真綿荘の住人たち (文春文庫 し 54-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 1265
感想 : 100
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167852016

作品紹介・あらすじ

真綿荘に集う人々の恋はどれもままならない。性格の悪い美人に振り回される大和君、彼に片思いするも先輩の告白に揺れる鯨ちゃん、男嫌いで、今は女子高生と付き合っている椿。大家で小説家の綿貫さんも内縁の夫との仲はいかにもワケありで。寄り添えなくても一緒にいたい-そんな切なくて温かい下宿物語。

感想・レビュー・書評

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  • 最近 好きな小説が基本
    【生き方】がテーマで、この作品みたいに登場人物毎に主役が変わって一冊で色んな目線で読解力を使う感じの小説が好きです

    この本は【共感型】と言うより煩わしさ、歯痒さを全面に出して、読者に【あなたはどう思いますか?】と問いただされる感じでした。
    色んな人がいて、色んな考え方があるのが当たり前
    どう受け入れるか、共感出来ないなら放っといてあげれるか…

    話は少し変わりますが…自分は同僚を【今年の漢字】みたいな形で漢字一文字で考えてます
    基本人間 長所と短所は同じでそれが上手くいってれば長所、駄目なら短所になるからです

    ●社長【謎】人の考えない行動をおこせる>理解できない事してしまう
    ●部長【迷】人に気をつかう>個人個人で気の使い方を統一しないので絶対に不公平にする。常に迷ってるの誤魔化し迷う
    ●主任【子】少年の心を持ってる>上には可愛がられるが下からは好かれない
    ●自分【考】論理的に考える>常に考えすぎる、何時間でも考えて他の作業もしてるので話すと人によっては疲れる人と思われる
    ●社員【盗】抜け目を見つける天才>会社の物や、土産品など基本持ってく、どうどうとサボる
    ●社員【適】適当、それに見合った選択をする>執着、意欲全く無し、仕事がザツ。自分の都合悪いことは綺麗さっぱり忘れる
    などなど
    数人あげるだけでも
    結構理解できます。(会社ろくな奴居ないな…)

    ※んで結局 俺が何が言いたいかって言うと…
    【LINEのアイコンやプロフィール欄のコメントで、その人の、人となりって ほぼ分かってしまうよね!】って事!!

    • ゆーき本さん
      【迷】は「迷惑」の「迷」かと思ってしまいました笑 【盗】はヤバいですね笑
      【迷】は「迷惑」の「迷」かと思ってしまいました笑 【盗】はヤバいですね笑
      2023/01/14
    • ベルゴさん
      【迷】は迷惑も入ってますよ(笑)
      迷走とか…
      【迷】は迷惑も入ってますよ(笑)
      迷走とか…
      2023/01/14
  • 『家族とも友人とも恋人ともちがう。けれど、赤の他人とも言いきれない。ゆるやかだが濃密な関係のもと、下宿人たちは食事をし、今日も同じ屋根の下で眠りにつく。(三浦しをん「本屋さんで待ちあわせ 〈真綿荘の住人たち〉」より抜粋)』

    『下宿』と聞いてどんなイメージを思い浮かべるでしょうか?木造の古いアパート、すべてがレトロな雰囲気、そして個性豊かな住人たち。私の勝手なある意味ステレオタイプのイメージですが、こんな光景が浮かびます。恐らくそれは昭和を代表するマンガ家たちが若手時代に暮らしたという伝説の”トキワ荘”のイメージがこびりついているからかもしれません。このレビューを読んでくださっている皆さんも、マンガに詳しい方はもちろんのこと、あまり興味がないという方でも名前ぐらいは聞いたことがあるはずの”トキワ荘”。そんな伝説の”トキワ荘”があった椎名町のすぐ隣に江古田という街があります。『八百屋や居酒屋やカフェやパチンコ屋とにぎやかで、だけど妙に親近感の湧く軒並み』、そんな街にひっそりと佇む『真綿荘』。この物語はそんな『真綿荘』に暮らす住人たちの日々の営みを綴る物語です。

