インフルエンス (文春文庫 こ 34-6)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • / ISBN・EAN: 9784167916220

作品紹介・あらすじ

大阪郊外の巨大団地で育った小学生の友梨。同じ団地に住む里子が、家族内で性虐待を受けていたことを知り、衝撃を受ける。助けられなかったという自責の念を胸に抱えたまま中学生になった友梨は、都会的で美しい親友・真帆を守ろうとして、暴漢の男を刺してしまう。ところが何故か、翌日警察に連れて行かれたのは、あの里子だった。

殺人事件、スクールカースト、子育て、孤独と希望、繋がり。お互いの関係を必死に隠して大人になった3人の女たちが過ごした20年、その入り組んだ秘密の関係の果てに彼女たちを待つものは何だったのか。大人になった三人の人生が交差した時、衝撃の真実が見えてくる。

女たちが幼いころから直面する社会の罪、言葉で説明できないあやうい関係性、深い信頼。ラストに用意された、ミステリファンも唸る「驚き」。
『サクリファイス』で大藪春彦賞を受賞した近藤史恵が描く傑作長編。
解説・内澤旬子

橋本環奈・葵わかな・吉川愛でWOWOW連続ドラマ化決定。

感想・レビュー・書評

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  • まずはここに登場する小説家を、年齢や職業で近藤史恵さん自身なのでは??と匂わせている背景に、安心感を抱いた

    登場人物達と年代がほぼ重なるので、背景が重なり、自分自身のほろ苦い当時の教室の記憶が徐々に蘇っていった
    今となっては死語の様な「ツッパリ」という言葉が飛び交っていた、全国の公立中学が荒れていた独特の時代である( ̄▽ ̄)

    地域に差はあったと思うが、教師が生徒に与える体罰、生徒が教師に奮う暴力、生徒間のいじめ、それらを横目で見ながら取り上げようとする声はなく黙認されていた

    メディアでは、生徒と一緒に奮闘する中学教師が主役であるドラマが一躍話題となり、その後は一つ歯車が狂うと積み木の様に簡単に崩れてしまう人の心を題材にした体験記等、観るのが辛い映画やドラマも世の中を騒がせていた

    作中にも出てくる何棟もある団地も近所にあり、団地は団地、それ以外はそれ以外と、大人も子供も付き合いを意識していたのを覚えている
    それ以外の子供だった私には、その作られた線引きが理解出来ず、寂しかった事を思い出した

    作品の語り手は友梨
    助けてもらいたかったのに周りの大人は見て見ぬ振りして助けてもらえなかった同じ団地の同級生の里子
    彼女をきっかけに、もう一人加えた団地住まいの三人の同級生の『インフルエンス』(=人に与える影響、感化)が展開していく
    時を経て、助けてもらいたいという気持ちから、今度は誰かを助けたいと気持ちに変化していく三人ではあるが、
    それが友情なのか支配なのか理解する間もなく、相手のためにあっさりと殺人を犯す、妙な関係性である
    三人の関係はどう変わって行くのか。。。

    話にも出てくる自分の友達を全部自分のモノにしたいという節度のない子供の頃の独占欲
    ああ、自分にもあったあった、その気持ち
    実践する他の子の姿もよく見る光景だった
    自分にも同じ気持ちがあったくせに、自制できない他の子のそんな行動は見たくなかった 笑

    近藤さんの『サクリファイスシリーズ』がお気に入りの私には、今回は共感出来ず好みの話ではなかったが、あの頃の息苦しい記憶が重なり、思い悩んだ多感な時期の出来事に、大人になった今だから理解出来る事もあれば、今でも理解出来ない事もあることを知った

    これもある意味この作品に『インフルエンス』なのだろうか?

