クライマーズ・ハイ (文春文庫 よ 18-3)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • / ISBN・EAN: 9784167659035

感想・レビュー・書評

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  • うーん…。
    一気に読めることは読めたが、なんだか最後まで話に乗り切れなかった。
    新聞社という舞台で進むストーリー。所謂“仕事もの“であるが、自分には熱くなるものがなかった。
    主人公のキャラクターもいまいち掴みきれず、大事な場面で行動に共感できないまま終わってしまった。

    歳を重ねたら印象が変わるのかもしれない。今後の自分に期待。


  • 「横山秀夫」の傑作長篇『クライマーズハイ』を読みました。

    「横山秀夫」作品は8月に読んだ『出口のない海』以来ですね。

    -----story-------------
    2003年週刊文春傑作ミステリーベストテン第1位
    1985年、御巣鷹山の日航機事故で運命を翻弄された地元新聞記者らの濃密な一週間。
    会社や親子など人間関係を鋭く描いた新境地作品。

    1985年、御巣鷹山に未曾有の航空機事故発生。
    衝立岩登攀を予定していた地元紙の遊軍記者「悠木和雅」が全権デスクに任命される。
    一方、共に登る予定だった同僚は病院に搬送されていた。
    組織の相剋、親子の葛藤、同僚の謎めいた言葉、報道とは―。
    あらゆる場面で己を試され篩に掛けられる、著者渾身の傑作長編。
    -----------------------

    日航機墜落事故から30年ということもあり、今年の夏は本事件に関する特集番組や特集記事が目立ちましたね、、、

    ということで、本書を読んでみたくなりました。


    物語の舞台は群馬県の架空の地方新聞社「北関東新聞」ですが、、、

    「横山秀夫」が当時、地元群馬の「上毛新聞」記者時代、実際に遭遇した日航機墜落事故事故を題材にしていることもあり、未曾有の大事故を取材する新聞記者の奮闘がリアルに描かれていましたね。


    物語は、日航機墜落事故の全権デスクを任された「悠木和雅」を中心とした事故からの一週間の編集局の嵐の日々を軸に、17年後にかつての同僚で登山を一緒に愉しんでいた「安西耿一郎」の遺児「燐太郎」とともに谷川岳の鋭鋒、衝立岩に登攀する「悠木」の姿を「悠木」の内面・心情が描かれています。


    現場からのリポートが潰されたり、スクープを紙面化する際に難しい判断を求められたりする中、上層部や他部局から睨まれ、疎まれ、部下の記者からも見放されそうになり… という苦しいデスクの立場に社長派と専務派の社内抗争等等を絡めて、報道機関の姿がリアルに表現されていましたね、、、

    そして、ジャーナリズムとしてのあるべき姿を提起する「望月彩子」(「悠木」の元部下で取材中に死亡した「望月亮太」の従姉妹)の言葉、

    「人の命って、大きい命と小さい命があるんですね」

    「重い命と、軽い命。
     大切な命と、そうでない命…
     日航機の事故で亡くなった方たち、マスコミの人たちの間では、すごく大切な命だったんですよね」

    印象に残りましたね。


    「悠木」と、その息子「淳」の間のぎくしゃくしていた親子関係が、「燐太郎」との山行(「淳」が父親のために打ったハーケン)をきっかけに少し修復する… 信頼関係が感じられる展開は良かったなぁ、、、

    年頃の親を持つ身としては、このシーンがイチバン感動しました。

    久しぶりに活字で感動しましたね。



    以下、主な登場人物です。

    《北関東新聞社》

    「悠木和雅(遊軍記者・日航全権デスク)」
     部下を交通事故で失って以来、自分には部下を統べる資格も力量もないとして管理職に就くことを拒み続けており、あらゆる分野の記事を執筆する遊軍記者という立場を貫いている。
     社内の登山サークル「登ろう会」に所属しており、翌日に谷川岳衝立岩正面壁への登攀を控えていた8月12日、日航機墜落事故が発生、事故関連の紙面編集を一手に担う日航全権デスクを命ぜられる。
     自分の手に余る大事故に忙殺されながら、墜落地点が群馬ではないことを望んでいる自分がいることに気づく。
     気持ちの整理がつかぬまま佐山の現場雑観を生かすべく奔走するが、「大久保・連赤」世代である上司の妨害工作に遭う。
     事故を報道する目的と意味を失いかけていた悠木は、新聞を買い求めに来た事故遺族の姿を目にし、ようやく自分がやるべき仕事を見出すのだった。

