64(ロクヨン) 下 (文春文庫 よ 18-5)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167902933

感想・レビュー・書評

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  • 私が間違っておりました。申し訳ございません。

    上巻を読んで、「男の人が好きそうな小説だよね~」なんて知った風なことを書きましたが、まったくもって浅はかでございました。

    だってさー

    “己の信ずるまま職務を遂行した。明日のためにではなく、今日のために今日を使い切った。”

    とかさー

    “「上は変わるが職務は不変だ。広報のことは広報室で決める。今ここにいる俺たちが決めるんだ」
    「上イコール組織です。組織の意志を無視した広報なんて広報と言えません」
    「個人の集まりが組織だ。個人の意思が組織の意志になることがあっていい」”

    とか、男の人の好きそうなお仕事小説。組織論なんだもの。
    女の私はたいがいこういうのの外にいさせられますから、「け」と思って読んでいた部分があります。

    けど、残り200ページ、第二の誘拐事件が起きたことによって、大きく話が動きます。
    まさに怒涛の展開。
    ページを繰る手が止まりません。

    そして事件の全貌が明らかになったとき、第二の誘拐事件の犯人たちの人生を思うと涙が止まりませんでした。
    ネタバレになってしまいますから詳しくは書けませんが、実行犯の彼の義に殉じた人生と、彼の家族の今後を思うと…。

    上巻を読んで感じた数々の小さな違和が、最後まで読んだときにきちんと決着がついていました。

    そもそもこれは三上目線の語りなわけです。
    彼は刑事という仕事、つまり人間を見きわめることを生業としてきたので、彼の人間観察は多分正しい。
    だけど、彼が揺れると、私も揺らいでしまう。
    誰が本当に信じられる人なのか。
    どれが先入観で、どれが客観的な判断なのかを、常に整理しながら読まないと流されてしまう。

    そう思いながら読んでいたのに、雨宮の「大丈夫か?」には、そんな意味が込められていたとは。

    上巻を読んでいたとき、誘拐がメインじゃないのなら、タイトルに偽りありなんじゃないの?なんて思っていましたが、これはもう、このタイトルでなければなりません。
    全てはそこから始まったのですから。

    ただひとつだけ疑問な点を。
    三上が佐藤浩一ってミスキャストじゃないの?
    彼がお父さんだったら、娘の家出はないんじゃない?

  • 下巻後半の後半にぐっとストーリーが進み出す。上巻から歯軋りするような苦しい人間模様に翻弄されたが、ここにきて全てはやはりここに繋がった気がするのだ、ロクヨン。物語はここまでだが、ロクヨンの捜査は新しい展開を迎えさらに続いていく。そして、それが解決されときには広報課は確実死ぬことになる。しかし今の広報課はそこで終わることはないだろう。三上をはじめ課員たちは必ずや記者や世間に叩きのめされても立ち上がり誇りを持って仕事を全うするはず。
    ロクヨン被害者である雨宮の電話の数字ボタンを押す指先。元刑事、幸田の示す正義。松岡参事官の背中に、権力争いの上層部の怒鳴り声、記者たちの罵声に……いろんな人間の感情が上下巻を読み終わったあと胸の奥を駆け抜けていった。
    「たまたまが一生になることもある」元刑事部長尾坂別の言葉は、わたしの中に重く響いた。

  • 下巻に入る
    ワクワクの筈だったが、相変わらず刑事と警務の間で自分の立ち居地が定まらず、逡巡し疑心にかられ切れたり塞いだりする三上に多少イライラしながら頁を捲る。
    しかし、この鬱屈が後半への伏線。三上が刑事も警務もなく広報官として職務に向き合うと決めた時から物語は一気に動く。
    腹を括って匿名問題にケリを付けたのも束の間、“ロクヨン”を模倣したと思しき誘拐が勃発し、再び、今度は東京も含めたマスコミとの対峙の時が来る。
    身代金を運ぶ親の車を追って物語は緊迫の度を深め、全てが収束する思いもかけぬ真相へと雪崩打つ。最後まで精緻に積み重ねられた物語の紡ぎ方には身震いする程の物凄さ。
    もとより作者が得意とする警察を舞台にしたミステリー仕立ての話にして、仕事にどう向き合うか(これも作者が描いてきた“矜持”)の話であり、更にはその矜持を胸にしながら家族とどう向き合うかの話であった。
    昨日の朝刊の広告に『たちまち重版、累計80万部突破!』の文字が躍ったが、さもありなん。