    • harunorinさん
      ハピアワさん、こんばんは(*´꒳`*)
      近藤先生のいかにも重たい系の作品は、なかなか食指が動かず、この作品も実は未読です。
      レビューを拝見し...
      ハピアワさん、こんばんは(*´꒳`*)
      近藤先生のいかにも重たい系の作品は、なかなか食指が動かず、この作品も実は未読です。
      レビューを拝見したところ、当時の時代の空気を共有した世代ならではの追体験的な読み方もできそうですね。まあ息苦しそうではありますが笑
      そういえば、サクリファイスシリーズは続編が出ませんねー
      2023/11/19
    • ハッピーアワーをキメたK村さん
      『スティグマータ』ではチカがもう30歳になっていたから、次作はどう展開して行くか見物です
      『スティグマータ』ではチカがもう30歳になっていたから、次作はどう展開して行くか見物です
      2023/11/20
    • harunorinさん
      日本人でも新城幸也選手は39歳でトップチームで絶大な信頼を得ていますので、まだまだこれからの活躍譚を読んでみたいですね
      日本人でも新城幸也選手は39歳でトップチームで絶大な信頼を得ていますので、まだまだこれからの活躍譚を読んでみたいですね
      2023/11/20
  • 『結局さ、一度レールから外れてしまうと、もう戻れないんだなと思ったよ』

    “人生のレール”という言葉があります。普通に義務教育を終え、普通に進学し、普通に就職をして…と、この国ではあたかもそんな風に人が進んでいくための道が決まっているかのように語られることがよくあります。そんな中では親も、学校の先生も、そして友達までもが”レールから外れないように”、と、そのことをある時は口を酸っぱく、ある時は親身に語ってもくれます。レールの上を走る乗り物と言えば当然に電車が思い浮かびます。電車が”レールを外れる”ようなことがあったなら、それはその瞬間に全てがおしまいです。どんな馬力のある電車でも”レールから外れて”しまった以上、その先には一ミリ足りとも進むことはできません。しかし、私たちは人間です。目に見えない、そもそも本当にあるのかすらわからない、そんなイメージの上で”レールから外れる”ということを強く意識する私たち。しかし、一方でそんな風に単純に語れないのも現実です。例えば『十四歳でわたしは人を殺した』という言葉が現実になったとしたらどうでしょう。ないはずの”レールを外れて”しまう、そんな先に大きく揺らぎ出すその後の人生。”レールから外れる”という言葉が急に現実感のある存在として浮かび上がります。さらに『里子がなぜ、わたしの代わりに少年院に行ったのかわからない』という事態の当事者となったとしたらどうでしょう。やはりその先には”レールから外れた”先の人生、目に見えなかったはずの”レールからそれていく”その先の道が浮かび上がってくるのではないでしょうか。

     『結局さ、一度レールから外れてしまうと、もう戻れないんだなと思ったよ』

    そんな言葉が主人公・友梨の脳内をぐるぐると回り続ける鬱屈としたこの作品。まさかのどんでん返しのその先に、それまで見えていなかった真実が浮かび上がるのを見ることになるこの作品。近藤史恵さんのミステリーな物語です。