    「粕谷隆明(編集局長)」
     社内では穏健派で通っており、意見調整に長けた「調停屋」である。
     悠木を飼い殺しにしているという社内の批判的空気を一掃すべく、これを好機とばかりに悠木を日航全権デスクに任じる。
     「大久保・連赤」では社会部デスクだった。

    「追村穣(編集局次長)」
     社内では武闘派で通っており、「癇癪玉」の異名をとる。
     事故記事の取扱いや取材方針を巡ってしばしば悠木と対立する。
     佐山の現場雑観を自衛隊の宣伝だとして第二社会面(二社面)に追いやるなど、若手記者が未曾有の大事故の現場を踏むことを善しとしていない。
     社内派閥は社長派。「大久保・連赤」では県警キャップ。

    「等々力庸平(社会部長)」
     「大久保・連赤」世代の華々しい実績が霞んでしまう大事故に直面し、もっとも陰湿に佐山の現場雑観を潰しにかかる。
     等々力が悠木に輪転機の故障を伝えなかった結果、佐山の現場雑観は締切に間に合わなかった。
     翌日には追村が仕向けた現場雑観の二社面落ちを悠木が等々力の仕業と勘違いし、ふたりの関係はいよいよ険悪となる。
     岸が企図した酒席で悠木の自社を貶める言葉に激昂するが、激論の中で地方新聞社の事件屋としてのプライドを思い出し、以後、悠木の方針を擁護する言動に変わる。
     「大久保・連赤」では県警サブキャップ。
     実は「大久保・連赤」世代の時に朝日新聞から引き抜きのオファーが来ていたことがあった。

    「守屋(政治部長)」
     日航機墜落の3日後、1985年8月15日に行われた、地元群馬県出身の首相である中曽根康弘の靖国神社公式参拝の記事の取扱いにあっては、一面トップを強硬に主張した。
     悠木は、同じく群馬県出身の元首相福田赳夫と中曽根両者が献じた花輪が写っている遺体安置所の写真を持ち出し、関係者、地元支持者・有権者(=読者)、社内派閥全ての福田・中曽根のバランス(上州戦争)に配慮した上に事故関連記事の一面トップを堅持することに成功した。

    「亀嶋(整理部長)」
     整理部一筋の経歴を持つ。
     通称カクさん。
     編集会議では常に悠木の意見を支持する立場をとる。
     事故を一面で報じ続けることが地元紙の意地だと悠木を励ます。

    「岸(政治部デスク)」
    悠木とは同期入社で、互いに気心が知れている同僚である。2児の父で反抗期の子供との関係に悩んでいる。悠木と等々力の関係修復のため酒席を設けるが、思わぬ論争を生んでしまう。

    「田沢(社会部デスク)」
     悠木とは同期入社だが、折り合いはよくない。
     悠木とともに取材したネタで悠木だけが局長賞を手にしたことを未だに根に持っている。
     悠木が上席の日航全権デスクに就いたことで悠木に対する当たりをさらに強くする。

    「佐山(社会部記者・県警キャップ)」
     悠木が最も信頼を寄せる中堅の記者。
     悠木を尊敬しており、望月の事故死にあっては社内の望月同情論を一掃し、悠木の立場を守るべく奔走した。
     日航機事故の第一報を悠木に伝え、事故現場を踏むことを懇願する。
     佐山の気持ちを汲んだ悠木は、地元紙の存在意義とも言える現場雑観の執筆を託す。
     「事故原因」の取材では事故調査官に対するネタの裏取りを任され、悠木にはほぼ間違いないと伝えるが、相手は「(普段取材している)サツカン」ではないことを言い添える。
     事故取材を通じて名実ともに北関中核の記者へと成長していく。

    「神沢(社会部記者)」
     佐山とともに御巣鷹山に登り、事故翌日の惨憺たる現場を目撃する。
     現場を踏んだことで調子づき、目にしたありのままを表現した現場雑観を書くが、悠木の怒りを買い、精神状態が不安定となる。
     気持ちの整理をつけた神沢はそれ以後毎日、御巣鷹山へ登って黙々と取材を続けるようになる。

    「玉置(地域部記者)」
     工学部出身の若手記者で、事故原因にいち早く着目し、「隔壁破壊」という情報を得る。
     自らの手柄に逸り、ネタの裏取りまでひとりでやろうとするが、このネタを確実にモノにしたい悠木は裏取りを佐山に任せ、玉置は渋々サポートに廻る。

