監禁面接 (文春文庫 ル 6-6)

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167916367

作品紹介・あらすじ

『その女アレックス』の鬼才ルメートルが放つ徹夜必至、一気読み保証のノンストップ再就職サスペンス。

リストラで職を追われたアラン、失業4年目、57歳。再就職のエントリーをくりかえすも年齢がネックとなり、今は倉庫でのバイトで糊口をしのいでいた。
だが遂に朗報が届いた。一流企業の最終試験に残ったというのだ。だが最終試験の内容は異様なものだった。

〈就職先企業の重役会議を襲撃し、重役たちを監禁、尋問せよ――〉

どんづまり人生の一発逆転にかけるアラン。愛する妻と娘たちのため、知力と根性とプライドをかけた大博打に挑む!

解説:諸田玲子

感想・レビュー・書評

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  • 正に予測不能、驚天動地、全力疾走。
    容易に想像できる未来の範疇を当然の様に飛び越えていくのだが、その頻度とスピードが凄まじい。何度もステージが変わり、何度も注視する部分が変わる。「その女、アレックス」のあの振り回され様を鮮明に思い出すこととなった。

    失業者、アラン・デランブル。
    彼は正規雇用を求めながらパートとして働いていた工場にて(一応)上司の尻を蹴り上げる。訴訟から目を背けながらある大手企業に全てを賭けた男の最終面接が始まる。...と要約すると、タイトルと相まって不穏な想像がムクムク膨れ上がる。「監禁面接」...むふふ、どんな凄惨な事件が待ち受けているのだろうか。(人間性)

    そして始まる「監禁面接」の内容にまず第一の自身の拙い想像力の現実を突き付けられる。更に、早々この最終面接はこじれにこじれたまま終着する事となるのだ。その時は落胆していたが、これは第二部の序章に過ぎなかった。

    これ以降はネタバレを含む気がするので割愛させていただくが、一言言えるのは「想定外」な道筋であった事。もう目的地がどこなのか、何が待ち受けているのか、気分はさながら誘拐され車に押し込められ、これから何が起こるのか想像を放棄した無力な人間になったかの様だった。

    失業者目線の嫌味なジョークが面白い。
    例えば、「マーケティング&マネジメント」についての説明。マーケティグとは欲しくもない人々にモノを売ることであり、マネジメントとは役に立たないヒトを動かし続ける事。

    更に、「ストックホルム症候群」...殺人鬼に愛情が芽生える事。それは自身を守るためとも言われている。これを後に尻を蹴り上げる事となる上司の例えに使っていた。つまり、
    ーー会社という殺人鬼と共に過ごす間に自身の保身の為それに取り込まれた男ーーだ。
    中々ブラックなジョークである。

    コロナの影響もあり、失業者の悲痛な叫びとけしからん妄想が融合した中々アクの強い作品だったが、アランを主軸に彼の家族とたった一人の友人、シャルルの愛情と友情の存在が絶妙で、これが心の均衡を保ってくれていた。

    しかし、読了までにすごく時間がかかってしまった。時間の確保に貪欲になれなかったのだ。
    恐らく同情を向ける対象であるはずのアランに感情移入が出来なかったのだろう。どちらかと言うと妻、ニコルと二人の子供達を憐れむのに必死だった。そりゃ疲れてしまう。
    そして読者は皆、ネイティブアメリカン崩れの友人シャルルを好きになると思う。最高にカッコよかったもの。故に彼の迎えた結末にほとんどの人は上がる中指を抑えられなかったと思う。悲しみより怒りが爆風に乗ってやってきた。

    細かいことを言えば一般人ハッカーの技術がプロ並なのも、そこに説明が皆無なのも首が据わらずクラクラしたまま読み進める要因となった。助言者カミンスキーの存在も謎のままだ。
    金で動く人間がこんなにいるなら、小説の登場人物はいくらでも都合の良い職種の奴を雇えてしまうぞ。プライスレスを求む。

    アレックスでの極限での命のやり取りや、凄惨でむごい描写は無いのでライトに読み進められるかと思うが、「雨降って地固まる」結末はやはり見込めない。これは個人的には好みではあるのだが、どうやら今回は癖に刺さらなかった様だ。

    他人事程度にアランに幸あれ( ´•ω•` )

  • ピエール・ルメートル『監禁面接』文春文庫。

    ノンストップ再就職サスペンスとは一体どんな物語なのだろうか。同じようなテーマの作品で、ダグラス・ケネディの『仕事くれ。』があったのを思い出す。

    これまでの作品に比べると、全く面白くない。美味しい話には裏があるという教訓を再確認出来たのが唯一の成果。4年もぷらぷらしていた57歳のおっさんが一流企業から声が掛かる訳が無いし、就職試験で拉致監禁なんて有り得ないということに気付かぬ愚かさ。