  • 48
    なるほどやっと大枠が掴めた。
    本庁が刑事部を陥れる理由は、警察本部長に自分の手駒である人材を配置することで自身の天領とするためか。

    つまりロクヨンの闇情報を開示することで警察本部長、並びに刑事部長を辞任まで追いやろうって魂胆な訳か。

    2022.0726読了
    まさかのあゆみ家出事件は解決せず。
    美那子と三上の二人が自分の中にあゆみが生きている世界を構築することで生きていく糧にすることを選んだ。
    多分俺が見逃してる表現が死ぬほどあったろうけど一回読んだだけだとそう感じる。
    小説読んだのはリアルに10年ぶりくらいか。
    やっぱ映像作品と比べて難しいの一点に限る。
    まず登場人物が文字でしか追えないために直感で思い出すことができない。
    10ページも開いてしまえばそいつがどーゆー背景で何をしてたやつなのかは綺麗さっぱり忘れちゃう。
    小説の一番苦手な部分はここだな〜。

    あと64だからなのか分からないけど盛り上がる所少なすぎない?貯めて貯めて貯めてここっ!
    って時にあまり昂まりを感じなかった。映像作品のレベルが高すぎるのか。
    それとも読書レベルが低すぎて本来読み取れる物が読み取れてないのか。楽しめるはずの部分で楽しめてないのか。

    にしても64事件解決に至るまでの伏線張り時間は長すぎでしょ。
    事件解決への進捗があまりにも少なすぎて。正直に言うとかなり飽きてた。
    小説業界の最高点がこの作品っていうなら俺は一生小説にはハマれないな。
    結局雨宮が事件解決の糸口を見つけて事件は一気に佳境へ突入するわけだけど今思えばそれも無理がないか?14年の警察の捜索って一人に出し抜かれるようなそんなぬるいもんなの?
    なんか逃げる側の工夫とかそこら辺も触れてほしかったな〜と思う。

    どっちかって言うとサスペンスってよりサスペンスを取り巻く広報が抱える疑問や問題に三上が挑むって感じの構成だった。
    事件情報の開示に向けて三上が警察を嗅ぎ回っていくうちに、警察組織から見た自分の立ち位置や立ち振る舞いに疑問を覚え、自分の中に寝る刑事心を確かにしていく感じ。ただし最後の最後で広報がロクヨンから解放されるまでは自分は広報でいようって決意を見た。

    二渡の行動は結局よく分からんかった。
    すべて目的行動原理は
    [警視総監視察を成功させることで刑事部長にキャリアを送り込み、最終的には自身がその席に座る]
    ってところか。
    んで警視総監視察の成功=記者のボイコット阻止
    になる訳だな。
    記者のボイコット阻止をするために三上にコンタクト。三上は警務部広報課としてボイコットを阻止しなくてはならないからね。
    、、、え?
    やっぱおかしくね?
    じゃあなんで二渡から
    [誤算はあったけどね]
    ってセリフが出たんだ?
    だって二渡からした三上の誤算ってのは詰まるところ、、、
    二渡が想定した三上の行動パターン↓
    三上は警務部広報課だけど心は刑事部にある。だから刑事部を守るために広報課の仕事をほっぽって記者ボイコット推進派として事を進めるはずだ、、、
    二渡の誤算改め三上が実際に行ったパターン↓
    赤間部長にあゆみ捜索の件で喉元を握られているため仕方なく広報課に付く。
    つまりは記者ボイコットを死ぬ気で阻止する。

    あ、合ってるわ。
    ここまで自分で文字に起こさないと二渡と三上が最後なんであーゆー会話になったのか全くもって分からんかった。やっぱ小説ってむずいわ。
    俺にはちょい早いorこの小説が難しい、読者にとって難解。である気がする。

    あと記憶に残ってるのはやっぱあゆみが家で自分の顔を掻きむしったシーンか。
    衝撃的すぎ。親三上、美那子の気持ちが計り知れない。自分の娘が死にたい死にたいなんて叫ぶ時親がしてあげられることってなんだろう。
    しかもその原因が他にあらず自分が生まれ持ったこと顔つきってことに三上は何を思ったのか、、
    美那子が自分と一緒になったことを後悔していないか疑心暗鬼になる気持ちも分からんでもない。

    とまあこんな感じ。
    総評
    3.4点
    小説のアベレージってもんがわからないから点数にピンと来ないんだけど、、、
    までも小説の中じゃここくらいかな。
    もっと上があることを信じ、期待と希望に胸を膨らませ結果この点数。
    もっとしたかもしれない、、笑

  • 上巻があるなら下巻もと買った一冊

    怒涛の展開の話だった。

    64といわれる事件の解決の話ってより警察内部の問題の話って感じした上巻

    下巻の後半は急に64事件の解決に繋がる事柄に

    問題を新たな問題が潰したが、その問題がまた新たな問題を起こし、その問題を解決する為に動いたら過去の問題が解決しそうになる見たいな感じで、正に怒涛の展開だった。

    主人公の考えを細かく書いてあるが、深読みがすごく理解力のない自分にはちょっと難しかった。

    主人公の娘はどうなった?
    警務部と刑事部の関係は?

