高座の上の密室 (文春文庫 あ 47-4)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167903879

作品紹介・あらすじ

手妻と太神楽。寄席・神楽坂倶楽部には謎がいっぱい華麗な手妻を披露する美貌の母娘。超難度の技を繰り出す太神楽界のサラブレッド青年。彼らをめぐる謎に新米席亭代理・希美子が挑む。

感想・レビュー・書評

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  • 神楽坂謎クラブの続編である。こちらも非常に読みやすい文体で書かれているので、落語の世界を知らなくても読める。個人的には表紙のカバーが、気に入っている。
    複雑ではないが、高座の上の密室のミステリーが展開されているので、気になったら軽く読めるので、手にとってみるのもありかな。

  • 出版社の編集員から寄席《神楽坂倶楽部》の席亭(社長)代理として『出向』という形で働いている希美子。

    前作では寄席の習慣、業界用語に付いていくのに精いっぱい…というより振り回されていただけの希美子でしたが、今回は少しずつ慣れてきて『席亭代理』、略して『席代』と呼ばれることにも戸惑わなくなってきてます。

    姉妹編(私が勝手にそう受け止めている)の神田紅梅亭シリーズは落語の話ばかりですが、こちらは落語だけではない、『色物』と呼ばれる手妻(手品)や太神楽(傘の上で様々なものを回す芸)という、落語以外の芸にもスポットを当てています。

    そして前作のあとがきで作家さんが予告された通り、今回は事件も起きてます。
    一つはタイトルの通り、高座の上で起きた事件。
    紐で封をされた葛籠の中から脱出するという芸の最中、葛籠と客の眼という二重の密室から消えた少女。
    母親でもある手妻師は、別れた元夫が少女を誘拐したのだと騒ぎ出します。
    蓋を開ければ、そう複雑でもない話なのですが、芸の世界に生きる人たちの苦労が分かる話です。

    もう一つは独り立ちの試験として芸を見せている最中、やるはずのことをやらず、予定にならないことをやりだした太神楽師。
    こちらは所謂日常系という感じ。
    ただテレビ収録ではない、生の『寄席』という舞台ならではのことで、とても興味深かったです。

    神田紅梅亭シリーズでも出てきますが、突然出てくれるはずの芸人さんが来れなくなってしまったり、寄席が始まっている最中に慌ててほかの芸人を探したり。その間前の芸人さんが話を長引かせたり。
    こういうトラブルが日常茶飯事の『寄席』という世界が印象深く感じた話でした。

    愛川さんの作品をいくつか読んでいる身としては、ところどころに他のシリーズのキャラの名前が出てくるのも楽しかったです。
    今回は『ヘルたん』からあの人の名前が登場。元気で頑張っているようで良かったです。
    あとがきによると、これからもそういう遊びをやってくれるようで、楽しみです。


    父親の体調が良くなるまでという約束で勤めている『席亭代理』ですが、希美子の気持ちは少しずつ変化している様子。
    元彼の出現もあって、これからの展開がますます気になります。

  • 新米席亭代理がアクシデントに追われる日々を過ごす日常の謎系寄席ミステリ。落語が中心だった前作に対し、今作では手妻による脱出芸や太神楽といった“それ以外”の色物にスポットを当てた内容となっています。中でも、落語でいう真打ち昇進試験に当たる見極めの場で太神楽師が何故か課題と異なる演目を披露した謎を解く「鈴虫と朝顔」は、冴え渡る伏線とそこから芸人としてのプロ根性を覗かせるストーリーで魅せた上、さらに突っ込んで二段構えの解決が行われる出色の出来栄え。文庫書き下ろしブーム恐るべし。今年度の隠れた佳品です。

  • 1冊目では主人公は振り回されてばかりでしたが、2冊目ではだいぶ地に足が着いた感じです。その分お話も落ち着いておもしろさも増して感じです。
    2編ともきれいにまとまっていますが、手妻の天翔斎は好きになれなかった。子供のことで必死になっているのはわかるけど、興行主である席亭(代理)からの電話にも出ない、メールにも返事しないというのは、あまりにも失礼だと思う。そこがすごい違和感でした。

  • 定席神楽坂倶楽部の席亭代理のシリーズ第2弾。本シリーズは寄席を舞台にしていても、落語家ではなく、色物芸人さんたちを描くシリーズらしい。

    そして今回は、ヅマヤのチョウちゃんこと五代目藤島天翔斎という手妻の芸人さんとその娘親子のお話と、太神楽の亀川鏡太夫、鏡之進親子のお話し。両方とも親子の絆を描いた人情話でほろりとさせてくれる。