    『その手紙が出版社から転送されてきたのは、寒さが急に厳しくなった十二月の半ばだった』という手紙を受け取った小説家の『わたし』。『知らない人からの、ファンレターでもない一方的な手紙に返事を書く気にはなれない』と思い『一読して放置することに決めた』その手紙。しかし『年が明けてから』、『シュレッダーにかける前にもう一度読み返した』『わたし』は『なぜか心がざわざわとし』ます。『実は、お手紙を書いたのは、先生がわたしたちの話に興味を持つのではないかと思ったからです』と始まるその手紙は『わたしと友達ふたりの、三十年にわたる関係はぜったいあなたの興味を引くと思います』と続けます。そんな内容を読んで苦笑する『わたし』。『プロの小説家はしょっちゅうこんなことを言われている』と思う『わたし』。『わたしの人生って小説にすると絶対おもしろいと思うんですよ』と語られる『「おもしろい人生」が本当におもしろかった例しはない』、『波瀾万丈であることを、おもしろいと言っているだけだ』と考えます。そして『たとえおもしろい題材であろうとも、うまく小説にできるかどうかは作家の資質に大きく左右される』ので『こういう話は聞くつもりはない』と思ったものの『わたしと友達ふたりの関係』という箇所に引っかかる『わたし』。『実はひとりに、膵臓癌が見つかりました。彼女が亡くなったあとには、もう話すことはできません』と続くその手紙に、結局メールで返事を出すことにした『わたし』。そして『待ち合わせをしたのは、ホテルのラウンジ』というその日。『本当に会ってくださるとは思いませんでした』という彼女に『でも、ご期待に添えるかどうかわからないですよ。小説の題材にできるかどうかも保証はできないです』と答える『わたし』。そんな彼女は『小学生くらいまで、わたし ー 戸塚友梨は一生をこの団地の中で過ごすのだと思っていた』と過去を語り始めました。そんな彼女は『最初の出会いがいつだったかは覚えていない』という『いちばん仲のいい友達』だった里子のことを話し始めます。里子が友梨の家に遊びに来たある日。ちょうど訪ねてきていた祖父と会話する里子。『友梨ちゃんも、おじいちゃんと一緒に寝るの?』と訊く里子に『おじいちゃんとは寝ないなあ』と返す祖父は『おじいちゃんと一緒に寝てるのか』と訊き返します。『女の子はおじいちゃんと寝るんだ』、『一緒のお布団だよ』と答える里子。その瞬間、祖父の顔色が変わりました。そして、その夜、祖父と両親の会話を盗み聞きした友梨は『あの子と友梨を遊ばせるのはやめなさい。友梨に悪い影響があったらどうする』と言う祖父の声を聞きます。『里子ちゃんと遊べなくなる』と息が詰まる友梨。そして『その日のことは確実に、わたしと里子との間に影を落とした。子供だからといって、なにもわかっていないわけではない』というそれからの日々を過ごす友梨。そして四年生になって久しぶりに里子と団地の屋上で会話をする機会が訪れます。『あのね。友梨ちゃん。わたしとおじいちゃんが一緒に寝てるってこと、誰かに言った?』と突然訊く里子に『言ってないよ…』と身体を強ばらせた友梨。『もし、誰かに言ったら、殺すから』と言い残して立ち去った里子。あの日偶然知った里子のおじいちゃんとの関係、その秘密を知ったことをきっかけに友梨の人生が大きく変化していくことになる物語。そんな物語を三十数年後に知ることになった小説家の『わたし』。そんな『わたし』は、手紙の主が語る物語の中に潜むまさかの真実に気づいていきます。

    『出版社から転送されてきた』手紙をきっかけに、差出人にコンタクトをとり、まさかの物語を聞くことになる小説家の『わたし』の姿が描かれるこの作品。物語内で物語が語られるという二階層の構造をとるとても興味深い構成の作品です。物語の起点となるその手紙には『先生がわたしたちの話に興味を持つのではないかと思った』と、自分たちの話を題材に小説を書いてみてはと匂わせる表現がありました。その取り扱いに『「おもしろい人生」が本当におもしろかった例しはない』と考える小説家の『わたし』。小説家という職業の方にはこういった形で小説執筆を提案する話が舞い込むことがあるのか?ととても興味深い内容が語られるとともに、手紙の主にコンタクトを取った『わたし』が聞くことになった物語が描かれていきます。つまり、小説家の『わたし』が主人公となる”外側”の物語と、その”内側”で友梨が主人公となる物語の二つが一つの作品の中で描かれていくことになります。そんな”内側”で描かれる物語は、この起点から三十数年を遡ることになる、手紙の主がまだ小学生だった時代の物語です。『わたしが何度も思い出す風景は、夕陽の当たる団地だ。箱のような同じ建物が、十棟以上並んでいた』というその光景はまさしく単行本の表紙に描かれる『団地』のイメージです。『団地』が相次いで建てられ、この国が上へ上へと上り詰めていったあの時代の物語。『友達は団地の中だけで事足りた。わたしには、田舎もなかった』と感じていた小学生の友梨。『一生をこの団地の中で過ごすのだと思っていた』友梨はある衝撃的な事実を知ることになります。大切な友人だった里子がおじいちゃんと同じ布団で寝ているというその事実。『性教育のスライドは、なにもかも曖昧』というそんな時代にあっても『性は子供を作るのに必要なことで、人と人とが愛し合うことで、そしてときどき暴力的なこともある』と理解した友梨は『突然、なにもかもがつながった』という瞬間を迎えます。『「殺すから」と言われたときよりも、「祖父と同じ布団で寝ている」ことが、なにを意味するか気づいたときの方が、怖かった』と感じる友梨。そして『悲鳴を上げたかった。知らなかったからと言って許せるようなことではない』と思う友梨。どこかノスタルジックにのんびりとした空気感の中に描かれていた物語に一気に緊張が走るのを感じました。そして、物語は1980年代という時代背景の元、読めば読むほどに重苦しい、悲鳴をあげたくなるほどの重苦しい空気にさらに包まれていきます。