    『もし俺が第一志望の東京の大学に受かったら、マキちゃん、俺と付き合ってください』と『薄暗くなりかけた教室』で熱意を込めて告白するのは大和葉介。『次の瞬間、櫻井マキは真顔で答えた「いや、ふつうに無理だから」』とあっけなくノックアウト。『たとえ東大に合格したってエッチしていいと思えるほどにも大和のこと、好きじゃないし』と駄目押しし、『金輪際、私を性欲の対象として見るなよ』と言い捨てて立ち去る櫻井マキ。『C判定止まりの大学合格に向けた闘志を新たに燃やし始めた』大和は数ヶ月後『郵便屋さんが大和君の家のポスト』に投函した『合格通知』を受け取ります。そして『大急ぎで櫻井マキの家を訪ねて交際を迫り、今度はローファーの踵で蹴られんばかりの勢いで拒絶されたことは言うまでもない』というオチ。やむなく家に帰った大和は母親と東京での住まいについて話します。下宿を勧める母に『下宿なんて、俺、嫌だよ。門限とか色々と面倒臭そうだし』と渋る大和。『大丈夫。朝夕食付きの上に、うるさい規則は一切なし。お風呂は共同だけど、トイレは各部屋についてる』と母親が目星をつけた物件の説明を受ける大和は『ボロいアパートでいいからやっぱり一人暮らしのほうが』と粘ります。それに対し『あんた、どうせろくに勉強もせずに女の子連れ込む計画でしょう。そんな下心丸出しに…』と上手を行く母親に一言も反論できない大和。『アパートの下見すら一度もすることができないまま』、『荷物は上京二日前に東京へと送られ』ます。そして『品川駅へ着くと、あまりの混雑ぶりにめまいがした』という大都市・東京へとやってきた大和。『ようやく乗り換えた電車が江古田駅に到着したとき、彼は世界一周の旅を終えたような気持ちだった』と『人通りの多い商店街』を歩きます。『ようやく目的のアパートを見つけた』大和の目の前に建つ『由緒正しい木造二階建てのアパート』。『ブロック塀に、「真綿荘」という表札が出て』います。『ほっとしたのもつかの間、大和君の中で急激に緊張がこみ上げてきた』という瞬間。『あれ、お客さんですか?誰にご用ですか?』と『チェックのプリーツスカートを穿いた女子高生』に声をかけられると『直立不動のまま、絶句』する大和。『とっさに三つの選択肢が浮かんだ。”大家さんを呼んできてください”、”名前を教えてください”、”今、彼氏はー”』という大和の頭の中。しかし『男と付き合ったことありますか?』と『童貞の大和君は、第四の選択肢を導き出してしまった』という情けない展開。それに『ありません』と『彼がひるむほどの即答』をした女子高生。そんなズッコケな第一歩ながらも、大和の『真綿荘』での下宿生活がスタートしました。

    6つの短編から構成されるこの作品。視点が短編毎に切り替わりながら展開していく連作短編の形式をとっています。そして、この切り替えに島本さんならではの一工夫が入ります。それは最初の〈青少年のための手引き〉の記述から登場する『大和君』という表現の仕方です。『大和君は思った』、『大和君は、一歩、前へと踏み出した』、そして『一夜をともにするということを、大和君はまだ知らない』といった感じで何か大和君を主人公にしたドラマのナレーションの語りかのようなその表現。一方で他の登場人物の視点になると『「それでも椿ちゃんが好きだったから、一緒に暮らすことにしたの?」その問いに、私はゆっくりと目を閉じた』というように、その人物に第一人称が普通に移動します。主に6人の人物が登場するこの作品にあって、冒頭から最後まで登場し続けるのは大和葉介のみです。それにも関わらず彼だけがふわっと第三者的に描写される不思議感。そして、そんな独特な描き方は後述する様にこの作品から受ける印象にも大きく影響を与えていきます。

