- Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167838812
作品紹介・あらすじ
世間には知られていない、一風変わったふしぎな職業についた人々に光を当て、その仕事の詳細を聞いた「架空」のインタビュー集。ひょっとしたら世界のどこかに、あるかもしれない……、知られざる「わたくし」たちの物語。クラフト・エヴィング商會と、写真家・坂本真典氏が紡ぎだす「ひと」と「仕事」にまつわる19人の肖像。
感想・レビュー・書評
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一冊丸ごと大人の悪戯。それも善意いっぱいの悪戯だ。もしくは夢。ファンタジー。
浮世離れしたこの本は、クラフトエヴィング商會のもの。
ひとも物も、写真がとても良い。
読んで良かった。私はもう、この本の虜だ。
19人のひとたちが自分の仕事を紹介していく。
「月光密売人」「秒針音楽師」「果実鑑定士」「三色巻紙配達人」「時間管理人」「チョッキ食堂」「沈黙先生」「選択士」「地歴測量士」「白シャツ工房」・・
もうお分かりかもしれないが、そんな仕事はこの世にはない。
どれも架空の仕事。それを「いかにも」というように紹介していく。
仕事に必要な小道具の写真まで載せたりして。
最相葉月さんや小川洋子さんまで登場している。
最相さんは「二代目・アイロンマスター」。小川さんは「冷水塔守」。
不思議の国の住人として、すっかり馴染んだ表情で写真に納まっている。
読みながら小さな笑みが何度も漏れて、そんな仕事への憧れも湧いてくるのが不思議。
そして残り数ページまで来ると「じつは、わたくし本当はこういうものです」となり、ひとりずつの顔写真と本名での種明かしとなる。
どの方もクラフトエヴィング商會に縁のある方たちだ。
大ラスに登場するのが吉田篤弘さんと吉田浩美さん。
おふたりの少し恥ずかしそうな笑顔がとてもチャーミング。
この本は「司書はときどき魔女になる」の中で紹介されていたものだ。
大島さんは「シチュー当番」という仕事がお気にいりらしい。
小さな森の中にある冬限定のひっそりとした図書館で、冬眠するように本を読むための図書館だ。そこで出されるのがコーヒーとコッペパンとシチュー。ブランケットも貸し出す。
面白いことに、この「シチュー当番」の仕事があまりにも人気があって、問い合わせが絶えないのだそうだ。こんなに人気があるならいっそ本当に開いてしまおうかと考えたらしい。
ああ、いいなぁ。そうしたら私も行きたい。
冬の間ここで好きな本が読めるなら、それもテラスで星空のもと読めるなら、春夏の仕事も頑張れる気がしてくる。本は持ち込みで、読んだ本は寄付できるシステムというのもいい。
「バリトン・カフェ」というのもある。
ここはコーヒー豆に毎晩「カラマゾフの兄弟」をバリトン声で読み聞かせるらしい。
するとコーヒー豆が「バリトン化」して、極上の味になるという。
モーツァルトを聞かせてワインを熟成させるという話もあるくらいだから、これもあながちウソではないかも・・いや、矢張りあるはずがないか・笑
ここではないどこかに、誰かに喜ばれる仕事を持つ。それもコアであるほどいい。
どこにもない仕事。自分だけが出来る仕事。
利益はあがらないかもしれない。でも世界にひとつだけの仕事。
そんな夢を抱いたことがあるひと、いませんか?
クラフトエヴィング商會のこの本が、その夢をみさせてくれる。
これは買って、ずっと傍に置こう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人から見れば
『なんでそんなアホなことを…!』って言われたり、
バナナで釘が打てるんですってくらいの
冷たい視線で見られてしまうような(笑)バカバカしいことに
真面目に取り組んでる大人たちが
昔から大好きです。
例えばどんなに売れても
大御所と呼ばれる年齢になっても、
生涯一コメディアンを貫き通す志村けんなんて
バカ殿の格好していても
自分はカッコいいと思うし(笑)、
映画監督や脚本家で言えば
タランティーノや三池崇史やクドカンのように
周りから何を言われても
マニアックさとオタク臭を捨てない徹底ぶりは
アホやなぁ~っと思いつつも
やっぱ憧れちゃうんですよね(笑)
(日本での栄光を捨て、アメリカに単身乗り込んで、ホットドック早食いに命を懸けている小林 尊さんとかね)
一見なんの役にも立たないような
無駄なことにこそ
実は人生の妙味があると思うし、
そんな感覚を解っている『遊び心』や『粋さ』こそが
ホンマの大人なんやと
自分は勝手に思ってます(笑)
で、この本、
前々から気になってたんやけど、
先日久々に京都にあるこだわりのセレクト書店『恵文社一乗寺店』に行って
ビビビと目に留まったので、
コレはまさに今が読み時!と思い
石田千さんのエッセイと共に購入しました。
コレは実際には存在しないんやけど、
こんな職業あったらいいなぁ~っていう
架空の職業を考え(笑)、
その仕事に携わるプロの職人たちに
その仕事の内容や極意や魅力、
始めたきっかけなどを聞いた
架空のインタビュー集なんですよね。
しかも秀逸なのが
その懲りよう(笑)!
