いっしん虎徹 (文春文庫 や 38-2)

著者 :
  • 文藝春秋
3.99
  • (48)
  • (60)
  • (32)
  • (4)
  • (3)
本棚登録 : 391
感想 : 46
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (508ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167735029

作品紹介・あらすじ

越前から重病の妻と共に江戸へと向かった鍛冶の秘めたる決意。それは、「己が作った兜を、一刀のもとに叩き切る刀を鍛える」という途方もないものだった。後に彼の刀を、数多の大名、武士が競って所望したという、伝説の刀鍛冶、長曽祢興里こと虎徹の、鉄と共に歩み、己の道を貫いた炎の生涯を描く傑作長編。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 実在の人物 刀鍛冶の虎徹の一生を描いた物語
    恥ずかしながら、虎徹という人が実在とは巻末資料を読むまで知りませんでした(笑)
    本書では製鉄、さらに刀の作り方が学べます(笑)

    ストーリとしては
    越前で、甲冑鍛冶だった長曽祢興里は重病の妻ゆきと一緒に江戸にあがり、刀鍛冶を目指します。
    自分の作った兜をたたき切る刀を作るために。
    折れない刀、切れる刀を作ろうと、鉄を知り尽くした興里は、自らが一番の刀が作れるはずと打ち込みますが、その鼻っ面は見事におられてしまいます。

    しかし、刀を作るということに対して真摯に向き合う姿、プロとしての矜持を感じます。

    様々な試練の中、刀を作ることをあきらめず、刀に向き合う姿は熱くなります。
    一方で、妻ゆきへの暖かい想い。さらにゆきの興里への想いが刺さります。

    そして、刀を鍛えることで自らを鍛え、刀鍛冶として、人間として成長していきます。

    虎徹と銘うった刀
    その刀を作るまでの執念、常に上を目指す考え方、工夫と技術。あきらめない心、己の道を究め、貫いた男の生涯の物語でした。
    ぐっときた。格好いい

    お勧めです

  • 生きるために刀を鍛えることと、刀を鍛えることこそが生きること、というのでは結果としての刀にどう違いがでるのか。

    働くことが手段だとしても、自分自身がそこには必ず写り込む。
    サラリーマンだって手は抜けないぜ、と哀しい感想。

  • 刀という珍しい視点からの小説。
    最初はとても面白かったが、終わってみると単調。

  • いい仕事をするには、
    "志を高く持ち決して満足せぬこと。自分をごまかさず精進すれば必ずたどり着ける。それを信じること。"

    "自分で考えず、人の話を鵜呑みにする連中が世の中には多い"



    自分にできることは
    ・常に目標を高く設定しておごり高ぶらないこと
    ・何事も自分で経験し肌で感じること
    ・支えてくれる家族を大切にする

  • 長曾根興里、後の虎徹だ。元は甲冑鍛冶であったが、関が原の後は平和な時代になり、甲冑はもはや甲冑入れの肥やしになるだけでり、虎徹はそれがいやだった。江戸で天下の名刀を打つ。それだけを心に決め、出雲や備前の鍛冶屋に弟子入りするなどして、自分の求める刀を明確にし、江戸で自分の鍛冶場をこしらえた。
    本書では、虎徹の妻、ゆきと虎徹の相手を思いやるくだりが非常によい。ほろっとくるような、微妙なゆきの言動がよい。
    良い仕事をするには、なによりも、志を高く持つことだ。志を高く持ち、決して満足せぬことだ。自分を誤魔化さず精進すれば、いつかはかならずそこにたどり着ける。それを信じることだ。
    刀は人をあやめる道具だ。しかし、ただ、殺めるだけではない。刀を手にした男はまず、刀を見つめ、そして考える。刀は斬る前に考えるための道具だ。死と生。刀は死生の哲理を極める道具だ。殺すべきか、生かすべきか。死ぬべきか、生きるべきか。さらに言えば、人はなぜ生き、なぜ死ぬのか。刀を手にしたものは必ず死と生を考えるのだ。
    ただ斬るだけなら美しい姿など必要ない。実際に人の生き死にを司る道具だから、姿にも刃文にも、気品が必要なのだ。尊厳が必要なのだ。

  • そんなに有名な刀匠だったのか。
    あとがきを読んで初めて知る。

    妻ゆきの存在が圧倒的だ。
    刀がこてつなら、ほとこそゆきだ。

    心を鷲づかみにされっぱなしの一書であった。

  • 刀が好きなので、名高い虎徹の名に惹かれて手にとってみた。

    初期の傲慢さやわがままさにちょっとイラッとしたりもしたけど、結局はやり遂げる直向きさは感動ものだった。
    しかし、鍛冶場って、今の猛暑よりも暑いんだろうなあ。
    本当に、大変な仕事ですね。

  • 江戸時代初期、越前の甲冑師であった長曽祢興里(ながそねおきさと)が30代半ばで刀工に転身し、虎徹という名刀を生み出すに至るまでを描いた小説。鉄にまつわる知識を得る場面や鍛える場面が中心で、全体として鉄の教科書かと思うほど詳細に描いている。自分の作った最高傑作の甲冑を割る刀、折れず曲がらず切れる刀を作ろうという信念を貫いていった先に、生と死に向かい合う清らかな心が生じるのは、わかる気がする。その境地に至った技術者は尊敬に値する。

  • 鋼づくりや刀鍛冶の工程、商品として出すまでの研ぎや目利きなど、歴史小説として必要な下調べが丁寧にされていてわかりやすかった。虎徹と奥さんとの夫婦愛はフィクションですね。こういう夫婦愛もいいけど、奥さんの病の進行に気づかない虎徹。ひたすら尽くす奥さん、そして病に倒れるという筋のほうが、虎徹の業がさらに出る気がしました。

  • 己の道を貫いた炎の生涯を描く傑作長編

全46件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

歴史・時代小説作家。1956年京都生まれ。同志社大学文学部を卒業後、出版社勤務を経てフリーのライターとなる。88年「信長を撃つ」で作家デビュー。99年「弾正の鷹」で小説NON短編時代小説賞、2001年『火天の城』で松本清張賞、09年『利休にたずねよ』で第140回直木賞を受賞。

「2022年 『夫婦商売 時代小説アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山本兼一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×