春の庭 (文春文庫 し 62-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 862
感想 : 58
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167908270

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  • 建物や空間の詳細な描写と現実にある地名などが散りばめられているため物語の設定に対する基礎知識は増える一方で、話の展開の鍵になりそうな人物や事象については曖昧なまま物語は進行する。推理小説のような読み解いていく快感はなく、何か大きなことも起こりそうで起こらない。読み手の自分は分かっているようで分かっていない不安定な状態のまま終わりまで物語に翻弄されていた。

    (春の庭)
    「「面倒」という気持ちが先に立つ質」という主人公は何事にも無関心な雰囲気でありながら、周りを観察し、周りの人たち影響され巻き込まれていく。その結果、面倒くさそうで不可解な行動に出る様子が描かれる。全体的に受動的な行動が目立つ主人公に対してあまり共感できないと思っていたが、物語に翻弄され続けた自分も主人公とたいして変わらない存在な気がした。

    (出かける準備)
    行動の理由(原因)を他者に押し付けたり、他人に決めてもらおうとしがちな自分を描かれた気がした。責任回避、非難されることを恐れる気持ち。

  • 「春の庭」は気を衒うことなく淡々と話が進む中に色んな人生の歩み方が語られている。何か特別な技巧は感じないながら、他の小説との類似性を感じない伸びやかさがあった。読解力がないせいか、残り僅かな場面で語り手が太郎から太郎の姉に変わるところの意図が理解出来なかった。

  • 「春の庭」あんまりよく分からなかった??展開は全く読めなくて面白かった

    「糸」父と息子の距離感が面白かった

    「見えない」職場の人との会話が面白い

    「出かける準備」これが一番好きかも。わかるよ

  • 彩りのある文章でリズミカル。唐突に現れる独特な表現が楽しい。

  • 表題作には正直あまりピンとこなかった。他の3篇の方が好きかな。全体的に心情とまではいかない心の動きがよく表現されていてすごいなと思った。4篇に共通するのは眼差しや場所だろうか。
    スマートフォンばかり見ちゃっている今(2023年)だとなかなかこういった視点になることは少ないんじゃないかなと寂しくもなった。

  • 庭への執着と主人公の過去がある。
    あいまいで分からない部分も再読したい

  • 女性が手を血だらけにしてもなお喋り、自分の望みのために動く……というイメージが最近ふっと頭に浮かんでいました。その関係でぼんやりとそのような話を読みたいと思っていたので、多少違うものの、似た描写があり驚きました。イメージが頭に浮かぶ前に借りた本だったのです。ご縁、でしょうか。
    最後がよく分からなかったです。
    ソファだらけという部屋。今まで考えたこともなかったですけれど、成る程、ちょっと憧れます。だらしなくごろごろとしている自分が目に浮かびます。

  • 高校一年の現代文の授業で、2000字程度の短編小説を書いて、生徒どうしが互いの作品を匿名で評価するというものがあった。私は『素粒子と小人』という題で、通学路にある廃屋をモチーフに書いたのだったが、『春の庭』は、なんとなくそのことを思い出す筆致だった。うだつのあがらない会社員がとある廃屋に惹かれて、その家と一緒に生活を立て直す、みたいな話だったと思う。十五歳が書くにはずいぶん渋い物語だ。当時の原稿は紛失してしまって見つからないが、他の生徒が記入した評価シートを見つけた。文章力、構成・展開力、オリジナリティ、想像力、共感度が各4点、総合評価10点の30点満点で、16人からの評価の平均が24.8点。中途半端な優等生の私らしい評価だ、と苦笑いした。自分としてはわりあい気に入っていたけれど、他の生徒の作品の独創性、おもしろさに、敗北感をまざまざとおぼえたことをよく覚えている。ぐいぐいと読み手をひきずりこむようなものは自分に書けない、という諦念は今の私にも深く根ざしている。でも、自分の得意分野が日常のなかにひそむ物語をすくいとって描写するタイプの文章だ、というのは十年以上前から変わっていないらしい。苦さとともにいろいろ思い出させられた作品だった。春は苦い。

  • 読了

  • 「東京って大自然ですよね」という主人公の言葉はとても魅力的。その一言を意識するだけで、世界に対する接し方がころっと変わってしまう、魔術的な言葉。写真集の中の人物たちの生活と、それを眺める太郎や西、その太郎や西の生活も最後は「わたし」によって見られる対象となっている。そんな入れ子構造によって重層化して見える生活の活写が見事。

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著者プロフィール

柴崎 友香(しばさき・ともか):1973年大阪生まれ。2000年に第一作『きょうのできごと』を上梓(2004年に映画化)。2007年に『その街の今は』で藝術選奨文部科学大臣新人賞、織田作之助賞大賞、咲くやこの花賞、2010年に『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞(2018年に映画化)、2014年『春の庭』で芥川賞を受賞。他の小説作品に『続きと始まり』『待ち遠しい』『千の扉』『パノララ』『わたしがいなかった街で』『ビリジアン』『虹色と幸運』、エッセイに『大阪』(岸政彦との共著)『よう知らんけど日記』など著書多数。

「2024年 『百年と一日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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