夏の椿 (文春文庫 き 27-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (393ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167744014

感想・レビュー・書評

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  • 解説:池上冬樹
    雨◆越後◆守護神◆沙羅の花

  • 北重人さん初読み。
    重層的で読みごたえのある作品だった。シリーズのもう一冊も読んでみたい。



    【校正もれ】
    破れ長屋になっても、天水桶だけは痛んだといえばすぐに手入れがなされた。(P319)
    →……天水桶だけは傷んだといえば…

  • 時代ものでこんなにミステリー仕立てになるなんて。
    とても良くできた映画を見たような気分です。
    最後は、主人公がどうにかするのだろうなと思いつつ読むも、いわゆる手垢のついた勧善懲悪、大団円にならず、切ない気持ちがやるせなくなりました。
    今頃読んだのかよと言うなかれ。未読の方には、強くオススメしたくなりました。

  •  岡っ引きでも、同心でもないのだから「捕物帖」とは呼べないのかな。
     時代推理小説?推理時代小説?

    車も電話もない時代。事件の調べも難しい。
     それを補って余りある筆の力。
     巧みに入り組ませた糸が絡み合い、最後の頁まで導かれる。

     事件の回りに描かれた、江戸の町の生活も味がある。
     人物もいい。
       
     50歳近くなってから取り組んだ作家仕事と聞けば、それも頷ける。 

  •  天明6年の江戸。時代小説。夏の宵に咲いた白い花。匂いたつ香りに、一瞬のやすらぎがあった。主人公は、旗本の三男坊である立原周乃介。刀剣の仲介、一刀流道場の師範代、そして万調べ事を生業にしている。斬殺された甥・定次郎の謎を追う。調べを進めるうちに出会った遊女、沙羅。彼女が本書のタイトルである「夏の椿」である。彼女を知る坊主が言った。「陽射しにあらがうような白い花でね。可憐だが、華やかでもある。陽が翳ると、どこか悲しげだ」沙羅双樹のことだそうで、ぴったりの名をあてたものだと思った。定次郎、周乃介を惹きつけた、華やかで悲しい女性だった。この作品は北 重人のデビュー作で、第11回松本清張賞の最終候補だったそうだ。ミステリー色は薄いが、誠実さを感じさせる文章は落ち着きがあり、人情溢れる長屋の人々をはじめ、風情にみちた江戸の町をきれいに浮かび上がらせた。なにより沙羅が壊れそうに美しく、色香を漂わせた。切なく儚い物語に、人生を思った。人生、「あざなえる縄のごとし」

  • 北さん、初めてです。
    かなりお年を召されてからデビューされた模様。
    解説(池上冬樹)には藤沢周平との比較があるけれど、かなりタイプは違うと思います。でも、そういう比較すること自体が、この人に対する評価の現れなのだと思います。
    しっかり構成され、描写も良く、力を感じさせます。全体にトーンが重く暗い感じ(こう書くと周平さんの初期作品との類似を思わせますが)がある中で、ヒロイン・沙羅の存在が儚い光を与えています。
    個人的な好みからすれば、捕り物色が強過ぎるのですが、もう何冊か読んでみましょう。

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