    「稲岡(文芸部)」
     読者投稿欄を担当。
     悠木の熱意に負け、望月彩子の投書掲載に協力する。

    「吉井(整理部)」
     一面の見出しや紙面構成を担当する整理部のエース。
     事故原因というヌキネタの存在を悠木から知らされており、密かに2版体制の紙面を組む。

    「依田千鶴子(編集庶務)」
     事故取材による人手不足から、念願の記者として支局に配属される。
     たった10行の記事もうまく書けずに根を詰め、苛立っているところを悠木にたしなめられる。佐山に憧れている。

    「伊東康男(販売局長)」
     販売店勤務だった安西を本社に引き抜き、連夜の販売店の接待などで酷使した上、社内の派閥争いに絡む裏の仕事も担当させる。
     締切時間を巡ってしばしば悠木と対立する。
     悠木が幼少の頃、近所に住んでいたことがあり、社内でただひとり悠木の生い立ちを知っている。
     悠木はそんな伊東の存在に怯えているが、伊東自身も決して明るい幼少時代だったわけではないのだと思い始める。
     社内派閥は専務派。

    「安西耿一郎(販売部)」
     本社に引っ張ってくれた伊東に恩義を感じている。
     生粋の山男で「登ろう会」の中心メンバー。
     悠木に山に登る理由を問われると「下りるために登るんさ」という深長な言葉を残す。
     悠木との谷川岳登攀を控えた前夜、繁華街で倒れて病院に運ばれ、植物状態となる。
     悠木は山に行くはずだった安西が繁華街にいた理由を突き止めようとする中で安西が残した言葉の意味に思い当たる。

    「暮坂(広告局長)」
     元々は政治部担当で編集畑を歩んでいたが、出世というエサにつられて広告局長となった。
     悠木の独断で朝刊の第2社会面に掲載する予定の広告をすべて外されてしまい悠木に詰問する。
     取引先に土産話を持ち帰る目的で墜落現場に赴く。
     記念撮影をするなどの目に余る行為を神沢に咎められ、殴打される。

    「飯倉(専務)」
     白河社長の追い落としを狙っており、社内の権力争いに余念がない。

    「白河(社長)」
     家で生まれた子犬を部下に与えることで派閥を拡大させ、社長の座に就いた。車椅子に乗っている。


    《その他》

    「望月亮太」
     元社会部記者。
     悠木が県警キャップだった頃の部下のひとりで、交通事故被害者の写真を入手する「面取り」を命じられるが、死者の顔写真を新聞に掲載する意味について悠木に食って掛かる。
     事件屋としてはあまりにも繊細な性格が災いし、仕事を放棄した上に交通事故に遭遇し、自殺ともとれる死を遂げる。

    「望月彩子」
     望月亮太の従姉妹で、大学ではマスコミ学を専攻している。
     従兄弟の亮太が死んだのは悠木のせいだと思っている。
     日航機事故の報道にあっては520名の事故被害者の命の重さと従兄弟の命の重さの扱われ方の落差に疑念を持ち、両者にはいかなる差もないことを訴える文章を悠木に託す。
     望月亮太に想いを寄せていたことを悠木に告白する。
     日航機事故から3年後には北関東新聞に入社し、記者としての頭角を現し女性初の県警キャップとなる。

    「悠木弓子」
     悠木の妻。
     悠木と子供たちとの関係を心配している。
     悠木は妻にも自分の生い立ちを明かしていない。

    「悠木淳」
     悠木の息子。
     父親を知らない悠木は息子との接し方に苦心し、手を上げてしまう。
     父親を尊敬できずにいる。

    「安西小百合」
     安西の妻。
     駆け落ち同然で結婚した。
     安西が倒れたことに動転するが、仕事漬けで家を空けていた安西と四六時中一緒にいられるようになったことに前向きな気持ちを見出す。

    「安西燐太郎」
     安西の息子。
     安西が倒れてからは悠木が淳とともに山へ連れ出すようになる。
     悠木は淳との関係修復のために燐太郎をダシに使っていることに負い目を感じる。
     日航機事故から20年後、悠木とともに谷川岳衝立岩にアタックし、そこで悠木は息子との邂逅を果たす。

    「末次」
     安西の登山仲間。
     悠木は安西が残した言葉の意味を知るために見舞いに来た末次に会い、安西がかつては一流の登山家で、谷川岳衝立岩でザイルパートナーを失って以来、本格的な登山を止めたという事実を知る。
     それ以来となる衝立岩登攀に安西が自分を誘った意味と安西が残した言葉の意味が悠木の中で繋がる。