ご丁寧にその人物になりきったモデルさんたちの写真と
リアルに再現した仕事道具の写真付きで(笑)、
架空の職業に携わる
その道のプロたちの生き様や
歩んできた人生までをも浮かび上がる構成になってるから
嘘バレバレなんやけど(笑)、
なんかじんわりそれぞれの人生に
共感したり、
読むたびに憧れを抱いてしまうんですよ(笑)(^_^;)
19人分の、
変てこで魅力的な
嘘の仕事の数々は(笑)
どれも興味深いし、ロマン溢れるものばかりなんやけど
中でも自分が惹かれたのは、
なんと昼間の日中に
30分以内に月の光を届けてくれる
ロマンチックな職業
『月光密売人』、
(「月、一丁頼むわ」「あいよ」っていうやりとりを気軽に交わせる、ただの月光売りでありたいってセリフにまたグッとくるんですよ)
聞こえるか聞こえるないかというほどの小さな音で
一分とかからない秒針だけで計れる短さの
「針の穴のための音楽」を奏でる
『秒針音楽師』、
(「一枚の落ち葉のための音楽」の譜面まで再現したその凝りように拍手!落ち葉と同じ大きさで、譜面そのものにも落ち葉が封じ込められてます)
食堂なのに、あるのはチョッキ(ベストのことね)のメニューだけ。
選んだチョッキによって
出てくる料理が決まるという(笑)
リアル「注文の多い料理店」
『チョッキ食堂』、
(経営者夫婦の「変な食堂だねって笑って欲しい。笑って食べるご飯が一番美味しいんです」って言葉に妙に納得してしまったなぁ)
力任せに抜こうとするととんでもない悲劇を生むことになる(笑)
コルク救出に命を懸ける
『コルク・レスキュー隊』、
そして、もっともインパクトがあって
ニヤニヤが止まらなかったのが、
寒い冬の夜にだけ開く「冬眠図書館」なる場所で、
お夜食にあったかいシチューを振る舞う(笑)
『シチュー当番』!!
深夜から朝まで開いてる図書館というだけで
本読みにはたまらんのに
なんと、
シチューとコーヒー、パン、ブランケット付きで星空が見えるテラスの下、
ふくろうの声を聞きながら本を読めるなんて!
贅沢にも程がありますよね(爆)(^^;)
しかも冬の夜に振る舞われるのが
スープでもお茶でもお汁粉でもなく
(どれも好きやけどね)、
シチューという絶妙のセンスに
もううっとりですよ(笑)
(当番というネーミングがまた、学校給食を思わせて、懐かしくも甘酸っぱい感覚に浸れます)
シチューだけを食べたいシチューファンのために(笑)
シチュー回数券なるものまで
リアルな写真付きで紹介されていて、
この私設図書館だけは
どっかのお金持ちの人、
ホンマに実現してくれないかなぁ~っと
切に願ってます(笑)(^^;)
それにしても小説の世界観も大好きな吉田篤弘さんと吉田浩美さん二人の制作ユニット、
クラフト・エヴィング商會の手掛けた本は
どれもシュールでバカバカしくて(笑)楽しいんやけど、
コレほど何度も読み返して
ニヤニヤできる本はないですね(笑)
ロマンと遊び心の解る
大人にこそ
読んで欲しい至福の一冊です!
