スクラップ・アンド・ビルド (文春文庫 は 48-2)

著者 :
  • 文藝春秋
3.10
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本棚登録 : 1955
感想 : 195
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167910662

感想・レビュー・書評

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  • 不思議な読書感でした。
    イヤらしい聞こえ方になるかも知れないですが、自慰ですね。この作品自体が。でも、これくらいで無いと読者は付いてこないか。やっぱり芥川賞は難しい。
    外向きの自分と内向きの自分。自身の欲求に反することなくただ実直に生きる。それもきっと有りなのだろう。
    老介護の話だけでは無い。タイトルは自身を構成し組み立てている血と精神を作っているといった話。

  • 死にたいとぼやく祖父に穏やかな死を迎えさせるため奮闘する青年の話。
    無職となり転職活動に励みながら、筋トレで身体を鍛え上げる日々。祖父の介護を通して、青年の考えに少しずつ変化がみられていき、死にたいという祖父の言葉の真意に気づく。
    彼女とのやり取りからも、ちょっと頑張りどころがズレてないかいってツッコミたくなったが、青年はいたって大真面目。彼なりにストイックに考えて行き着いた結末に最後は応援したくなった。

    適切な介護ってなんだろう。過剰な介護は身体を衰えさせるが、施設では事故防止の為に必要以上の介護がなされていることにも、本書では言及されている。また、普段介護していない別居の家族が介護者へ意見するのはどうなのとか、死について尊厳死を望んでも叶わないよねとかも。

    本人が元気でいるために厳しく介護することも、本人の気持ちを大切に優しく介護することも、間違っていない。どちらも本人を想っているのだから。理想はそれぞれにあると思うが。

    全150頁で文字数も少なめだが考えさせられる作品だった。

    • shukawabestさん
      ありがとうございます。
      ありがとうございます。
      2022/06/19
    • shukawabestさん
      こちらこそ、ひろさんに難しいコメントの気遣い、させてしまいました。
      こちらこそ、ひろさんに難しいコメントの気遣い、させてしまいました。
      2022/06/19
    • ひろさん
      そんなことないです!お話できてうれしかったです(,,> <,,)
      今日から『かたみ歌』読み始めます~♪
      そんなことないです!お話できてうれしかったです(,,> <,,)
      今日から『かたみ歌』読み始めます~♪
      2022/06/19
  • 十数年前に、祖母と同居していた頃を思い出しました。今では、傷つくような言葉や態度をとってしまったと、故人を思い哀しくなります。それは、今だからそう思えるのだと思います。自分にも生活があるわけで。

    医療が進歩した今、以前であれば助からなかったようなものですら一命を取り止め、場合によっては寝たきりで生き続ける。それが良いか悪いかは、わからない。

    登場する若者は優しいと思いました。性に励む若者、生に執着する老人の描かれ方がユニークでした。
    2022,1/30

  • テレ東の「バス旅」で著者の羽田氏を良く見るのに、著作には触れたコトなかったなぁと「ふと、思い至って」読了しました。
    芥川賞受賞作、人生を「スクラップ・アンド・ビルド」している青年を祖父との関わりの中で描いた作品です。1ページあたりの文字が少なめなのに150ページと、ボリューム的には非常に軽め。

    微妙に毒を感じる展開ながら、読後感はそう悪くないです。
    ただ、明快に「ここをこうしてこうなった」という筋書きではないので、本著から何を感じれば良いんだろうなぁとちょっとモヤモヤしました。
    主人公は、ふと思い至って「早う死んだらよか」と常々ぼやく祖父の「魂の叫び」を真摯に受け止めて「自発的尊厳死の手助け」を始める。祖父を観察する中で自分の若さを意識し始め、筋トレを始め、中途採用面接を受け…と変わっていく。
    どうにもこの大前提となる信念がおかしいよなぁと思いながらも、とは言え結末では主人公はそれなりの新生活に辿り着いていて…、これは、何かを信じてそれに向かって動くことで、何かが良くなるかもしれない、というメッセージなのでしょうか。ダイスを転がすコトの重要性と言うか。

    不安とともに生きていくのが世の常ですが、少しだけ勇気をもらえる1冊でした。

  • これまた1年半くらい前に読んだ本。
    「むらさきのスカートの女」に続く芥川賞受賞作品。
    これまた意外と面白くて「死にたかー死にたかー、死なせてくれー死なせてくれー」って言う祖父と孫のやり取り。
    いっつもそんなこと言って気を引く割に、デイケアだったかどこかの介護してくれる女の子のお尻かなんかはしっかり触るっていう。
    で、孫もいい加減にしろやーと。
    でもそんな事言いながら孫、なんだかんだ優しい。

    最後は、なんだかえっていうぐらい、祖父がしっかりしてたというか、心がちゃんと祖父になってると思った気がする。

    「意外と良かった。孫が清々しい。」というのが、読後残していたメモだった。

    でも自分が介護をしていて触られたら絶対にいやだ。
    歳をとっていたらしょうがない、はないと思う。

  • 「死にたい」と嘆く祖父の介護を通しての主人公の「生」に対する心理描写が丁寧に描かれている。
    現代の社会問題である老人介護のリアルな日常があり、考えさせられた。
    ぜひぜひ読んでみてください

  • 終始陰鬱とした表現が続き介護を取り巻く日常と主人公の心情が描かれる。日々衰えていき、常に身体の不調を訴えつつ白い天井を見つめるだけの老人と、若く体力がありあまっている介護者との対比。その溝から生まれてくる黒い感情から本当の優しさとはなにかと苦悩する。老いを巡って漠然と触れては行けない領域に切り込んでいる。
    介護者に直面している人や介護を必要としている人からしたら不快感はあるのだろうが、言ってはいけないが確実に沸いてくる感情や疑問をあえて文字化することは、私は嫌いではない。

    本人が苦しみ死にたがっていても、管に繋がれようとも長く生きるように尽くすのが本当の優しさとか、生きることに理由は要らないとか綺麗事ではすまない心情は必ず存在する。自分が老いていくとき、それでも生きたいと思うのか。今や仕事や子育て以外にも、生きていく意義を今から見いだしていかないと、厳しい現実が待っている。

  • 介護についての考え方について、違う視点を持てたように思う。老人に席を譲るかどうかという問題について、席を譲る行為が本人の足腰を弱らせるという観点はありませんでした。新しい視点を与えてもらったという意味では面白かった。ひねくれてるけど。必要以上に性行為について書かれているのが気になりましたが、概ね楽しく読めました。

  • 自分に近い状況だから、尚更深く読む事が出来た。祖父に対し尊敬や同情等の気持ちもあるが、同じように怒りや憎しみもある。しかし、深層心理にある一種の恐怖や人間としの善を上手く書かれていて、不思議な虚無感でした。

  • 不思議な感覚を味わえましたが、結構好きかも。

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著者プロフィール

1985年生まれ。2003年『黒冷水』で文藝賞を受賞しデビュー。「スクラップ・アンド・ビルド」で芥川賞を受賞。『メタモルフォシス』『隠し事』『成功者K』『ポルシェ太郎』『滅私』他多数。

「2022年 『成功者K』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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