    そんな重苦しい空気の一つが『少しずつ、学校に暴力と狂気が忍び込みはじめていた』という校内暴力に荒れ狂う中学校の描写でした。『教室のガラスが割られた』、『廊下の壁に蹴りを入れて穴を開けた』、そして『煙草の匂いが充満した教室に入ってきたのに、表情も変えずに窓を開けて換気し、授業をはじめる』という無力な教師の姿が描かれるその場面。今や当時の記録映像とも言える”腐ったミカンの方程式”で有名な”金八先生”のあの時代を語るかのようなその物語。『この学校は、凪いだ海を走る船ではない。荒れ狂う海の上を必死で進んでいる』というその時代。そんな荒れ狂った中学生活の中で『その日から学校は一変した』という、友梨のそれからの人生を決定づける出来事が起こります。友人の真帆を守るために『十四歳でわたしは人を殺した』という友梨。『わたしはずっと、刃の上を歩いていた。これまで落ちなかったのはただの幸運で、足の裏は傷だらけだった』と学校に行けなくなる友梨。しかし、何故か警察に連れて行かれ少年院に入ることになったのは大切な友人の里子だった、とねじれていくその展開が、その後の三人の人生を複雑に絡み合わせていきます。そして、さらに『まるで物みたいに、蹴飛ばしたり、殴ったりして』という末の『どうやっても納得できない』クラスメイトの死に接することになる友梨。物語はもう際限なく陰惨さを極めていきますが、一方でそんな結果として、荒れ狂っていた中学校に変化が訪れます。『急速に、秩序を取り戻したのは事実だ』という学校の様子。『煙草を吸う生徒も、授業をさぼって廊下に出て行く生徒もいない。だが、そうしないのは、竹刀で殴られるからだ』と一変した学校の様子が描かれていくそのシーン。このあたりの意味合い、その雰囲気感は、この時代をリアルに体験した人と歴史の一つとして知識で知る人の間には、そこに浮かぶイメージに大きな違いがあるのではないか、そんな風にも感じました。

    そして、高校へ、大学へ、そして就職へと見かけ上”レール”の上を順調に進んでいくかに見えた友梨の人生が描かれていく物語後半。一旦は友梨の人生から離れていった里子、そして真帆。しかし、三人の人生は『十四歳でわたしは人を殺した』という過去の一点から伸びた紐に絡まれて離れることができないかのように、再び繋がって複雑に絡み合っていきます。それが友梨が三十四歳になった時に起こるある展開。『あそこからやり直せば、もう少しいろんなことがうまくやれるだろうか』というその後の友梨の人生を決定づけることになる出来事へと突き進む友梨。『わたしがこの先、レールの上を歩けなくなったとしても、それは別に不幸なことでもなんでもない。長い猶予が与えられていただけのことだ』とどこか吹っ切れたかのような、もしくは覚悟を決めたかのような思いへと続くその”内側”の物語の結末には、なんとも言えない思いが残るのを感じざるをえませんでした。

    そして、二階層から構成されるこの作品は、最後の最後に至って”外側”の物語と”内側”の物語が融合する瞬間が訪れます。ある真実を手にした小説家の『わたし』は『いったいどういうことなのだろう』と、”外側”の物語に潜んでいたミステリーを”内側”の物語を元に解き明かします。複層の物語を綴り上げた近藤さんの力量が如何なく発揮されるその瞬間。完結したと思われた”内側”の物語の余韻がまた違う色を帯びる瞬間を見るその結末。決して晴れない重苦しい空気に揺らぎを感じるその結末は、しかし、どこまでいってもう〜ん、なんだろう…という思いがやはり残るものでした。