あっ、そうそう、
巻末にはその職業のプロになりきったモデルさんたちが
本当は誰なのかが掲載されてるんやけど、
本読みなら分かるあっと驚く人が
役になりきって紛れこんでるので(笑)、
そういう意味でも笑えます!-
nico314さん、いつも沢山の花丸ポチと
あったかいコメントありがとうございます!
そしてそしてご無沙汰してすいません!( >_<...
nico314さん、いつも沢山の花丸ポチと
あったかいコメントありがとうございます!
そしてそしてご無沙汰してすいません!( >_<)
実はアラフォーにして
住み慣れた大阪を離れ
花の都、大東京へと先週上京してまいりました(笑)
そんなこんなで何かとバタバタとしておりまして
お返事遅れてしまいました(汗)
まだまだ残暑は続いていますが
nico314さんはお体大丈夫ですか?
あははは(笑)
もう~、nicoさん、
必殺褒め殺しですや~ん(笑)
嘘でも褒められると
どこまでも舞い上がってしまう
豚もおだてりゃなんとやらな性格なんで(笑)、
電車の中でコメント読みながら
一人ニヤニヤしておりました(笑)
↑完全にアブナい人
いや、ホンマ遊び心は
大人になった今やからこそ
じつは必要な気がします(^^)
時間的効率を優先にしたり
合理性をただ追求していく生き方より、
一見ムダやと思うことに
どれだけ真剣になれたかが
自分の人間力を広げ大きくしてくれるんやないかな~なんて(笑)
まぁ、そういう自分の場合は
いかんせんムダにかける割合が多すぎるので(笑)、
たまには真面目にって
逆に思います(汗)(‥;)
2014/09/07 -
円軌道の外さん、こんばんは。
お引越し後の忙しく落ち着かない中で、電話でもなくわざわざ顔を見せにごあいさつに来てくださったような感じで...円軌道の外さん、こんばんは。
お引越し後の忙しく落ち着かない中で、電話でもなくわざわざ顔を見せにごあいさつに来てくださったような感じで、嬉しくもかえって申し訳ない気持ちです。
お疲れでていませんか。
私は引っ越しなどの大きな出来事の後は1か月程して風邪をひいたり体調を崩してしまうことがありました。
どうぞ無理なさらず。
東京で新しい楽しみなどは見つかりましたか?少しずつおもしろいことに目が向いていきそうですよね。
小説の舞台なども、身近にあるのでは?
2014/09/08 -
nico314さん、遅くなりましたが、
沢山のお気に入りポチとあったかいコメント
ありがとうございました!
いえいえ、何をおっ...
nico314さん、遅くなりましたが、
沢山のお気に入りポチとあったかいコメント
ありがとうございました!
いえいえ、何をおっしゃいますか(笑)
いつも沢山のお気に入りポチ頂いてるし、
nico314さんのレビューで勉強させてもらってますもん。
あっ、引っ越しはなんとか無事終わったけど、
まだまだ荷物の整理はできてない状態ッス( >_<)
うーん‥東京は人が多い!
電車の乗り換えがややこしい!(笑)
周りの標準語にまだ慣れないし(汗)
ただやはり大都会だけに
映画や演劇や美術関係のイベントなどは
関西とは比べ物にならないくらい沢山あるし、
町田や吉祥寺や調布なんかも
よく小説に取り上げられてきた町なので
そこで生活できることは
かなりの刺激でもあります(笑)
もともとボクサーとして
最後にひと花咲かせるために上京したので、
そちらで結果出していきたいですね(^^)
2014/10/01
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【収録作品】月光密売人/秒針音楽師/果実勘定士/三色巻紙配達人/時間管理人/チョッキ食堂/沈黙先生/選択士/地歴測量士/白シャツ工房/バリトン・カフェ/冷水塔守/ひらめきランプ交換人/二代目・アイロン・マスター/コルク・レスキュー隊/警鐘人/哲学的白紙商/シチュー当番/じつは、わたくし本当はこういうものです
なんだか好きな感じの本。
それらしい小物まで作っているこだわり感がいい。
御多分に洩れず、「シチュー当番」の〈冬眠図書館〉に行きたくなった。
それぞれの架空の仕事もいい味を出しているが、最後の「じつは、わたくし本当はこういうものです」で正体を明かしているのがまたいい。
温かい気持ちになれた。 -
不思議な職業が19個。それぞれ人物の写真と簡単なプロフィール付き。一瞬本当にこんな職業の人がいて、その人達が語っていると信じてしまうようなクオリティ。いやいや、世の中には本当にこんな職業の人がいるかもしれない。最後にこの人物達の本当の姿(編集者やら、作家やら、大家さん親子やら)も載っていて、それもまた楽しかった。
私が気に入ったのは、秒針音楽師、果実勘定士、時間管理人、チョッキ食堂、バリトン・カフェ、シチュー当番…ほら、この職業名を見るだけで、この本が読みたくなってきませんか?-
読みたくなりました!さっそく登録しました (^o^) 参考にさせてもらっています。ありがとうございます。読みたくなりました!さっそく登録しました (^o^) 参考にさせてもらっています。ありがとうございます。2014/09/11
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けいたんさん☆
こんばんは(^-^)
コメントありがとうございます♪
こちらこそ、いつもけいたんさんのレビューを
参考にさせ...けいたんさん☆
こんばんは(^-^)
コメントありがとうございます♪
こちらこそ、いつもけいたんさんのレビューを
参考にさせてもらっています!
