- Amazon.co.jp ・本 (463ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167773908
感想・レビュー・書評
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本人を知っている関係者がまだ多く存命されているので、なかなか丹念に証言を拾ってあり、読み応えがありました。部落出身ということもあり、中上作品は私小説的な作品が多いので、実際の生い立ちを把握していると、作品に対する読み方もまた変わってきますね。「岬」なんかは、この本を読んでから読んだほうが理解が深まったかも。
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中上健次の評伝。
力作だった。もっと早く読めばよかった。と、思うほどいいノンフィクションだった。
なにより高山さんの文章が読ませる。
中上健次の生まれた紀州。被差別部落での生活。生い立ち、上京して新宿での荒れた生活。編集者との出会いと小説をめぐるせめぎあい。どれも丹念に取材していることがわかる。でないとここまで書けない。構成も素晴らしい。冒頭から読者をストーリーのなかへ引きずり込む。だからグングンと読み進めてしまう。
中上健次が生まれ抱えてきたもの。それを文学へと昇華する過程での苦しみや葛藤は読んでいて胸に迫る。
とくに印象に残っているのが、河出書房の編集者・鈴木孝一と中上健次との小説をめぐる厳しいやりとりとせめぎあい。鈴木は何度も原稿の書き直しを健次に命じ、何度も没にした。「あんたの顔が鬼に見えたよ」と健次に言わしめるほどの厳しい編集者だ。彼がいなければ中上健次はどういう作家になっていただろう、と思えるほどだ。ものを創りだす者たちの火花散らす真剣勝負のその様に何度か目頭が熱くなった。
もう一度中上文学を読み直そうかなぁ。 -
2012/6/10購入
2012/10/27読了 -
冒頭における、未発表小説『エレクトラ』をめぐる編集者との緊張感あるやりとりから、文字通り引きずり込まれるようにして一気に読了。
パッシング、新宿ジャズ喫茶での日々、永山則夫への想い、柄谷行人との出会い、路地…。非常に読み応えのある濃密な評伝だった。
また、ここに描かれた中上健次の生涯を通して、自分の才能と向き合うとはどういうことかということを考えさせられた。 -
家族とは、人間とは、生きるとは何か考えさせられました。
何という壮絶な人生。中上作品をぜひ読んでみたいと思います。 -
同時代人といっていい中上健次にこれまで意識を向けなかったことが悔やまれた。
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路地の兄がここにいる。新宮の兄がここにいる。