水に眠る (文春文庫 き 17-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 1209
感想 : 127
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167586010

作品紹介・あらすじ

同僚への秘めた想い、途切れてしまった父娘の愛、義兄妹の許されぬ感情…。人の数だけ、愛はある。短篇ミステリーの名手が挑む十篇の愛の物語。山口雅也ら十一人による豪華解説付き。

感想・レビュー・書評

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  • 北村薫氏の小説、久しぶりに読みました。
    何年ぶりだろう。間違いなく10年は経ってると思うのだけど。

    どんな人物を書かせても、どんな背景環境のお話でも、すらりすらりと読めて気持ちがいいです。

  • 鮮やかな光景が浮かぶ短編集。

    水の皮を、ぺろりと剥く。
    勿忘草と竜胆の柄のネクタイを「押し花」にする。
    半透明の偏光繊維を頭から垂らし、巨大なくらげのような個人空調装置にこもる若者。
    吊るし切りにされる鮟鱇。

    現実的なものも、幻想の光景も、妙に鮮やかだ。
    そうした光景に、登場人物の心情が静かに重ね合わされる。
    控えめだけど、やはり叙情的な作品とは言えるだろうか。


    「くらげ」や「かとりせんこうはなび」は、少しSF風味。
    毒気のない筒井康隆みたいな感じ?

    「弟」や「ものがたり」は、ストーリーテリングの妙味を楽しめる作品。

    天然系女子高生のキャラクターの魅力で成り立つ「はるか」は、この作品集に置くと異色で、面白い。

  • 10の短編が収められています。1997年発行。
    北村さんといえば日常の中のミステリーですが
    本書は日常の中のちょっとしたSFも感じさせます。
    この中の短編「くらげ」は今まで読んだ短編の中でも
    ダントツに記憶していてコロナ禍で思い出したので再再読。

    コロナ禍でマスクを着けるようになった習慣が
    新しいライフスタイルになったように、
    くらげ、という装置を着るようになった世の中の
    お話です。

    本書はなんと短編ひとつにつき人気作家お一人ずつが
    解説を書かれています。とんでもなく贅沢です。
    解説も読み応えがあります。

  • 10の短編集でした
    淡々と読破しましたが、楽しめたものもありましたし
    そうでないものもあったかもしれません

    解説が1短編毎に一人の作家が担当しており
    今までそんなのは見たことありませんでした

  • 再読。
    「恋愛小説」がロマンチックだった
    「矢が3つ」も風刺的で新鮮で面白かった
    北村薫さんの文章は読みやすくて好き
    出てくる女性がいつも凛としてて好きだ

  • あまり肌にあわなかったかも…男性が書いた、女性一人称という感じでしょうか。もちろん、文章がおかしいとかではないんですけど、匂いの問題?

  • 10の物語が収録された短編集。
    “愛情物語”とある。
    全体的に少し不思議なお話が詰まった1冊。

    本屋さんが舞台である『はるか』が好きだ。
    愛嬌があり、“うっかり娘”ながら(だからか?)幸せになってほしくなるタイプの女の子、応援してしまう。
    朝ドラヒロイン像のような爽やかさが彼女にはある。

    “二夫一妻制”を扱った『矢が三つ』も好き。
    しっかり者の有紀子ちゃんが則パパ(新)と国パパ(旧)の仲介役をする。
    女性の方が比率が多ければ、確かにこうなってくる可能性はあるよね…。

    個人的にすっごく気になったもの。
    缶のジンジャーエールとビールを混ぜて作ったシャンディーガフ!
    とっても美味しそうである。

  • 日常の謎を描き続ける北村薫さんの愛と人間性の物語集。本書は音楽CDに例えるならば傑作10編が収録されたベスト・アルバムみたいな感じでそれぞれに全く違った味わいが楽しめるでしょう。著者のあとがきの結びの言葉「これらは、人と人の、《と》に重きを置いて書かれた物語なのである」は意味深で決して単純ではなく一筋縄では行きませんね。また贅沢な解説では11人の方が10作とまとめを担当されていて懇切丁寧に心を尽くされた豪華な企画だと思いますね。謎解きパズルに拘らない人間心理の不可思議さに迫る好著として一読をお奨めしますね。

    『恋愛小説』無言電話を善意に捉える感性が素敵ですね。『水に眠る』切なさも時に愛おしい。『植物採集』不器用な二人が平行線なまま交わらないのが哀しい。『くらげ』揺り籠から墓場まで一生が全部くらげ写真になったら不気味。『かとりせんこうはなび』血を吸われても蚊を殺せない心優しい人。間に「しんご」と入れないで。『矢が三つ』近未来の二夫一妻制の悲喜劇。『はるか』天然ボケのはるかちゃんに心癒されます。『弟』辛い記憶を封じ込めて陽気に語る。『ものがたり』回りくどい告白が切ない。『かすかに痛い』嫌な思い出は全て水に流そう。

  • これが発表された当時、まさか、「くらげ」が現実のモノとなるとは…
    誰が想像しただろうか…

  • 短編集。

    ミステリー的な作品もあるが、文学ぽいものもあり多種多様。
    さらっと読めて楽しめるのだけど、読み直して理解できないものがあるし、何のことはない日常的なものがありあまり高評価出来ない。

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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