- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167782016
感想・レビュー・書評
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門井氏の本は「家康、江戸を建てる」を先に読んだので、時代小説の作家と思ったら、推理小説でのデビューとのこと。この本のタイトルに惹かれて読んでみたが、膨大な美術の蘊蓄が書かれていて読み飛ばしながら読んで行った。本物かどうか、見た瞬間に味で分かるという、特異体質の青年美術コンサル(神永)と美術専門の短大講師(佐々木)が繰り広げる真贋論争。表向きは短大講師が勝つのだが、その裏でひっそりと神永が勝っているというパターン。神永のせいで仕事を無くした学芸員がライバルとして何度も立ち塞がる。政治家の親と子や佐々木講師の伯母との遺産問題も何となく最後は良い話しで終わる。もっと素人も分かる美術論争だったらとも思うが、多彩な人物像や筋としては悪くない。続編に手が出るかどうかは?
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一枚の絵が
"もし贋作なら、見た瞬間苦みを感じ、本物なら甘味をおぼえる"という
天才美術コンサルタント・神永美有と、短大の美術講師・佐々木昭友の二人が
美術品の鑑定に纏わる五つの難題と挌闘するミステリ。
美術品は、ボッティチェッリやフェルメールといった馴染み深い作品から
江戸時代の涅槃図までとさまざま登場しますが、神永氏のキレのよさには
とにかく感服します。目から鱗が落ちまくり。
五つのお話のうち印象に残ったのは
・早朝のねはん
・遺言の色
清水純太郎氏!!
もうほんとやってくれますよね!
一度なりともこの人いい人...?と思ったことがほとほと悔しいです!(笑)
ウイスキーを使った投票というのはよくあることなんでしょうか
なかなか洒落た演出だなと思いました。^^ -
美術品の真贋を舌で瞬時に判別できる神永美有と、女子短大で美術講師をしている佐々木昭友のコンビによる、美術品にまつわる連作短編集。神永は舌で判別というオカルトチックな能力はありながらも、理路整然とした思考を持ち魅力的な探偵役となり、語り手となる佐々木は、はちょっとおとぼけもある名助手役。言わば定番スタイル。
そんな設定の上で取り扱われる美術品については、ボッティチェリ、古地図、涅槃図、フェルメール、アールヌーボーのガラス工芸品と幅広い。どれも含蓄が豊富でいてそれだけでも楽しめるのに、物語としても完成度高し。シリーズ化されているので次作にも期待。 -
主人公の美術講師が、ある古本屋の息子である、じきに美術コンサルタントとなる男と出会うところから始まる。
主人公の講師としての知識もさることながら、コンサルタントの男は真贋を舌で感じる変態な上、頭も切れる。メインの知識は講師、それを補填するコンサルタントの男の関係は、この美術ミステリーをより楽しく感じさせる。まさに美術探偵と言える。
構成はいくつかの美術品に関する事件が各話で描かれていく短編型。個人的に好きな話は早朝ねはん。
続編も出ているので非常に気になる。 -
解説で『大漢和辞典』について触れられていましたが
怏々として、とか
巧言令色少なし仁、とか
気になってピックアップした言葉でした
(両者とも高校国語の教科書で出てきているので)
表紙
《アンドロス島のバッカス祭》1523-1526
イタリア ルネサンス期のヴェネツィア派巨匠
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ
酒の神ディオニュソスの話、バッカス祭の話、興味深かった -
無味乾燥な文体で、美とそれを利用する人たちを延々語られるとただただ味気ないなあ…という印象でした。…申し訳ありません…。
私は美術に関しては全くの素人でちゃんと習ったこともなく美術展に行っても「この絵なんか好き」レベルですし、読んでいると作者の美術知識が豊富なのはわかるのですが、美への賛美が根幹にあるというよりは、破綻ないトリック(というのかな?)のために古今東西様々な美術品の成立年代や時代背景なんかを利用したかったのかなあ…とばかり思ってしまいました。
ある登場人物の特殊能力設定から、美術品の真正論(本物だから価値があるのかそれ以外の価値があるのかという意味で)という永久的課題にきりこむ心意気があるのかと思いきや、ちょろっと述べただけで設定も活かしきれてない感じもしましたし…。「真に本物が偽物かは2の次で、理論説明が誰かを説き伏せる役に立ったならまあいいか」というスタンスに思えてしまいました…。
せめて登場する美術品(架空含む)が美しい文体で美しく描写されていたら嬉しかったのですが、主人公たち2人が美の専門家という設定の割りには、文体も言葉も俗っぽくて優美さはなく…。その割りに美に関係ないところで、小難しい非日常用語が散りばめられていて読みづらいです…。
これは買ったけど、続刊は買うことはしないかなあ…。 -
摂南大学図書館OPACへ⇒
https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99288272 -
舌で真贋が分るという特殊設定なので、鑑定にまつわるといっても、こっちが本物で終る、単純な話は当然ない。美術品やその鑑賞にまつわる蘊蓄をベースに、凝った話が続く。細かいところのまで神経が行き届いた美術ミステリとして完成度は高いが、重点はそこにはなく、人間ドラマの方のようだ。きちんとした、と形容されるような話が好きな人には合うと思う。
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歴史小説の人の認識だった門井慶喜さんに、美術系ミステリーが何冊かあると知り、早速読んでみた神永美有シリーズ。
美術品を見たときに、贋物なら苦味を本物なら甘味を感じるという天才目利きが活躍する短編集。
個人的に今年は美術ミステリーにはまっている。原田マハさん、北森鴻さん、深水黎一郎さん。探せばたくさんあってうれしくなる。
舌で本物が絶対的にわかる天才の無双ストーリーかと思いきや、なにをもって本物なのかの解釈により、ストーリーは二転三転。最後の話などは、舌鑑定でてこないし。
ボッティチェリ、バーン・ジョーンズ、フェルメールからモラエス、涅槃図、三彩まで東洋西洋問わず次々と展開されるさりげない蘊蓄にほえーっとなる。続編も読みたい。