    『古い木造の二階建てアパート』を舞台にした作品というと、私の場合、辻村深月さんの「スロウハイツの神様」や三浦しをんさんの「木暮荘物語」が思い浮かびます。いずれも私の頭の中に深く刻まれた”トキワ荘”の雰囲気感の土台の上に独自の世界観を展開する物語です。恐らく辻村さんも、三浦さんも”トキワ荘”の呪縛からは逃れられないのだと思いますし、読者の期待を考えるとそうなるのだとも思います。そんな私がこの作品の一編目で驚いたのは、えっ?これ、島本さんの作品なの?という少しはっちゃけた世界でした。前述した大和と櫻井マキとのシーンもそうですし、『真綿荘』に到着直後の八重子とのすっとぼけた会話なども意外感が満載です。しかし、この感じで最後まで突っ走るのかと思ったら、二編目の〈清潔な視線〉になって一気に島本さんのいつもの感じが戻ってきます。そもそもこの短編のタイトルからして何か嫌な引っ掛かりを感じますが、さらに『愛されなくてもいい。でも、なんらかの形で必要とはされたい。体は死んでいても、淋しさを感じる心の機能はまだ生きているから』とか『それは自分の手首を切り続ける人と、ほとんど行為の本質は同じだった。もっと、絶望しなきゃ。もっと頭を冷やさなきゃ。凍り付いて感情が動かなくなるくらいに』と書かれると、これはもう島本さんの重厚な作品世界にどっぷりと浸かるしかなくなります。それは、男嫌いで女子高生と付き合う椿や内縁の夫と一つ屋根の下で暮らしているはずが何か訳ありな大家の綿貫といった、『真綿荘』に暮らす訳ありな人々を設定した以上避けられないものだとも思います。そんな彼らに共通するのは、『過去と現在と未来のように、別物のふりをして、実は一瞬の中にすべてある』という考え方からくる衝動が引き起こすものでもあります。しかし、不思議なのはそんな重厚な作品世界が展開するはずが、作品から受ける印象は最後まで重厚になりきらない点です。島本さんの作品から受ける、ただひたすらに重苦しい世界、それが作品全体を覆いきらず、どこかしらはっちゃけた雰囲気がずっと残った印象を受けるのがこの作品。それが大和の描かれ方だと思いました。前述したように、大和だけが、視点が切り替わってもそれは大和を見る第三者視点での描かれ方であって、大和自身の中に深い闇があったとしてもそれが第一人称として描かれることはありません。『大和君の正直さや無邪気さにはひかれるんです。人のことを素直に誉められるところにも。大和君はすごくニュートラルな人ですよね』と鯨ちゃんが語る大和の印象は読者がこの作品から受ける大和の印象と寸分違わないものだと思います。そして、島本さんはこの作品では『二つの物語が絡み合っています』と語ります。その一つが『純朴にして超鈍感な青年、大和君を中心とした青春物語』というこの作品の”光”の世界、そこに島本さんらしいドロドロとした”闇”の世界が絶妙に絡み合って展開していくのがこの作品なのだと思いました。そんな”光”と”闇”は、”光”を感じる文庫本に対して、”闇”を感じる単行本というように表紙のデザインの極端な違いにも感じられるものでもあります。そんな”光”と”闇”という相反する側面を合わせ持ったのがこの作品の一番の魅力。とても上手く構成された作品だと思いました。

    『大学に入ったら絶対に一年以内に可愛くて普通の彼女をつくるのだ、と心に誓った』大和。一方で『愛されなくてもいい。でも、なんらかの形で必要とはされたい』と願う椿。一つ同じ屋根の下に暮らしていても、それぞれが抱く異性の捉え方、他者の感じ方、そして人間関係に対する考え方は当然異なります。そんな色んな人達が集う『真綿荘』を舞台にした物語は、住人たち一人ひとりの顔が目に浮かぶような人の生活の息吹が感じられる物語でした。

    「真綿荘の住人たち」、それは『古い木造の二階建てアパート』を舞台にした印象的な物語の一つとして私の中に強く刻まれた、そんな作品でした。

    • きぼりねこさん
      おすすめしていただいた「真綿荘の住人たち」読みました。
      とても不思議な読後感でした。

      確かに初っ端から大和君呼びに違和感を感じていましたが...
      おすすめしていただいた「真綿荘の住人たち」読みました。
      とても不思議な読後感でした。

      確かに初っ端から大和君呼びに違和感を感じていましたが、そういうわけだったんですね。
      算数の文章題のように、急に主人公から遠ざかったような、変な感じがしていた理由がわかりました。
      また、私が読んだのは文庫ではなかったので、本当にこれであっているのかな?と思うほど暗くてタイトルも赤くてホラー調でしたが、文庫の表紙は全くイメージが違って驚きでした。
      そこにも理由があったとは!
      表紙から、さてさてさんとしをんさんにおすすめしていただかなければスルーしていたと思うので、面白い本に出会えて良かったです。
      ありがとうございました。
      2021/03/29
    • さてさてさん
      きぼりねこさん、こんにちは。
      この作品いいですよね。”算数の文章題”という表現とても面白いです。確かにそうですね。
      表紙の件は本当、そうだと...
      きぼりねこさん、こんにちは。
      この作品いいですよね。”算数の文章題”という表現とても面白いです。確かにそうですね。
      表紙の件は本当、そうだと思います。もし、何の情報もなく、単行本だけ見たらおそらく手にしなかったと思います。単行本と文庫でこんなにも表紙のイメージを変えた理由を知りたいと思いました。私のこの作品の印象は間違いなく文庫の柔らかいイメージですね。でも、単行本のあの表紙があったからこそ、いろんなことを逆に考える機会があったともいえます。なかなかに表示だけとっても奥深い世界ですね。
      古い木造アパートを舞台にした作品、他にもあったら読んでみたい、そう思いました。
      今後ともよろしくお願いします!
      2021/03/29
  • この本を読んで、色々な恋愛観を知ることができた。
    読み進めるうちに、住人同士の関係がそれぞれの恋模様と共に浮きぼりになるところが面白かった。