    なんとなく消化不良な所もあるが最後まで楽しめた小説でした。

  • 上巻×2の速度で読みきった。
    三上は首を賭けて壇上に立ち匿名問題の新たな方針、そして実名を公表。さらに被害者の背景も記者達に伝える。
    その上で記者達に長官視察の記事とぶら下がり質問のボイコット撤回を申し出る。記者達はそれに応えた。
    臨場感と記者達の撤回の回答には心が奮えた。
    そんな中で新たな誘拐事件が発生。
    何かが違う。何かが。刑事部達の何かを隠している。それは何なのか?頁をめくる度に押し寄せてくる緊張感。
    64の犯人は誰なのか?こいつなのか?
    読む価値のある一冊

  • 結局、小塚長官視察の目的は、警察庁がD県警の刑事部長ポストをプロパーから奪うためのセレモニーという極めて矮小なものだった。この点になんだか拍子抜けした。視察前日に勃発した誘拐事件も、長官視察を阻止しようとする刑事部の偽装ではないか、と思わせる展開で、読んでいて引き込まれるものがなかった。意味深な二渡調査官の隠密行動も、「騒動師」としての動きに過ぎなかった訳だし…。

    流れが変わったのはラスト百頁位から。三上が強引に指揮車に乗り込んで事件を実況中継する辺りから、スピード感が出てきて、ミステリーとして俄然面白くなった! けれども…。

    全編を通じて描かれている、警察庁・キャリア警察官僚対県警プロパーのドロドロの争いには、(実際にいかにもありそうなことだけれども)読んでいて気が滅入った。「歪な正義と特権意識」満載の記者達の傲慢な振る舞いも不快だったし、主人公の三上にも、気が滅入るような独白が多過ぎて…。これらが本作の「ロクヨン」事件を巡るミステリーとしての面白さを減じてしまっていて、少なくとも、自分の好みの作品ではなかった。

    「人間、言えることと言えないことがある」、「外道に正道を説けるのは外道。そういう言葉もある」という捜査一課長松岡の意味深な発言が印象的ではあった。

  • 映像映えするだろうな、というのが読んでいての印象。
    記者会見の場面、目崎さんが車を走らせる場面。
    きっと迫力ある映画だったんだろうな。
    すべての内容にはっきり答えが出きった
    わけではなかったので、これはどうなるんだろう
    (どうだったんだろう)と思える部分は残ったが
    どう決着がつくのか、気になって一気に読めた。
    64の犯人とこんな風につながってたのか、と最後は
    驚きもある展開でした。

  • 広報官三上は過去、刑事課に所属していた。
    昭和天皇が崩御した、あの昭和64年に起きた幼女誘拐殺人事件、通称 " 64 ( ロクヨン ) を担当した捜査官であった。
    事件は犯人逮捕に至らず、警察組織の大失態で未だ解決されていない。
    記者クラブ、警察上層部、被害者家族との間で苦悩するが、迷いながらも懸命に立ち向かう。
    横山秀夫ならではの上質なミステリーである。

  • まさか、まさかの展開。
    雨宮さんは何かあるとは思ったけど、そう来たか!
    ぐいぐい引き込まれてしまいました。
    三上さんって男気のある人だなと思いました。そこに美那子さんが惚れたんでしょうね。

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著者プロフィール

1957年東京生まれ。新聞記者、フリーライターを経て、1998年「陰の季節」で松本清張賞を受賞し、デビュー。2000年、第2作「動機」で、日本推理作家協会賞を受賞。2002年、『半落ち』が各ベストテンの1位を獲得、ベストセラーとなる。その後、『顔』、『クライマーズ・ハイ』、『看守眼』『臨場』『深追い』など、立て続けに話題作を刊行。7年の空白を経て、2012年『64』を刊行し、「このミステリーがすごい!」「週刊文春」などミステリーベストテンの1位に。そして、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞(翻訳部門)の最終候補5作に選出される。また、ドイツ・ミステリー大賞海外部門第1位にも選ばれ、国際的な評価も高い。他の著書に、『真相』『影踏み』『震度ゼロ』『ルパンの消息』『ノースライト』など多数。

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