ある人殺しの物語 香水 (文春文庫 シ 16-1)

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167661380

感想・レビュー・書評

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  • 簡単に要約すると「フランス革命ちょい前のおフランスってやっぱ超くっさいよね」。たしか種村季弘の著作に出てきたので今さらながら読んでみたけど、そのむかし友達に薦められて、「ふーんそのうち読んでみるよ」と生返事をした後20年以上経て読むとはその時は思わなんだし、タイトルからラクロの『危険な関係』みたいな話だと勝手に思い込んでたから良い意味で思ってたんと違かった。
    これでもかと繰り返す匂いの描写、死体や腐った食べ物、垢、血膿、汚物、獣の皮、柑橘、薔薇、海、春の風、清濁混ぜこぜでねちこく描写するとことか「パノラマ島」とか「さかしま」とかの『マイワールド炸裂もの」っぽかった。こちらはもっと口当たりマイルドだけど。

  • 匂いで人操るのすご、てか発想がすごい
    体臭しないだけで存在感てなくなるんだ
    この本を読んでる間、主人公のことを果たして人間だと思って読んでいたのかどうか怪しい
    かと言って何と表現するのも難しい
    激しい違和感があったのは確かだからきっとずっと忘れられないと思うけど人に説明するのが難しいと思う

    本筋に関係ない人物がもう登場させることは無いからって作者によって殺されてるのがツボだった

  • 異様に優れた嗅覚を持つ男、グルヌイユが理想の香りを追い求めるがあまりに殺人を繰り返す。
    最初から最後まで、噎せ返るような匂いに溢れている。

  • まず記しておきたいことが、翻訳の素晴らしさ。
    文章から、この物語をつかさどるにおい/香りだけでなく、触感、目の前の景色、登場人物達の体にあらわれる心拍数や体温の変化まで自分の五感でもって追体験しているような感覚になった。

    香りに取り憑かれてねじれていくグルヌイユ。
    生みの親からも愛されず、彼を利用し搾取する者はいても彼にあたたかな感情を向ける者はいない。
    そんな彼の歪みは第一として、グルヌイユに関わった人間たちにも、誰の心の底にもあり得るぎらついた欲望や卑しさが曝されえがかれている。
    良くも悪くも、人間くさい人々。

    グルヌイユの所業はグロテスクで、人を殺めることに対して罪悪感という概念をもたないゆえにことさら残酷であることは間違いない。
    しかし、香りが喚び起こす衝動を類稀な才能と感覚で精製した彼の所業は無駄が無い。
    歪な美学があるそれから目をそらしきれない。突き詰めた純粋と狂気は紙一重であるのかもしれない。
    体臭を持たず、万人の心を虜にし操ることのできる香りをつくりあげても彼そのものが愛されることは終ぞなく、他人からもそして自分自身からも人間として愛し尊重されることのなかったグルヌイユ。
    そんな彼がえらんだ結末は、ねじれゆがんでいても愛を求めた、人間くさい願望を持った一人の人間としての、愛おしさすらおぼえてしまう哀れさがあった。

  • 3.77/2436
    『18世紀のパリ。孤児のグルヌイユは生まれながらに図抜けた嗅覚を与えられていた。真の闇夜でさえ匂いで自在に歩める。異才はやがて香水調合師としてパリ中を陶然とさせる。さらなる芳香を求めた男は、ある日、処女の体臭に我を忘れる。この匂いをわがものに……欲望のほむらが燃えあがる。稀代の“匂いの魔術師”をめぐる大奇譚。』(「文藝春秋BOOKS」サイトより▽)
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167661380

    原書名:『Das Parfum. Die Geschichte eines Mörders』(英語版『Perfume: The Story of a Murderer』)
    著者:パトリック・ジュースキント (Patrick Süskind)
    訳者:池内 紀
    出版社 ‏: ‎文藝春秋
    文庫 ‏: ‎351ページ
    受賞:世界幻想文学大賞

    メモ:
    ・松岡正剛の千夜千冊 453 夜
    ・死ぬまでに読むべき小説1000冊(The Guardian)「Guardian's 1000 novels everyone must read」

  • 映画を2年半ほど前に見て、1年半ほど前にドイツ語の原作を読み、やっと邦訳原作を読むに至る。訳者は文庫版あとがきにて映画化に際してどう匂いを表現するのかと書いている。先に映像を見てしまったから言えるが、なるほど視覚的に表現するために苦労したものだなと思う。もう一度映像を見てみないと是非が分からない部分もあるだろう。しかしながら全体的には、「やはり映像よりも、活字を通しての想像にこそふさわしい。」という訳者の言葉に賛同せざるを得ない。

  • 人殺しの物語という副題は少し合わないと思う。
    天才香水調合師の数奇な生涯といったところか。

    匂いにしか存在価値を見いだせない主人公が最高の香りを求めて旅する。土地も取り巻く人々もころころと変わるが、一番の見所は主人公の心の変化。

    香りの表現がこれでもかと押し寄せ、思わず身の周りの匂いを嗅いでしまう1冊。お気に入りの香水を用意して読むもよし、無臭の空間を探して読むも良し。

  • 生まれつき匂いの感覚に類い稀なる能力を持つ主人公グルヌイユの生涯。
    18世紀のパリを舞台にしている。

  • これほど嗅覚に訴える作品には、出逢ったことがない!裏道に漂う腐臭、淀んだセーヌ川から立ちのぼるムッとした臭い、花の香り、人肌の温もりを帯びた匂い、煙、土、草木…。これらを感じさせる筆致は見事だが、グロテスクな部分もあり万人受けはしないかも…。

  • 18世紀のパリでNO1調香師となったグルヌイユが創り出す香りの秘密とは。次々と少女を殺して入手する香り。悪臭漂う当時のパリの描写は吐き気を催すほどグロい。処女から何か至高のものを創り出すという男にありがちな妄想と、リアルには今も不潔なパリが明らかに臭く香りで誤魔化すしかなかった時代の幻想。香りに取り憑かれたグルヌイユの気持ちに少し共感もする。

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