天然理科少年 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 72
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  • Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167679484

感想・レビュー・書評

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  • 根無し草的な父親に振り回され転校を繰り返す主人公が辿り着いた小さな集落で起きる出来事。長野さんの作品の中でも「少年アリス」的な雰囲気を持つお話。宮沢賢治っぽい世界観で、主人公がジョバンニなら不思議な少年・賢彦がカンパネルラかな。最後の展開は少し驚いたが、いい終わり方だった。好きだな。

  • 高校二年生の頃、
    はじめて読んだ長野まゆみ作品。

    透明感のある文章に、独特の雰囲気が印象的で、
    それでいてなんともいえない居心地の悪さをかんじました。
    「ここにある」ようでいて「どこにもない」、
    漠然とした不安定な感覚。
    それは多分、この作品の持つノスタルジアのせい。
    懐かしいような気がするのだけれど、
    その懐かしさは実体験に基づいていないから実体が無くて。
    そしたら今自分が感じている「懐かしさ」は誰の感情?
    とそれが不気味に思えてしまう故の不安定。

    考える文章、ではなく、感じる文章、というものもあるのだと、
    気付かされた読書体験でした。

  • ラストでああっ…なりました
    言われてみれば…そういうことか…
    父親も実は…っての、よく考えなくても長野まゆみあるあるだったな…

  • 丁度今頃の季節のお話で良い読書でした。
    このお話での時間の流れ、たった3日なんだ…もっと長い気がしていたけれど。
    岬と同い年の梓は、今現在の岬の父親である梓とは違う性質で、あれから彼に何が?と思ってしまいました。
    切ないお話でした。

  • すごくいいはなしだった。
    タイトルや表紙の球体関節人形から、初期の自動人形とかが出てくるファンタジーを想像して読んだら、全然違った。

    放浪癖のある父と共に色々なところを転々とする主人公。
    目立たないよう、疎まれないよう、周りを観察して、上手く立ち回る術が身についている。
    他人と深く関わることをしない岬が、あるとき訪れた山あいの町の古ぼけた学校で、気になるふたりの少年に出会う。
    他の作品だと、書き方がちょっと卑屈すぎたり、自意識過剰だったりで読みづらいときがあるんだけど、今回はさらりとしていて読みやすく、美しい文章だった。

    最後の、手紙からの流れがぐっとくる。手紙がはさんである本って最強アイテムだな…
    そしてお父さんがとにかくかっこいい。大人のお父さんも、少年のお父さんも素敵。

  • 生きることには別れが付き纏う。歳を重ねるにつれ寂しく無と喪失を感じるのです。喜怒哀楽を天秤にかけたら哀が振り切る。その重さに耐え兼ねる術を知らない。
    洋盃に注いだ檸檬水、ロケット型の青い瓶、瑠璃蝶キラキラと君の睛のスクリーンに火毬スパアク。鬼胡桃と交換っこで君と僕は友達さ。
    玻璃笛の音色は結晶の煌めきで君の聲のよう。林野の湖のほとり、霧に飲まれ抜ければ幻想世界、身体はもう戻って来れない気がし胸騒ぎがしました。親や友達と抱き合い温もりを感じたこと等あったでしょうか、雪のような手を擦ります。戻ってきた宝物がきっと溶かしてくれることでしょう。

  • 不思議な感覚の読み物でした。
    何がどうなっているやらはよくわかんないけど
    なんとなく納得してしまう、
    そんな摩訶不思議なストーリー。

    気張って読まなくていいので、
    サラリとしたものを所望しているときに有効。

    ただ「ぢ」は「じ」でいいぢゃねーの。
    (`皿´)ウゼーと思っちまった。

  • 久々の長野さんはやっぱり好みだった。
    霧に紛れて場所が錯綜し、少年時代のお父さんとその友達に出会う話。
    そして、お父さんに代わってその想いを消化させてゆく。
    時に長野さんは凝りすぎてしまうときがあるけれど、この作品はお見事。

  • 放浪癖のある父親のせいで転校を繰り返す岬。引っ越してきた山間の町で、小柄な少年賢彦に出会う。賢彦は二年前幻の湖で神隠しに遭い、二年前と変わらぬ姿で戻ってきたとか。そのせいでクラスで浮いてしまっていた。


    まず、表紙のお人形さんの眸に惹きつけられて、表紙買いしました。美少年さんです。
    長野まゆみさんの描かれる少年はきっと、岬も賢彦も透明感のある少年なのでしょう。

    鬼胡桃の印鑑、檸檬水の空き瓶を溶かして作った笛……
    古い机の中とかに入っているのを見つけたくなるような小物がいちいち可愛いです。

    父親の過去の友人と、息子である岬が邂逅します。
    短い時間でも、もう会えなくても岬は賢彦と友人になり、そしてすべて霧の向こうに消えていく。父親にとっても、岬にとっても心に残った気持ちは、ふとした時、振り返りたくなるようなものだと思います。決して忘れない淡い思い出です。

    最後に消えてしまった街のように、幻想的な雰囲気の小説でした。

  • 表紙の少年の人形に惹かれてジャケ買い。
    放浪癖のある父のせいで引っ越しと転校を繰り返す主人公の少年「岬」。引っ越し先で出逢った「賢彦」という不思議な少年との3日間の物語。
    長野まゆみ作品は、宮沢賢治の世界観を彷彿とさせる。檸檬水、鬼胡桃の印鑑、ガラスの笛。
    物語の中にさりげなく登場する綺麗な物に心癒される。

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著者プロフィール

長野まゆみ(ながの・まゆみ)東京都生まれ。一九八八年「少年アリス」で第25回文藝賞を受賞しデビュー。二〇一五年『冥途あり』で第四三回泉鏡花文学賞、第六八回野間文芸賞を受賞。『野ばら』『天体議会』『新世界』『テレヴィジョン・シティ』『超少年』『野川』『デカルコマニア』『チマチマ記』『45°ここだけの話』『兄と弟、あるいは書物と燃える石』『フランダースの帽子』『銀河の通信所』『カムパネルラ版 銀河鉄道の夜』「左近の桜」シリーズなど著書多数。


「2022年 『ゴッホの犬と耳とひまわり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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