
都市伝説風な話が1編。
人の仄かな狂気が描かれた話が2編。
そして、タイトルにもなっている『とり残されて』と
最後の短編『たった一人』は時空の歪みに惑わされる
切ないお話。この2編が珠玉であった。 -
久々の宮部みゆき!!面白かったぁ。表紙の絵があまりにも古くさかったから、全然期待してなかったので、益々ガツンとやられた!!!
さすがです。
ホント!!!短編でここまでひねるか!?ってくらいになんだか鳥肌がたつような、不思議なそれでいて人情味溢れる内容でした。
そうくるか!!!
の一言です。こんなに名作ばかり書き続ける宮部みゆきってホントすごい。面白い!!!!面白いです!!!! -
何度読んでも最後の「たった一人」が切なく哀しい。時空を超えて出会った二人の叶うはずのない、「愛」というにはあまりにも切ない心の繋がり。
今も河野を探して、梨恵子は日々を泳いでいるのだろうか?