海を抱いて月に眠る (文春文庫 ふ 47-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167916756

作品紹介・あらすじ

「感動で全身が震える傑作」──佐藤優(作家・元外務省主任分析官)
「世代も国境も超えた希望の書」──斎藤美奈子(文芸評論家)

離婚して働きながら一人娘を育てる梨愛(りえ)。
横暴で厳格だった在日一世の父は、親戚にも家族にも疎まれながら死んでいった。
しかし、通夜では、人目もはばからず棺にすがりつく老人、目を泣きはらした美しい女性など、見知らぬ人たちが父の死を悼み、涙を流していた。
父はいったい何者だったのか。
父の遺品の中から出てきた古びたノーには、想像を絶する半生が記されていた。
新しい在日文学の傑作!



深沢潮さんは、2013年『ハンサラン 愛する人びと』で単行本デビュー。ママ友地獄や在日朝鮮人をテーマにした多彩な作品を次々に発表し、話題を呼んでいます。
深沢さんは、幼心になぜ戸籍にある父親の誕生日と実際の父親の年齢が違うのか、不思議に思っていたといいます。そして、深沢さん自身もまた、長い間、父との間に大きな溝を感じていました。
「大学生くらいまで私は自分が在日韓国人であることをひた隠しにしていました。父の話を聞き、この小説を書くことは、かつて否定していた自分のルーツに向き合う時間でもありました」
16歳にして祖国を脱出し、日本では偽名で暮らすことを余儀なくされ、常にKCIAの監視を受けていた父。
そして、共に海を渡った仲間のそれぞれの選択や残酷な運命。
そのような境遇にありながら、一代で財を成した男の不器用な生き方に、胸を鷲掴みにされます。
家族とは何か? 在日とは何か? デビュー以来追い続けてきたテーマが結実した一世一代の勝負作です。

感想・レビュー・書評

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  • 以前、姜尚中さんのオモニの一生を綴った”母”という作品を読んだ時、実に壮絶な人生だ。という感想を抱いたのだが、この作品のアボジも実に壮絶な人生だ。
    時代と運命に翻弄され時にはあがらい、流され、それでも必死に生きたアボジ。仲間、家族、故郷。。。
    奇しくもコロナで久しく韓国には行けていないが、それでも自由にどこでも行ける今の時代は、本当に恵まれている。

    日本はよく単一民族と言われているが、よく考えてみてほしい。果たして、そう言い切れるだろうか。

  • 読み応えがあった。

    在日の人たちについての小説はたくさんあるけれど、これは「パチンコ」とはまた違った人たちのストーリー。

    戦後、民主化するまでの韓国は、北朝鮮のような独裁国家さながらだったんだなということが、梨愛のお父さんの活動を通じてよくわかる。
    このような壮絶な人生を歩んだ人たちが、日本にはたくさんいるということを、頭の片隅に置いておきたい。
    朝鮮半島がひとつになる日は来るのだろうか…

  • もっと近現代日韓関係史と朝鮮史、戦後在日朝鮮人史を知りたくなりましたねぇ。

  • 父の文山徳允は表立っては在日という事実を隠し、日本名で人生を送っていた。
    小さい頃から父は長男の鐘明には優しく、何故か娘の梨愛(りえ)には理不尽ともいえる厳しい躾を果たしてきた。
    長女の梨愛は、そんな父親に反感を抱き、お互いに理解し合える親子関係ではなかったと考えている。
    兄は、母国に対する愛国精神に長けた父親の頑固なまでの考え方とは相反し、結婚と同時に日本国籍を取得する。
    そんな兄とも梨愛は距離を置いた関係が続いていた。
    その在日韓国人一世だった父が亡くなった。
    傲慢とも云えた父の葬儀に、老いた白髪の老人が人の目も憚らず、棺に縋り泣き悲しんでいる。
    その傍に美人の若き婦人が涙を流し、父の死を悼み悲しんでいる。
    身内の誰もがその二人が何者なのか、全く知らなかった。
    後日、兄と二人で父の一人住まいであったマンションで遺品整理を行なう。
    数少ない遺品の中に、数冊の古いノートが遺されていた。
    日帝支配の戦前、戦中、そして戦後と、混乱の真っ只中で苦境を強いられた朝鮮半島の人たちの生き様の物語だ。
    在日の人々の戦後の歴史が、李相周(文山徳允)が残したノートに、文山の人生が綴られていた。
    慟哭ともいえるノートから聞こえる声を通して、梨愛と鐘明は父親の真の姿を知ることになる。

  • 書いてくれてありがとうございました。

  • 在日の父。見知らぬ女性。涙。
    自分の知らない父。
    知らない人生。
    親の人生って?知っていますか?
    考えてしまいました。

  • 不勉強なため、韓国の近現代史をほとんど知らずに読んだので前半は聞きなれない韓国名や言葉に悪戦苦闘したり、父の横暴な態度にイライラしながら読み進めていくがだんだん夢中になって読んでいた。自分の本当の名前も歳も偽り異国の地で家族を思い、国を思い生涯をおくった在日の人の気持ちなど今まで考えたこともなかった。
    読書は娯楽と思っていて、歴史や政治ものはあまり読んでこなかったけれど時々はこういう本も読んでみるものだと感じた。

  • 読書記録68.
    #海を抱いて月に眠る

    本好き友が紹介してくれた作品
    海を越え日本に来た父と
    日本で生まれた息子、娘
    更にはその子らにも繋がる
    家族の物語

    父親の不器用な姿の奥にある真実が一つ一つ見えていく毎に涙が溢れた

    彼らの背負ってきた時代の苦労を、何も知らないでいる自分が
    恥ずかしい

    知ろうとする事、伝え残す事の大切さ

    友よ、ありがとう

  • お父さんの人生は面白いけど、文章が、、子供っぽく感じる。中盤がダラダラして我慢して読んだ。すごく残念。

  • 韓国の近代史を知らなかった。祖国を離れて、身を偽って暮らす葛藤も想像を超えていた。とはいえ梨愛の父が家族に向ける言動には共感も理解もできないなぁ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。2012年「金江のおばさん」で第十一回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。著書に受賞作を含む『ハンサラン 愛する人びと』(文庫版『縁を結うひと』)『ひとかどの父へ』『緑と赤』『伴侶の偏差値』『ランチに行きましょう』『あいまい生活』『海を抱いて月に眠る』などがある。

「2022年 『わたしのアグアをさがして』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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