- Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167697037
感想・レビュー・書評
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第4巻の白眉はなんといっても滝川事件と天皇機関説。時代が時代だから政治や軍部の問題と密接にからんでいるのだが、大学の自治や学問の自由、大学対文部官僚という図式がすこぶる興味深い。名前は有名だけど実態の深いところはよく知らなかったのでとても勉強になった。というか、これは現代においても大学人必読ではないだろうか。現役時代に読んでおくべきだった。滝川事件では、「あらゆる条件を利用する官僚の力の前には学者の抵抗など赤ン坊も同然である」とある。まさに何をかいわんやだ。そのちょっと前に出てくる岩波書店主岩波茂雄の立派さ、それに比して累が及ぶのを忌避する同僚教授たち、いつの時代も変わらない。そして天皇機関説における美濃部博士の立派さ。思わず襟を正さずにはおられない。
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☆☆☆2020年3月☆☆☆
・小林多喜二の死
・京都大学の墓碑銘
・天皇機関説
・陸軍士官学校事件
「京都大学の墓碑銘」は難解だったが、他のテーマは面白く読めた。
「小林多喜二の死」では、当時の共産党へのすさまじい弾圧の状況が伝わってくる。田口たきに対する多喜二の優しさを感じる内容であった。多喜二の『蟹工船』がなければ、プロレタリア文学という存在自体が忘れられていたかもしれない。
「天皇機関説」では、言論の自由が奪われていく歴史が描かれる。美濃部氏は命がけで学問を守ろうとした。
美濃部氏の「天皇機関説」を激しく非難した軍部がもっとも天皇を軽視している行動に出るのだから恐ろしい・
「陸軍士官学校事件」では、派閥争い。
統制派と皇道派の争い。お互いがお互いの追い落としに必死で、あさましい。誰がどっち派だっけ?と混同してしまう。 -
「小林多喜二の死」「京都大学の墓碑銘」「天皇機関説」「陸軍士官学校事件」。次第にきな臭くなってきた。作家、学者の思想への介入。その時代に生きた不運を感じる。2019.6.20
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ファシズムへと暴走していく日本の姿を活写する松本清張の歴史的名著。心優しいプロレタリア作家が特高警察によって筆舌に尽くしがたい拷問の末惨殺された「小林多喜二の死」、破局への一大転換点であった「天皇機関説」。言論の自由を圧殺したものへの、深く静かな怒りが滲む。他に「京都大学の墓碑銘」「陸軍士官学校事件」。
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以下は松本清張が「嵐と闘ふ哲将荒木」から引用した箇所の一部抜粋。昭和8年、荒木貞夫は来日したバーナード・ショウに、以下のような地震論を吐いて、唖然とさせた。最後のショウの言葉は彼らしい皮肉である。人工地震という話は、こんな時代から出ていたのか。
荒木「戦争の器材が進歩してくるが、それだけ金が嵩む。最も経済的でよろしいのは竹槍で戦争することだ」
荒木「(略)地震は災害であると共に国民精神陶冶の上に幸いであるかもしれぬ。上から来る空襲は予報があるが、地震は突然である。だから、国民に空襲は上からの地震だと思わせる」
ショー「もし閣下が英国の陸軍大臣になられたならば、ダイナマイトを地下に埋めて人工地震を起して国民を教育するか、もし地震がそんなにいいことならば…」 -
いつの時代も大多数の政治家と大学教授はろくなことをしない。