    三十数年に渡ってこの国が歩んだ時代を、古びた団地の姿に見るその物語は、『結局さ、一度レールから外れてしまうと、もう戻れないんだなと思ったよ』と語った里子の言葉に深い闇を見るものでした。そんな闇がどこまでも晴れずにじめっとした重苦しいばかりの空気が支配するこの作品。今まで数多くの小説を読んできましたが、ここまで重苦しい空気に包まれた作品はあまり記憶がありません。欺瞞、嫉妬、執着という言葉から感じるじめっとした嫌な空気が支配する闇の暗さに鬱屈となるこの作品。一気に読ませるその物語ですが、これからこの作品を読まれる方には、気持ちに余裕が十分ある時に読まれることをお勧めしたいと思います。

    解説の内澤旬子さんが、『影に響く』と訳される「インフルエンス」という書名のこの作品。近藤さんの絶品の人物描写の中に人が人をそれぞれに思いやる様を見る物語は、その先に、生きることのある意味での怖さと人生の孤独を感じる、そんな作品でした。

    • しずくさん
      近藤さんは好きな作家さんで、この本も期待を裏切らず良かったですね。思わず過去に書いたマイレビューを読み返しました。そこに、彼女の作品を読もう...
      近藤さんは好きな作家さんで、この本も期待を裏切らず良かったですね。思わず過去に書いたマイレビューを読み返しました。そこに、彼女の作品を読もうと思ってた本のタイトルが書いてあり、思い出し慌てて図書館に予約を入れられました。ありがとうございました!
      2021/05/19
    • さてさてさん
      私のレビューでも触れたのですが、しずくさんの書棚の単行本の表紙がとてもいい味を出していると感じています。まさしくあの写真の世界観だと思います...
      私のレビューでも触れたのですが、しずくさんの書棚の単行本の表紙がとてもいい味を出していると感じています。まさしくあの写真の世界観だと思います。それにしても重々しい作品でした。これから読まれる作品レビュー楽しみにしております。私も少し期間があくと思いますが、また近藤さんの作品を読み進めたいと思います。
      2021/05/19
  • まず、語り口が先日読んだ同じ作者の「私の本の空白は」によく似ていると思いました。
    女性の一人称で語られるせいだと思います。

    語っているのは戸塚友梨。40代女性ということになっています。
    それを聴いているのは同年代の小説家。
    話は友梨が小学生の時からです。

    友梨の最初の友だちは日野里子。
    里子は祖父から性的虐待を受けています。
    そして次の友だち坂崎真帆のために中学生の時、友梨は真帆を襲った変質者を誤って殺してしまいます。
    しかし友梨の罪は里子が被り、里子は少年院へ入ります。
    少年院から出てきた里子に友梨は「うちのジジイを殺して欲しい」と言われますが…。

    読んでいて、頭がおかしくなりそうな展開の話でした。
    子どもの性的虐待や夫のDVなどの言葉は出てきますが、特にそれを社会的に糾弾するための書かれているとは思えないストーリーティングでした。
    もちろんただの布石ではないかとは思いますが(「性犯罪は魂の殺人だ」という言葉も出てきます)。
    社会性よりも、ミステリーとしての面白さ、奇妙さを追求するストーリーではないかと思いました。

    三人の少女だった女性たちのの奇妙な繫がりを描いた、暗黒童話のような作品だと思いました。

  • あっという間に読み終えた作品。

    日が経つに連れて重なる密かな罪。
    読みながらも苦しくなるけれど先が気になる展開。

    友達ってなんなんだろう、、と深く考えさせられた。

  • 読む本が無いなあ。。。
    と、昨日は読み終わった大量の本をブックオフに売ると共に、また数冊仕入れてきた。

    近藤史恵先生のお名前は存じていて、多分何冊か読んでいたと思う。
    先生のお名前で目が止まり、そこからブクログを検索して評価の高いものを手に取った。

    この本は、フィクションなのか?
    ノンフィクションなのか?