  • 原作小説多いな、自分。

    でもこの本は映画化が決まる前に読んでました。

    閑職の主人公がとある事故を契機に大立ち回りをやらかす。そういう物語。
    友人の死も、部下の葛藤も、新聞社という特殊すぎる社会の産物。
    あくまでも『命の尊さ』を訴え続けるか、大手すら掴んでいない『スクープ』をすっぱ抜くかの間で揺れる心。

    実際の事件と著者の経験を元にしてあるだけに描写がリアル。
    『人に伝える仕事』について深く考えさせられる一冊。

  • 後ろ暗い過去をもつ内向的だが、ジャーナリズムに対する確かな情熱と優しさを持つ主人公が魅力的。社会とは、家庭とは、命とは、重責がのしかかる決断を主人公視点で問われる作品。

    責任ある立場で決断することの難しさ、発言力の強い上司と血気盛んな部下、ジャーナリズムを重んじる革新的な部署と社会的体裁を気にする保守的な部署、あちらを立てればこちらが立たずの繰り返しの中でそれでも自らの誇りを胸に仕事に励む主人公に社会で働く者として畏敬の念を抱き、また明日から頑張ろうと思えた。

  • 選民思想はどこにでもある病ですな。
    内容は抜群なんですが、事あるごとの決断理由が分かりにくいところが難あり。

  • 主人公の悠木がどうにも好きになれなかった。
    感情的に事を荒立てて、人を巻き込んでやらかしては、意地を張り切ることも出来ないまま、ウジウジとうちに篭もって逃げる。上司もひどいが、この悠木も相当酷い。
    なのに終盤、望月の従姉妹の件でやらかしたとき、人望なんかあるはずもない悠木が、なぜかみんなから一斉に庇われて、かつ日航機事故の遺書の一文を引用して良い人生だったとか言い出したのには笑えた。話の流れ的に、着地点そこだったの!?ってくらいミラクル展開だった。
    まあ、航路でもなかったのに悠木らの地元に落ちてきた日航機事故を描いた小説だから、予想外の航路でオチを持ってくるのもアリなのかなと、不謹慎なことを思いました。おわり

  • 人間らしい、ひりひりした本だったた。
    まるで、炎天下のもと焼かれる皮膚のように。
    平和の根底にある無関心や、命の選別といったテーマも垣間見え、読者にも鋭く問いかけている気がした。響きのいい言葉では飾らず、できるだけ必要なこと以外は削ぎ落として書かれていた文章が、余計にそう思わせたのかもしれない。
    けれども、堅苦しく説教臭くはない。
    ぐんぐんと引き込まれてあっという間に読み切りってしまった…

  • 何となくニュースで聞いたことのある事故という認識でしかなかったが、本書でその凄惨さや混乱がリアリティを持って伝わってきた。
    この事故を通して悠木や周りの人との関係性が変わっていく姿にも胸が熱くなる。
    しばらく本を読むことから遠ざかっていたが、また色んな本を読みたいと強く思わせてくれた一冊。

  • JAL御巣鷹山墜落日航機墜落事故を題材とした作品。

    ジャーナリズムの在り方に鋭く迫る内容となっている。
    悠木をはじめ、登場人物たちの活き活きとした人間味に引き込まれる。

  • 横山さん読むのは4作目かな。
    登場人物が多過ぎて、組織の関係性把握がしっかりわからないまま、読み切りました。
    が、初心者の私には難しかったー、、
    映画なってるのかな、そち観てみよう。

    ちゃんと把握しながら読めば、
    大部屋の緊迫感をもっと感じれただろうな。

    次は、ほのぼのほっこりを挟もうかな笑


    中盤で出てきた、社の近場の韓国の経営者がやってる焼肉屋、ホルモン焼いてくれる店主。
    ビール飲みながらの光景は、羨ましく印象に残ってます笑

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著者プロフィール

1957年東京生まれ。新聞記者、フリーライターを経て、1998年「陰の季節」で松本清張賞を受賞し、デビュー。2000年、第2作「動機」で、日本推理作家協会賞を受賞。2002年、『半落ち』が各ベストテンの1位を獲得、ベストセラーとなる。その後、『顔』、『クライマーズ・ハイ』、『看守眼』『臨場』『深追い』など、立て続けに話題作を刊行。7年の空白を経て、2012年『64』を刊行し、「このミステリーがすごい!」「週刊文春」などミステリーベストテンの1位に。そして、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞(翻訳部門)の最終候補5作に選出される。また、ドイツ・ミステリー大賞海外部門第1位にも選ばれ、国際的な評価も高い。他の著書に、『真相』『影踏み』『震度ゼロ』『ルパンの消息』『ノースライト』など多数。

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