- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167907822
感想・レビュー・書評
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今更ながら、約5年前に話題になった本書を読んでみました。きっかけはYou Tube。又吉さんと児玉さんの文章読解や、有隣堂チャンネルでのコメントが面白かったから。(このレビューを又吉さんがご覧になるかわかりませんが、私もサルゴリラ児玉さんの語彙センスにハマった1人です。)
さて本書ですが、芸人さんが書いた芸人の物語なので〝笑う〟場面が多いかなと勝手に思っていましたが、反対に〝泣く〟場面の描写が印象に残りました。
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【本書より抜粋】
主人公の徳永のお母さんのセリフ
「なんで、あんたが泣いてるの?お姉ちゃん頑張ってるで」
先輩の神谷のセリフ
「徳永、なんでお前が泣いてんねん?」
そう言って、神谷さんは笑った。
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芸人さんの明るいトークの裏で、こんな世界もあるのかなとフィクションを楽しませてもらえた本でした。ちなみに、又吉さんの著書という先入観からか、本書を読んでいる間、又吉さんの落ち着いた声が私の脳内で再生されました。他の皆さんも同じだったかな‥。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2024/03/22読破
一言 芸人の苦悩、嫉妬、生き様
感想 最後のエッセイの中の引用された2つの言葉がとても印象的でしたので、下記に記します。
本編は又吉さんの知り合いか、空想か分かりませんが芸人の生き様を見ました。他人の才能に嫉妬する自分と、どうでもいいことに気をかける自分。やりたい理想はあるけど、理想を現実にできない自分を才能ある芸人との会話の中でいろんな感情が渦巻いているのを読み取りました。
下記は印象に残った点
p174 侏儒の言葉
道徳は便宜の異名である。「左側通行」と似たものである。
→道徳は多くの人が事故をおこなさいために必要なルール。あらゆる価値基準は疑ってよい
p175 侏儒の言葉
芸術の鑑賞は芸術家自身と鑑賞家との協力である。云わば鑑賞化は、1つの作品を課題に彼自身の創作を試みるのに過ぎない。
→作品に向き合って理解する。理解して解釈をする。想像力を駆使して作品に向きあう。正解はない。
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神谷さん、最後はびっくりしましたが、自分を持っていて、
『こんな男が近くにいたらいいのにな、』と思いました。
結末は、なにしてんねやーって私もツッコミましたが。
ラストの漫才は泣けました。(電車で読んでいたので、ちょっと大変でした。)
笑いを武器に、見習わなきゃ。
これが純文学なのか、これも純文学なのか、私もまだまだ文学への理解不足で、そこが楽しいです★ -
純文学とは....??だが、単に又吉さんが好きで読んででみた。
舞台で人を笑わせていても、影ではこんな努力や葛藤があるんだろうな。
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私が漫才の面白さをあんまりわかってないからかな。徳永と神谷のやりとりにあんまり面白さを見いだせなくてむしろすこし恥ずかしく思ってしまった。作者は理屈っぽい人なんだろうな。
でも他の人を批評することに関する神谷の発言はなるほどな~と思わされた。表現者だからこそより克明に描けるのかなと思った。
少しだけ漫才を見てみようかなと思わされた。
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「お笑い」というものに取り憑かれ、純粋に向き合い続けた人達の青春とも言えるであろう物語。
作者自身が芸人さんなので、よりリアルに受け取れる。が、内容はなかなかずっしり重たい。芸人という世界の暗い部分が表現されていると思う。
主人公は作者自身なのでは?と思うぐらい、イメージがピッタリ(笑)
最後の展開にはビックリしたけれど、それだけ主人公の師匠は純粋だったのだなと思える出来事だったと思う。
大人になってから純粋に自分らしく生きるということは難しいと痛感させられる作品でした。 -
なんだかわかったようなわからないような。ただページを読む手を止めるとこの火花の世界観に戻れない気がして、一気読みしました。
笑いってダサいとおもしろいが紙一重の世界なんだなと改めて思った。昔とがってたって言う芸人さんをよく見るけど、どうしてもそうなっちゃうんだろうな。
神谷さんについて。お金とか女とか服とか身の回りのことは大雑把なくせに、笑いに関しては繊細さを感じる。なんとなくこれが文学だなぁーと思った。この繊細さを受け止められるほど目が細かいふるいを持っていないことが悔しい。
あとがきで又吉先生が芥川龍之介に宛てた手紙、なぜかすごい心にグッときた。 -
注目の漫才師さん、しばらく見ないと思っていると、解散してしまったり、ピン芸人として活動し始めていたり、構成作家に転職していたり、実家に帰って別の仕事についたり、何パーセントの方が漫才だけで飯が食えるようになるんでしょうか。
そんな売れない芸人の葛藤を描いた問題作。その漫才師の又吉直樹さんが書いた小説。2015年の芥川賞受賞作品「火花」でおます。
へそ曲がりのごまめですから、今頃読ませてもらいましたで。
(NHKのドラマは見ましたが・・・)
芸人さんは、たいへんですなぁ。 -
芥川賞受賞作品。前半の神谷の漫才哲学は、まどろっこしく感じたが、天才:神谷を表しているんだろう、と解釈。「僕は神谷さんの優しい声に弱いのだ」そこに漂う哀しさと作品全体を包む切なさ、やるせなさ。又吉直樹、ピース又吉の優しいけど冷静な視線も見た気がした。ドラマは初回しか観てなかったのに、林遣都と波岡一喜が頭の中で映像化出演してきました。
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自分らしくを貫くって難しい。世の中生きづらい。
大人になって、世間の目を気にしたり、自分の理想と現実に折り合いをつけたりして、色んなことを諦めることが増えた。
だからこそ、自分にはない生き方に憧れたり、時にはどうしようもなく恨めしい気持ちになったり、惨めな気持ちになったりする。
…
神谷と徳永の生き方が、読んでいて妙にヒリヒリと、でもどこか懐かしいような感覚で伝わってきます。自分の生き様について考えさせられる本でした。