コラプティオ (文春文庫 ま 33-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 84
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  • Amazon.co.jp ・本 (579ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167900021

作品紹介・あらすじ

震災後の日本を描く異色の政治ドラマ震災後の日本の命運を、原発輸出という“禁じ手”に託したカリスマ総理・宮藤。だが独裁色を強める政権の闇にメディアが迫っていく。

感想・レビュー・書評

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  • 性格も立場も異なるふたりの青年が政治の世界をどのように渡り歩き、どのようにこの国を憂うのか。

    ひとりは総理補佐官の理想主義者の白石
    もうひとりは新聞記者の野心家の神林

    登り口や登頂ルートは違うのだけれど、同じ結論に至るのはおもしろかったです。
    宮藤を軸にして田坂が白石を育て、東條が神林を育てた対立軸もおもしろかったです。

    手段としての権力は、結果が手段を肯定しますが、
    目的としての権力は、腐敗が進み権力はやがて暴力へとエスカレートしていきます。

    また、理想とするリーダー像というのは存在しなく、その組織(社会)の成熟度や状況によって、理想のリーダー増というのが変容していくというのを提示しているのもおもしろかったです。


    学生の頃に読んだ職業としての政治、君主論を再読したくなりました。今読んだらあの頃とは捉え方が変わっているとは思います。
    (もうそんな気力もありませんが)

  • 震災後の日本を復興に導くカリスマ総理・宮藤。若き指導者に国民からの支持が集まるが、新聞の特ダネ記事が官邸の暗部を暴き出し…。

  • 挫けたまま立ち上がれないでいる震災後の日本で、巧みな弁舌を駆使し国民の心を捉え、総理に登り詰めた登り詰めた宮藤隼人。
    彼の政治信条に共感し、側近として支える白石望。
    白石と同期で、政治の闇を追いかける新聞記者の神林裕太。
    この3人を中心に、内閣官房長官、総理主席秘書官、事務秘書官、さらに敏腕記者等により、それぞれの思惑を秘めた虚々実々の駆け引きが繰り広げられる。
    題名の「コラプティオ」とは、どういう意味か不明のまま読み続けたが、ラテン語で「汚職・腐敗」を意味すると巻末で明かされる。
    原発産業による日本復興という大事業を計画する宮藤総理。日本フェニックス計画と銘打った政策は、震災で落ち込んだ日本人に希望を持たせる。
    しかし、ウラン鉱脈が見つかった国の軍事クーデターへの関与が疑われたあたりから、カリスマ総理の暴走が始まる。独裁者として変容していく総理の暴走を、誰が止めることが出来るのか。
    権謀術数が渦巻く政治の世界を、スリリングに描き出した政治小説エンターテイメントの手に汗握る展開は、頁を繰るのももどかしく、読みふけるばかり。
    「多くの場合、権力を行使する者は、その目的が正しいと思い込んでいる。さらに、正しい目的のためなら、多少プロセスに問題があっても許されると考えてしまう。しかし世界の歴史を振り返ると明らかなように、ほとんどの不幸は、それが正しいと思い込んだ人びとによって引き起こされている。権力者が権力を行使する快感に溺れ、正しいことを行っているという満足感に溺れ、人びとは不幸に巻き込まれていく」
    著者が綴るこの言葉は、現在のロシアによるウクライナ侵略に、見事当てはまるではないか。

  • 友人に勧められた一冊。
    真山作品はこれが初かな?

    面白かったです。
    震災復興を機にカリスマ的人気を集める総理大臣・宮藤。
    物語は宮藤を支える側近の白石と新聞記者の神林、二人の視線で描かれています。

    アフリカの途上国で起きたジェノサイドを伝える小さな記事からすべてが始まり、二人は政権の闇の部分を知ることになるー。

    別の作家さんで私がとても好きな作品があるのですが
    それもカリスマ的人気政治家が独裁者に変わる危うさ、流れに任せるのではなく「考える」ことの重要性を描いていたので私はこういったテーマが好きなのかもしれません。

    ただし薄っぺらい内容になることは許されないテーマゆえ、作家さんの力量が問われると思います。
    その点、この作品は最後まで読み応えのあるもので大変面白かったです。