私の読んだ事のない分野などすごく気になって、
全部「読みたい」に登録したい気持ちを
必死に抑えております( ´艸`)
これからも色々教えてくださいね(*^^*)2014/09/11
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「もしかしたら、どこかにこんな職業の人いるかも?」という人々を集めた、架空のインタビュー集。秒針音楽師とシチュー当番が好きだったなぁ。
毎日、寝る前に1編ずつ読んだ。日常から空想の世界へそっと連れて行ってくれて、1日の終わりにほっと穏やかな気持ちになれる本。 -
架空の職業の人達にその仕事について聞いた架空のインタビュー集。
「月光密売人」
昼間に夜の月光をこっそりと販売する人。
月光を売ってはいけないという法律はないから「密売」というのは言葉の綾らしいw
「沈黙先生」
色んな沈黙を挟みつつ語る小学校の先生。
ただ黙っているのも芸がないと思い、最近はパントマイムを交えたりして授業をしているらしいw
「もう、ほとんど喋りません・・・・・そうすると・・・・ほぼ全生徒が私に注目します・・・・嬉しいですね・・・・・(しみじみ)。」
そりゃ見るよねww
「ひらめきランプ交換人」
「あっ!」と思った時の「ひらめき電球」を交換している人。
電球が切れて閃かない人や、ソケットが駄目になって閃かない人がいるらしい。
「警鐘人」
火の用心のように見回りをしていて「まずいぞ、普通じゃないぞ」と思ったら本物のシンバルを「じゃーん」と打ち鳴らす人。
「人の心が内に向かって閉じてしまうのが、たぶん、この世で一番危険なことです。この世界にはいつでもどこでも『外』があるんです。」みんな分かってるよ、と言いつつ忘れてたり全然分かってないようなことを言うから、「じゃーん」とやって外の存在を気付かせるそうです。
このじゃーんとやる人が、本当はイラストレーターのフジモトマサルさんで、「こんな人だったんだ!」と初めてお顔を拝見しました。
また、好きなイラストレーターさんがクラフトエヴィング商會と繋がっていたのがなんとなく嬉しかったです。
架空の職業のでっち上げ方や、インタビューの内容がつむじ風食堂などを読んでいる時と似通ったふわりとした雰囲気があってとても良かったです。
仕事であった嫌なことも読んでる間は忘れました。 -
好きだな~~~、とつくづく。
小川洋子先生も一緒にやりたいと仰るのも分かる。
架空のインタビュー集です。
でも、あら?これってほんとはあるんじゃないのかしらん・・・??と思ってしまう。
むしろ、あったら素敵だな、なーんて。 -
連載当時、信じた人達がいた、というのがほのぼのとしていいですね。
こんな人もいたらいいなあ。 -
おもしろかった
架空の職業。ほんとにありそう。
冬眠図書館あってほしいなあ。
本当はこういうものですの最後のしめもさすがだなと感じた。最後は現実に戻すという話も素敵に思う。 -
おもしろい!
月光密売人、秒針音楽師、沈黙先生…
一風変わった職業の人の「架空」のインタビュー集。
人物写真もあってリアルです。
ホントにあるのかも!どこかにあったらいいな!とわくわくしました。
おいでませ、空想世界。