    物語は小学校二年生にまで遡る。
    当時の友達、里子が虐待されていることを知るも、何も出来なかった友梨。
    中学で新たに親友となる真帆を救う為、男を刺してしまう。
    その後大人になった3人にある事件が起きる。

    肌にザワザワと恐怖の予感を感じるような書き方で、物語の期待感が一気に煽られる。

    女であるからか?主人公の心の機微も、何となく理解できる気がする。

    昨日の夜から読み始めたが、どんどん面白くなり、朝の時間で一気に読み終わってしまった。

    面白かった。

  • 戸塚友梨、日野里子、坂崎真帆。
    三人の女性の30年に渡る、複雑な関係。

    ある日、小説家の"わたし"に、一通の手紙が届く。
    差出人を含む三人の関係は、きっと興味を引くだろうから、会って、話を聞いて欲しいと言う。

    何故、自分に白羽の矢が当たったのか、不思議だったが、会うことにした。

    その女性・戸塚友梨と名乗る女性は、自分達の30年間の過去を話し始める。

    中2の時、男に襲われそうになった真帆を助けるため、その男を刺した友梨。
    身代わりに、自主した里子。
    少年院から出た、里子は、小さい頃から、虐待を受けていた自分の祖父を、友梨に殺すように言う。
    それを、真帆が、代わりに行う。
    今度は、真帆が、DVの夫を殺すように、友梨に頼む。

    何故、問題の解決が、殺人なのか。
    周りに、相談できる、大人が居なかったのか。
    もやもやしながら、それでも、やめられず、一気読み。
    最後は、なんとなくではあるけれど、そんなに悲劇的な終わり方ではないのが、せめてもの幸い。

  • 勉強を頑張っていた子供の近くで他の子がゲームを始めると、今まで頑張っていた勉強を嘘のようにやめて子供はゲームに夢中になることがあります。
    環境が全てではありませんが、自分や人生を作り上げていく中で欠かせない要素であるのは間違いないと感じました。

    「人は自分を語ることばを欲しがるものなのかもしれない。」
    「未来など、いいものであれ悪いものであれ、思い通りにはならないもので、それならば曖昧な方がいいのだ。」

  • 内容は決して明るくない、むしろ私には重苦しく感じた。それなのに結末がどう落ちるのかが気になってしまい、あっという間に読了してしまった。

    幼少からの友達と秘密。
    途中でお互い連絡を取らない時期が続いたとしても何かの拍子にまたその人の人生に現れ、関わっていく。
    そしてお互いがお互いを重ねるように庇い、増え続ける秘密事項。
    ここまで来るともう昔からの友情だけが彼女たちを繋ぎ止める糸であり、彼女達が生きていく糧のような気がしてならなかった。

  • 救われない友情物語、というのが第一印象。

    淡々と描かれる、友との関係。
    流されていく人生。

    こんな友情もあるんだと納得しながら、あったらいやだと思う気持ち。

    読んでいて、疲れたと思うのは久しぶりかも。

  • 最近読み始めた作家さん。
    こういう話も書くんだ〜!

    著者とはほぼ同年代
    作品で語られる時代も私の中学時代とほぼ同じ。

    作品は大阪だから、私の学校より荒れていたはず笑
    腐ったミカンの加藤君の頃…若い人達にはわからない時代だと思う( ̄▽ ̄)
    窓ガラス壊して回った尾崎豊の「卒業」みたいな笑

    巨大な団地ができ、公園、病院、その中で生活が成り立つ一つの街になる。
    今のように「いじめ」と言う言葉は無かったけど、
    差別はやめましょう!と言う時代でもなかった。

    不良とそれ以外の人。
    体罰する先生としない先生。
    特殊学級の子と普通学級…

    中学時代に団地と言う世界が全てだった彼女達
    共感する事はなかったが凄く引き込まれて面白かったです。

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著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で「鮎川哲也賞」を受賞し、デビュー。2008年『サクリファイス』で、「大藪春彦賞」を受賞。「ビストロ・パ・マル」シリーズをはじめ、『おはようおかえり』『たまごの旅人』『夜の向こうの蛹たち』『ときどき旅に出るカフェ』『スーツケースの半分は』『岩窟姫』『三つの名を持つ犬』『ホテル・カイザリン』等、多数発表する。

近藤史恵の作品

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