    また、権力欲について書かれた巻末の解説もとても興味深く、改めて考えることの重要性を痛感しました。

    2017年13冊目。

  • 闇のない理想的なリーダー、国民的英雄のような総理を心の底から信頼し官邸入りする白石。
    読者の私も気づかないうちにジャーナリストとしてストーリーを通じ成長していく神林の描き方が秀逸。登場人物の中では総理秘書官の田坂が一番印象的だった。彼が一番熱い男なのかなと感じた。

  • 今現在に繋がっている小説で大変面白く読めました。この時代からプーチンは独裁者の部類になっていたんですね。確かに主人公とプーチンが重なって見えます。あの頃ロシアは良い状態とは言えず それをまともな状態に戻して来ました。そして今この有り様です。この小説は汚職腐敗ですが、見た目は高潔な人間ですが、立場が人を変えていく物語で将来日本にも起こる事だとおもいました。

  • 震災後に日本に現れたカリスマ総理・宮藤隼人は、〝禁断の原発政策〟に日本復興を託すが、その矢先、一人の日本人がアフリカで殺される。事件の背景に広がる政権の闇を追いかける新聞記者と、宮藤を支える若き側近は、暗闘の末、最後に何を見るのか。謀略渦巻く政治の世界を白熱の筆致で描く真山文学の真骨頂! 解説・永江朗
    (2011年)
    — 目次 —
    序章ーー二〇〇一年春
    第一章 洗礼
    第二章 野心
    第三章 私には、希望がある
    第四章 憎しみと軽蔑
    第五章 私たちはアフリカの杖になりたい
    第六章 おまえは何者なのだ
    第七章 そこに正義はあるのか
    解説/永江朗

  • 東日本大地震、並びに福島第一原発事故後の停滞感漂う日本に現れたカリスマ的総理大臣である宮藤隼人、その総理を官邸スタッフとして支える白石、総理の闇に迫る記者神林、それぞれの視点から物語が展開していきます

    宮藤総理は、あえて原発を日本経済復興のシンボルとして掲げ邁進し、巧みな演説で国民の心を掴んでいきます。しかし、成果を出したい焦りから、独裁色を濃くしていきながら、よろしくない方向に…

    官邸スタッフの助言も聞かなくたり、まさにプーチンが頭に浮かびました

    日本でも独裁者が現れないとは限らないですよ、と思わせるような内容で考えさせられました

    官邸内部や外交、官僚との攻防はなかなかイメージありませんでしたが、リアルで面白かったです

    新聞記者のネタ取り、裏取りの過酷さ、ジャーナリズムの大切さ、重要さも身に染みました。

    現状のウクライナ侵攻において、プーチンが必死にロシア国内の報道規制を張る行動も頷けました。

  • 購入済み→積読
    2024.03.30.読まないのでBOOKOFFへ

  • 2020年12月7日読了。

    久々の真山仁、外さない安定感。

    総理大臣 宮藤隼人は震災後に与党から離れ、衆議院選挙で第1党になり、総裁の座に就き総理大臣になる。

    このプロセスはあまりストーリーに関係ない。
    カリスマ性を持った宮藤の周りに、議員時代に宮藤の演説を聞いて政治学者をめざした白石とその同級生で新聞記者になった神林。

    国民の圧倒的な支持を得ている宮藤総理が震災後の復興プランでぶち上げた「原発の輸出」とそれに必要になる原料であるウランの調達を巡り、アフリカの小国を絡んだ疑惑につながっていく。

    真山仁、いい小説家だね。面白いよ、これも550ページを超える長編だが、中だるみせず、読み進められるのは腕がいいんだね。

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著者プロフィール

1962年、大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科卒業。新聞記者、フリーライターを経て、2004年、企業買収の壮絶な舞台裏を描いた『ハゲタカ』でデビュー。映像化された「ハゲタカ」シリーズをはじめ、 『売国』『雨に泣いてる』『コラプティオ』「当確師」シリーズ『標的』『シンドローム』『トリガー』『神域』『ロッキード』『墜落』『タングル』など話題作を発表し続けている。

「2023年 『それでも、陽は昇る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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