  • 真綿荘の住人達と言うのだから、誰!が主人公ってわけではないのかもしれないけど、やはり誰かではあって欲しかったところ。面白くなりそうでいて、さっとかわされてしまうのが意図的だとしたら脱帽なんだけど。

  • 連作短編集。最初は軽やかで微笑ましかったのが、最後は全く印象が変わっていた。
    住人には共感できるところもできないところもあって、椿さんと綿貫さんが二人で会話している場面が一番しっくりくる、というか分かる。
    気遣いと無神経で、軽くイラッとさせ合ったり留飲を下げ合ったりする感じや、どおりでバターの味しかしない、とかまさに女同士だなあと思った。

  • 青少年のための手引き
     北海道から東京に大学進学のために上京した大和君。
    清潔な視線
     椿さんと八重子ちゃんは恋人。
    シスター
     鯨ちゃんは大和君に恋する。荒野先輩は鯨ちゃんに恋する。
    海へむかう魚たち
     大和くんは大学の先輩絵麻さんと駆け落ちする。
    押し入れの傍観者
     晴雨(せう)さんと大家の綿貫さんの嵐の始まり。
    真綿荘の恋人
     綿貫さん目線の晴雨さんへの想い。

    真綿荘の住人は、大和君、椿さん、鯨ちゃんに
    晴雨さんと大家の綿貫さん。
    それぞれの人物が主人公となり、話に出てくる。
    大和君の存在が独特で、最初は何でも言っちゃう
    天真爛漫タイプに思えてたんだけど、
    だんだん真綿荘で生活していって、大人になってきて
    最初の頃と違う大和君になっていくのがよかった。
    そして、「大和」ではなく毎回表記が「大和君」と
    なっていることに、作者の意図を感じたよー(。-∀-)

    けっこう好きな作品だったなぁー!!

  • 島本さんの著書は5冊目。
    「わたしたちは銀のフォークと薬を手にして」
    「よだかの片思い」「ファーストラブ」「クローバー」と楽しんできましたが、本作はどうも合わなくて中盤以降モヤモヤしたまま読了。

    北海道から上京してきた大和君と住人が繰り広げる恋愛模様、そして人間模様。
    みんなそれぞれにありますが、中盤以降あまり共感出来なくて読みながら一歩引いてる感覚が抜けませんでした。

    個人的に「ドロドロ系」「駆け引き系」や複雑なのはどうも共感もしにくく、好みの問題なんだろうなぁと思いました。

  • 真綿荘の人たちは何かが少し違ったら、みんな幸せになれそうなのに…
    その少しの違いにもどかしさや歯痒さを感じてしまった。

  • 好んで手に取る島本さんの作品だが、こちらに限っては途中でいつも息切れしてしまい、今回やっと最後まで。

    真綿荘の若い住人たちの群像劇かと思って読み進むと、一筋縄ではいかないやはりの島本作品。それぞれ何かを背負い、抱え込み、時間の経過でやり過ごし、誰かに救われる様子が、細やかな筆致で描かれる。

    一方で、人が誰かに心を寄せる行きつ戻りつの描写は、私の心の奥にある懐かしい何かをも鳴り響かせる(アラ還でもまだあるはず…と信じたいけど)。上手いなあ。巧みだなあ。誰かを想う、一緒に居たいという感覚は良いものだ。

    終盤の過去のシーンは、やっぱり島本作品だなあと。でも選んだ先の養子縁組という手段が私には分かるような、分からないような。読み込めなかったのが残念。

  • 鯨ちゃん。どんな子なのかな?
    名前がいいですね。
    こんな下宿があって、そこに住んでいたら、それはいろいろなことが起こることでしょう。

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著者プロフィール

1983年東京都生まれ。2001年「シルエット」で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞。03年『リトル・バイ・リトル』で第25回野間文芸新人賞を受賞。15年『Red』で第21回島清恋愛文学賞を受賞。18年『ファーストラヴ』で第159回直木賞を受賞。その他の著書に『ナラタージュ』『アンダスタンド・メイビー』『七緒のために』『よだかの片想い』『2020年の恋人たち』『星のように離れて雨のように散った』など多数。

「2022年 『夜はおしまい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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