そして、メディアは日本を戦争に導いた (文春文庫 は 8-28)

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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167905774

作品紹介・あらすじ

歴史は繰り返すのか? 昭和史の教訓を今こそ昭和史最強タッグによる「戦争とメディア」の検証、決定版対談! 石橋湛山、桐生悠々ら反骨の記者たちの話題も豊富な、警世の一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 昭和史研究の第一人者「半藤一利」と「保阪正康」が戦争とメディアについて語った対談作品『そして、メディアは日本を戦争に導いた』を読みました。

    『日本国憲法の二〇〇日』、『昭和史裁判』に続き「半藤一利」作品です、、、

    「保阪正康」との共著は、昨年の2月に読んだ『「昭和」を点検する』以来ですね。

    -----story-------------
    歴史は繰り返すのか?
    昭和史の教訓を今こそ

    昭和史最強タッグによる「戦争とメディア」の検証、決定版対談!
    「石橋湛山」、「桐生悠々」ら反骨の記者たちの話題も豊富な、警世の一冊。

    軍部の圧力に屈したのではなく、部数拡大のため自ら戦争を煽った新聞。
    ひとりよがりな正義にとりつかれ、なだれをうって破局へ突き進んだ国民…。
    昭和の大転換期の真相を明らかにし、時代状況が驚くほど似てきた“現在”に警鐘を鳴らす。
    -----------------------

    「半藤一利」と「保阪正康」がタブー視され部分的にしか語られることのなかったジャーナリズムと国民自身の戦争責任について、真正面から取り上げた対談です、、、

    そして昭和の歴史を振り返るだけでなく、時代状況が驚くほど似てきた現在へ警鐘を鳴らす… そんな作品でしたね。

     ■はじめに いちばん大事な昭和史の教訓 半藤一利
     ■序章 いまなぜジャーナリズム論か
     ■第1章 戦争報道と商業主義
     ■第2章 テロと暴力賛美の歪み、その内側
     ■第3章 国際社会との亀裂の広がり
     ■第4章 国家の宣伝要員という役割
     ■第5章 暴力とジャーナリズム
     ■終章 現在への問いかけ
     ■関連年表
     ■おわりに いま、桐生悠々に学ぶべきこと 保阪正康

    戦時中、メディアが軍部に協力して、国民に真実を伝えず、戦争を煽るような宣伝報道をしたことは知っていましたが、、、

    その背景には部数拡大による増収という、商業主義的な動機が潜んでいたとは知りませんでしたね… 新聞って、戦争に協力することで発行部数を伸ばしてきたんですね。

    そのことを日露戦争で学び、満州事変では商売につなげて行った… ジャーナリズムとしての信念や誇りは無いのか!と問いたくなりましたね、、、

    「ジャーナリズムの戦いは、満州事変で50%、国連脱退で90%、二・二六事件で99%終わった」という「伊藤正徳」の言葉が真実を捉えていますね… 二・二六事件以降、言論は死んだということなんだと思います。

    そして、明治維新というテロ行為を、義挙という言葉で賞賛し、動機さえ純粋であれば、どんな手段に訴えても許される… そんな風潮を社会に植え付けた薩長を中心とした明治政府の説明が、昭和初期のテロリストに使われたという事実や、、、

    歴史に学べば、日本民族には付和雷同しやすいという弱点があり、その結果としてなだれ現象を起こしやすいという特徴がある… という内容が印象に残りました。


    「半藤一利」が、自身の経験から語る“現在”への警鐘、、、

     昭和一桁から学んでほしいこと。
     教育の国家統制が始まるとまずい。
     情報の統制が始まるとこれがいちばんよくない。
     そうすると、あらゆる面で言論が不自由になりますますよくない。
     さらに、テロ、こうした順で社会がおかしくなってくる。

    これは、まさに“現在”起こっていることですよね… うーん、歴史は繰り返すのか、それとも、歴史に学ぶのか、一人ひとりが考えて行動しなきゃいけないですね。


    「半藤一利」が、昭和史から何を学ぶべきかについて『昭和史』で示した五つの教訓、、、

     1.国民的熱狂をつくってはいけない。そのためにも言論の自由・出版の自由こそが生命である。
     2.最大の危機において日本人は抽象的な観念論を好む。それを警戒せよ。すなわちリアリズムに徹せよ。
     3.日本型タコツボ社会におけるエリート小集団主義(例・参謀本部作戦課)の弊害を常に心せよ。
     4.国際的常識の欠如にたえず気を配るべし。
     5.すぐに成果を求める短兵急な発想をやめよ。ロングレンジのものの見方を心がけよ。

    これは、本当に大事なことですよね… 学ぶことの多い良書でした。

  • 後付け史観的には、『何故勝ち目のない対米戦争に挑んだのか?』という点が、ずっと頭から離れず、色んな本を読んできたけど、この本では、市井の一般人が、景気のいい好戦的な新聞を読みたがり、それに応えることで新聞社の売上が伸びたから、という悲しいくらいシンプルな答えが提示される。五•一五事件、二•二六事件以降はテロの恐怖に屈した面はあるにせよ、ジャーナリズムの意外な弱点を抉っている。

  • 戦争をメディアの視点で見ることができる。日本に、ジャーナリズムがあるかどうかも

  • ジャーナリズムに対して抱いていた過大な幻想が完全に消え去って久しい。メディア企業と言えども所詮は営利企業であり売れるためならなんだってやる。これは明治の昔から変わらないし、今後も変わることはないだろう。
    最悪なのは金に目が眩んだ下心を正義の仮面で覆い隠し、今日も蒙昧な大衆のために啓蒙してやってるぜ!と言う欺瞞に満ちた姿勢である。もっと正直かつ謙虚になれ、と思う。本書を読んでその思いをまた強くした。
    本書の刊行は2013年だが、当時から更に激烈な変化が生じている。SNSによって情報発信がプレスの専売特許でなくなり、Fake Newsもあっけなく信じられる程信頼を勝ち得ている。これは当然危うさを伴うが、一方でメディアの付和雷同的な扇動に乗らず冷静に自分の意見を発信している人もいたりして、それはそれで好い影響もあるのかなとも思う。

  • 結局、メディアは売り上げ至上主義。

  • 【歴史は繰り返すのか? 昭和史の教訓を今こそ】昭和史最強タッグによる「戦争とメディア」の検証、決定版対談! 石橋湛山、桐生悠々ら反骨の記者たちの話題も豊富な、警世の一冊。

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著者プロフィール

半藤 一利(はんどう・かずとし):1930年生まれ。作家。東京大学文学部卒業後、文藝春秋社入社。「文藝春秋」「週刊文春」の編集長を経て専務取締役。同社を退社後、昭和史を中心とした歴史関係、夏目漱石関連の著書を多数出版。主な著書に『昭和史』(平凡社 毎日出版文化賞特別賞受賞)、『漱石先生ぞな、もし』(文春文庫新田次郎文学賞受賞)、『聖断』(PHP文庫)、『決定版 日本のいちばん長い日』(文春文庫)、『幕末史』(新潮文庫)、『それからの海舟』(ちくま文庫)等がある。2015年、菊池寛賞受賞。2021年没。

「2024年 『安吾さんの太平洋戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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