ハリガネムシ (文春文庫 よ 25-2)

著者 :
  • 文藝春秋
3.06
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本棚登録 : 358
感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167679989

感想・レビュー・書評

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  • 痛い。とにかく痛い小説だ。それは、心の奥底ではこんなことがしたいと思っているよ、という吐露でもある。普通の人間として生きていくために、心にしまいこんだ欲望が誰にもあるはず。それを慎一は実行に移してみせる。堕ちていく自分を意識しながら、それを止められない。だから私はこの作品が好きなのだ。まさに、カタルシスのために存在している小説。
    一方、同時収録されている『岬行』は駄作である。なので、星5つは純粋に『ハリガネムシ』のみにつけた評価だ。まるでどこかの同人誌でも読んでいるような、素人くさい文章。退屈な作品だった。

  • 凄まじいシンパシーを感じて、むしろ自分にびっくりした。

    暴力衝動の核を寄生虫と見做すのはわかりやすい。純文学のまっとうな手法だ。
    だが突き抜けているのは、自分の意志や理性を越えて制御できないものがあると見据える頭があること。
    さらにハリガネムシは宿主が死んでもにゅるっと生きている。ぞっとする。
    実際に暴力をするか否か、ではなく、眼の前にいるこの人間を切り刻んでみたいという衝動が、確かにある。

  • 蛇にピアス以来の衝撃

  • 痛かった。とても痛かった。とっても痛かった。から良い本に違いない。誰の中にも飼っている、ハリガネムシ。潜んでいる。それがいつ、蟷螂のあの白く柔らかな腹を突き破るように出てくるか、出てこないか。

著者プロフィール

1961年愛媛県生まれ、大阪府育ち。1997年、「国営巨大浴場の午後」で京都大学新聞社新人文学賞受賞。2001年、『クチュクチュバーン』で文學界新人賞受賞。2003年、『ハリガネムシ』で芥川賞受賞。2016年、『臣女』で島清恋愛文学賞受賞。 最新作に『出来事』(鳥影社)。

「2020年 『ひび割れた日常』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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