異邦人 世界の辺境を旅する (文春文庫 う 29-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167901509

作品紹介・あらすじ

『日本の路地を旅する』を超える衝撃がここにスペインの山間部、ネパール奥地、戦火のバグダッド……迫害され続ける人々の魂に寄り添って描き出す、大宅賞作家による渾身のルポ。

感想・レビュー・書評

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  • ガザ地区の入り口であるエレツ検問所までは行ったことがあるが、中に入る勇気はなかった。
    著者は入った。

    私の場合は、ただの野次馬なのでリスクを負ってまで入るのはちょっと、という感じだったのだろう。
    20年以上前のことだ。

    ガザ。
    元はと言えば欧米の思惑もあり、イスラエルが建国されたことに端を発する地区なのだろう。
    しかしながら、ハマスなどのやり方によって死者が増えていることは否めない。
    現在のイスラエルは、言ってみれば専守防衛に近く、やられたらやり返すが、あえてこちらからは攻撃しないのだから。

    ウィルタ人というのは初めて聞いた。
    日本人は義理人情に厚いところがあったと思う。

    しかし、日本人ではなく日本政府となると義理人情はまるでなく冷たい国だ、特に日本人以外には。
    それは、一部の既得権益に胡坐をかいている人たちが政策を決めているからなのか、既得権益を得ることのみに注力しているからなのか、それはわからない。

    世界にはいろんな人々がいることを知った。
    世界の国々は、ある程度は秩序だった、連続性のある対応をしているようい思うが、日本はどうなのか。

    日本は住みやすい部分のある国だが、誇れる国ではないような気がする。

    払ってもいい金額:300円

  • 「異貌の人びと」の文庫化。外国の被差別民族や迫害されてる人々のルポ。

  • 著者の出自は被差別部落なのだそう。それを知らずに著者が世界の辺境を異邦人として旅した紀行ルポなんだろうと思って読み始めた。特に最初はガザ地区へ行ったり、そのうえポルノ映画館に入ったり、イラクでも売春宿に行ったりしているもんだから、平和ボケの日本人の興味本位を満たすために話題になりそうなところに土足で踏み込んでいく系のものだと思っていた。
    でも、実はそれはだいぶ違っていて、それぞれの土地で異邦人として生きる人たちにフォーカスしようとしているのがわかってくる。
    特に一番最後「気の毒なウィルタ人」という北海道や樺太あたりに残る少数民族の章は一度読み、もう一度読み返した。ほかは外国の話で正直なところ実感に乏しいのだけど、原住民でありながら異邦人になることもあるという例だし、日本人が彼らを異邦人にしているのだから。日本では出自を隠して生きているのが、ロシアでは普通に自分のルーツを語りながら生きているという違いからも、過去から今に至るまでの日本人の狭量さを感じたよ。「気の毒なウィルタ人」という章題は、ウィルタ人との距離感がある感じがしてよくないと思ったけど、「気の毒」「かわいそう」と言いながら当事者性から距離をおく日本人に当てつけているのだろうかと深読みすれば、それなりのタイトルにも思えてくる。
    文章がうまいとはいえないし、著者自身が落ち着かない激しい気性の人のような感じが漂ってくるんだけど、それも自身のアイデンティティに近いところだからか。うまいといえないのも、思いが筆を上回っているからなのかもしれない。そこに寄って書いていくのは苦しかろう。そんな煩悶が文章ににじんでいるような気もした。

  •  石井光太と同様に、虐げられ差別される人たちを取材テーマにしたノンフィクション、本書中にギリヤーク(ニブフ)人につての箇所がある。ギリヤーク人といえば村上春樹著、『1Q84』に中央公論社から出版されている『サハリン島』を引用していた、このギリアーク人については第6章にて詳細に説明されている。

  • 被差別部落出身の著者が世界の被差別民族を訪ね旅したルポ。それぞれの民族の背景、概要はよくわかるがせっかく現地に行っているのでもうすこし深いインタビューが読みたい(取材費が少ないとあるので仕方ないとは思うが)
    聞いたことがあるのはロマ、アイヌくらいだったが、低い身分をあえて設定して民衆に優越感を与え、現状に満足させるようなしくみは、人間の本能に訴える世界共通のものなのかなあ。
    阿部さんが筆者と別れることができて良かった

  • 筆者の体調が大変悪い時期に書かれたとのことであり、全体的に雰囲気が暗いと感じた。それでも、自己のアイデンティティに関わる部分での疑問について、その解明のために出かけていくところは凄い行動力だと思う。

  • 旅をする作者。
    路地(同和地区)出身と公言する作者が、パレスチナ、バグダッド、スペイン、ネパール、イタリア、サハリンと世界各地の被差別民についてその実態を見て、感じたことを共有できる。
    「ふいに思い立ったパレスチナ取材」から始まる作者に対し、随分と情緒的でおかしな奴だ、と思っていたが、読み進めるうちにそれが若さのためであるのでは、と考えるようになった。
    アイヌのことはなんとなく知っていたが、サハリンのウィルタ人なんていうのは全く知らなかったので、意外な発見であった。

  • 大阪の被差別部落出身で、日本の被差別部落を訪ね歩いたルポルタージュの著書が、今度は世界に出て行ってあちこちルポするお話。
    一貫して被差別民に焦点を当てているのはそうなんですけど、今回は言葉の壁が大きかったかなぁ、と(^_^;)
    全体に物足りなさは否めません。敢えて言うなら、薄っぺらい。
    もう少し頑張ってもらいたいものです。

  • まるで自分がその場にいるかのような体験ができるルポ。
    自分の知らない世界を体感でき、表現としても学ぶ部分が多くある。

    内容に関する詳細なレビューは後日。

  • 【『日本の路地を旅する』の著者が描く辺境のリアル】スペインの山間部、ネパール奥地、戦火のバグダッド……迫害され続ける人々の魂に寄り添って描き出す、大宅賞作家による渾身のルポ。

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著者プロフィール

1978年、大阪府生まれ。大阪体育大学卒業後、ノンフィクションの取材・執筆を始める。2010年、『日本の路地を歩く』(文藝春秋)で第41回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。2012年、「『最も危険な政治家』橋本徹研究」(「新潮45」)の記事で第18回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞大賞受賞。著書に『被差別のグルメ』、『被差別の食卓』(以上新潮新書)、『異邦人一世界の辺境を旅する』(文春文庫)、『私家版 差別語辞典』(新潮選書)など多数。

「2017年 『シリーズ紙礫6 路地』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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