    それにしてもアラサーの天翔斎さんとその娘の小桃ちゃんはとても魅力的だ。シリーズ続編にもまた登場してくれないかな。

  • 神楽坂の寄席「神楽坂倶楽部」のシリーズ2作目。
    あとがきにあるように噺家エピソードから離れて手妻と太神楽が主役の2編。
    確かめてないけれど、前作から10日ほどしか経ってないのに驚いた(笑)
    この先、相談に乗ってくれそうな同世代のキャラも出てきてやっとスピードが出てきた感じ。
    メインは色物だけれど、楽屋で耳にする高座は有名どころの話でそれが上手く話しに繋がるのがいい。
    二話目冒頭でさりげなくサンボーのくすぐりを入れるところなんか憎いですね。
    解説にある通り次作は小梅さんのお話しかな。

  • 劇場とか、寄席という場所が好きだ。
    現在のものとは違う、と分かっていても、歌舞伎座に行けば、升席でちろりで燗をつけながら、一日ゆるゆると芝居を楽しんだ、江戸の人々の雰囲気を想像する。
    寄席ならば…仕事が終わって、銭湯でひと風呂浴びた帰りにふらりと寄席に立ち寄った明治、大正の時代か。
    今は田舎に住み、そういうところへめったにいけないから、余計に妄想が強まっているような。

    さて、この作品は、寄席の舞台裏、それを支える人々がクローズアップされる。
    寄席の席亭の仕事などはその筆頭だ。
    出演予定の芸人が急病で代演を手配する。
    マスコミからの取材の窓口になる。
    芸人間のトラブルの仲裁をする。
    従業員たちの暮らしぶりにも配慮する。
    太神楽の「ひとろく」(真打にあたるもの)に値するかを見極める。
    …どれも生半可な仕事ではない。

    これを、父親の回復までとはいえ、今まで全く寄席とは関わりがなかった主人公の希美子が引き受けることになったというのが本シリーズの設定。
    第二作では、手妻と太神楽の芸人が中心となる。
    それぞれの芸についてのあれこれが、さりげなくちりばめられているのもうれしい。

    客席のお客さんを見てその日披露する芸の演目を変える。
    よい芸人にはそんな細やかな配慮もある。
    そんなことを知ることができるのも楽しい。

    そういえば、昔、田舎から出てきた両親を連れて池袋の演芸場に行った。
    亡き小三治師匠がトリを務める日で、大賑わいだった。

    チケットは当日販売。
    両親は足が弱っていたので、早く歩けない。
    そこで一足私が先に行って、チケットを買って席をとっておこうと思ったのだが、本来はそれができないルールのようだった。

    「テケツ」のお姉さんに事情を話してみたら、通路に臨時に作った席だったら、今席をとってしまっていい、と特別に対応してくれた。
    両親はおかげで最初で最後の小三治師匠の高座を見ることができた。

    こんな実体験があると、この小説にあるような世界も、きっと本当にあるんだろうな、と思えてくる。

  • 就活時、後楽園近くの本屋で平積みされている本書のカバーに魅かれて購入。面接前だったのでまだよく覚えている。だから、この本を見ると内容よりも真っ先にそこ時のことを思い出してしまう。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    出版社から寄席・神楽坂倶楽部に出向中の希美子は新米の席亭(プロデューサー)代理として奮闘中。寄席に欠かせない色物芸の世界を覗き見ると…。手妻「葛篭抜け」で人気を博す美貌の母娘。超難度の芸に精進する太神楽師。彼らの芸が謎と事件を次々と引き寄せる。超絶技巧の本格ミステリ、鍵は「人情」だ!

  • 今回は曲芸中心の寄席
    たしかに落語家あってこその寄席
    しかし様々な演芸があって寄席が成り立つ

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著者プロフィール

愛川晶
一九五七年福島市生まれ。九四年『化身』で第五回鮎川哲也賞を受賞。トリッキーな本格ミステリーを基調としながら、サイコサスペンス、ユーモアミステリー、人情ミステリーと幅広く活躍。主な作品に『六月六日生まれの天使』『ヘルたん』『再雇用されたら一カ月で地獄に堕とされました』。落語ミステリーでは、『道具屋殺人事件』『芝浜謎噺』など「神田紅梅亭寄席物帳」シリーズ、『神楽坂謎ばなし』など「神楽坂倶楽部」シリーズ、『高座のホームズ』など「昭和稲荷町らくご探偵」シリーズがある。『太神楽 寄席とともに歩む日本の芸能の原点』(鏡味仙三郎著)では編者を務めた。

「2023年 『落語刑事サダキチ 泥棒と所帯をもった女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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