    リストラにより職を追われ、実業4年目となる57歳の主人公、アラン・デランブリは再就職のエントリーを繰返しながら、製薬会社の倉庫のバイトで糊口をしのいでいた。ある日、バイト先のいけすかない上司のメフメトに頭突きを食らわし、暗澹たる気持ちで自宅に帰ると、一流企業の最終試験に残ったという報せが入る。しかし、最終試験の内容は『就職先企業の重役会議を襲撃し、重役たちを監禁、尋問せよ』という異様なものだった。

    本体価格880円
    ★★★

  • *『その女アレックス』の鬼才ルメートルが放つ徹夜必至、一気読み保証のノンストップ再就職サスペンス。

    リストラで職を追われたアラン、失業4年目、57歳。再就職のエントリーをくりかえすも年齢がネックとなり、今は倉庫でのバイトで糊口をしのいでいた。だが遂に朗報が届いた。一流企業の最終試験に残ったというのだ。だが最終試験の内容は異様なものだった。
    〈就職先企業の重役会議を襲撃し、重役たちを監禁、尋問せよ――〉
    どんづまり人生の一発逆転にかけるアラン。愛する妻と娘たちのため、知力と根性とプライドをかけた大博打に挑む!*

    前評判通り、巧みな構成と怒涛の展開に読み応えはたっぷり。お得意の残虐描写も封印されているので、純粋に物語に翻弄されたい向きにはお勧めです。

    が、個人的には…疲れました。
    まずもって、主人公のアランに全く共感出来ない。
    なのに、アランの暴走っぷりがリアル過ぎていたたまれない。人はこうして追い詰められて行くんだな、と。

    愛する妻と娘たちがいるんだからもうそれでいいんじゃない?と思わせ、だからこそ無理をしたんだろうな、と言う葛藤の描写が引き立つものの、とにかく読んでいて本当に気が滅入りました。残虐描写の方がマシなくらい。
    なにより、シャルルとニコルが悲し過ぎる…

  • 3部構成のシンプルさの中に張り巡らされた、人物造形と舞台装置の複雑さ、夢中になって読了。『暴力を振るうような人間じゃなかった』はずの主人公がどんどんヤバいやつになっていく過程はヒリヒリし尽くした感。まさに的確に急所を外さず狙い突いてくるプロの尋問官の目前に引きずり出されているような気持ちになり最後まで読み終えました。仕事を失うという事がどれほど人間を追い詰めるのか、作者の怒りを感じたくらい。

  • あれ?なんか面接に行ったけど面接じゃなかった的な?
    ルメートルファンでハードカバーで買った。
    面白かったけどそんなアホなーって思ってたかな?
    もう1回読み返さないと思い出せない。
    グロとか胸糞はあんまりなかったはず。
    主人公がなんか切ない。

  • 読み終わった後に、「何かに似てるな...」と思っていたのですが、ドラマのブレイキング・バッドに似てます(賛否両論あると思いますが)。

    ブレイキング・バッドのほうがよりクレイジーだし、失業が始まりだったわけではないけど、これまで地道に頑張ってきた中年男性が、貧乏がきっかけでどんどん邪の道に逸れていくという所はそっくり。

    人間追い込まれると思いもよらないことをする、という点は鮮やかに描写されていますが、採用面接のために、「流石にそこまでする?!」というツッコミが最後まで消えなかったので、若干評価は低めです。

    でも失業という社会問題については共感するところが多分にあったので(私も今は仕事あるけど、40,50代になって急になくなったらどうするんだろう。。と非常に考えさせられました)、時間さえあれば読んでみて欲しい作品です!!

  • 三部構成「そのまえ」「そのとき」「そのあと」。
    主人公は57歳失業者、元人事部長。愛する家族のために求職中。ある企業の採用試験にうまく進みだしたことで、貧しいながらも平和だった一家がジェットスター並みの展開に飲み込まれる。
    読者は「そのとき」の章で、ちょっと、いったい、主人公はどうなっちゃったの!と慄くことだろう。
    元同僚のシャルル、妻のニコルの存在が良い。
    「その女アレックス」を読んだことはあるが、本作が同じ作家だってことは知らずに読んだ。なるほど、途中からページターナーっぷり発揮している。

  • 2023/06/16

  • 2023.06.03
    もし、「ワタシが今リストラされたら4年後にちょうどアランと同じ状況になる。」
    読み終えてそんなことを思わず考えてしまった。ルメートルにしては流血量が少ないため、そんな妄想を呼び起こす。
    しかし、解説で諸田さんが述べているように、カミーユのシリーズとどちらが「怖い」かというとなかなか判断に迷う。
    違うステージの怖さだからである。血を流すことだけが「怖さ」を表現するものではないとわかる良作。

  • ページをめくるたびに驚きの連続、先の展開が読めない小説。時を忘れて読み耽ってしまった。本当に最後のページまで、サスペンスが続き先読みできない展開が続き、緊張しっぱなしだった。かなりのページ数だが、チャレンジしてみてほしい。
    著者の作品は、翻訳されているものは全て読了かな?『その女アレックス』が強烈な印象を残す作品だったこともあり、それ以来文庫がでれば必ず購入している。
    次回作も楽しみだ。

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