木になった亜沙 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 70
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167920227

作品紹介・あらすじ

★今村夏子ワールド全開の衝撃作! 
 村田沙耶香の解説で文庫化

アパートで母親と暮らす亜沙。
友だちも、金魚も、家族でさえも
彼女の手からものを食べようとしない。
「お願い、食べて」
切なる願いから杉の木に転生した亜沙は、
わりばしとなり若者と出会った――(表題作)。

他者との繋がりを希求する魂を描く、
いびつで不穏で美しい作品集。
単行本未収録エッセイ3篇を増補。

〈目次〉
木になった亜沙
的になった七未
ある夜の思い出
ボーナス・エッセイ

解説・村田沙耶香

感想・レビュー・書評

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  • この人の作品の中では一番好きかも知れない。
    どれも切ない作品だった。

    自分は物を溜め込む方ではないが、ゴミ屋敷に住んでいる人にとってはこんな認識なのかも。

  • 今村夏子さんの作品がとても好きだ。どの作品もテーマが通底しているというか…簡単に言うと「人間の純粋さ」みたいなものかなと思うんだけど、それがこういう不気味なお伽話に展開していくのが面白い。

    木になった亜沙も的になった七未も、なんとも切ない終わり方なんだけど、彼女らにとってはあれが救いだったのかもしれないし、あれしか救いがなかったのかもしれない。現実における所謂はみ出し者の行く末について考えさせられる。

  • 独特の世界観でファンタジーと現実の狭間のような作品

  • 芥川賞作家の頭の中はどうなっているのかわからなくて、たいてい私はついて行けずに疑問符だらけで読了します。だけどこの作家だけは怯むことも愕然とすることもなく読める。

    自分が手渡したものを誰にも食べてもらえない少女。的にされるのに絶対に当たらない少女。ずっと寝そべって暮らしてきた女性。こんな異様な状況のなかでも今村さんの表現はいつもやわらか。

    彼女らを描写するとき、難しい言葉はちっとも使われていなくて、もしかしたら私にでも書けるのではと思うほど。でも絶対に書けない。

    やはりこの人の頭の中がどうなっているのか不思議。それでいて吸い込まれます。

  •  三遍の小説とその他エッセイ等等。辞書には載っていない、けれど確かに在る理不尽、不愉快、もやもやする感じ、そういうのを上手いこと言語化してくれる。文芸はこうでなければ。

  • なんて感想を書いたらいいかわからない、一言では言えない。今村作品を読むに連れて作風に慣れ始めている自分が怖い。どう読んだって狂っているはずなのにどこかわかる、そんな気持ちある、みたいな...

  • 久々に読書
    読みやすいけど本ならではの内容で、読書の楽しさを久々に獲得
    どっかのタイミングではるちゃんに返却せねば

  • 友人に、勧められた今村夏子の本。

    初めて読んだ今村夏子の本だったが、とにかく
    “不思議”で“奇妙”としか言いようがない。 

    『木になった亜沙』
    自身の手によって人に与えようとする食べ物が、誰にも、何も受け取ってもらえない。そしてそれは次第に小さな疑問から、「私の手から食べて」という切なる願いへと変わっていく。
    その願いが通じたのか亜沙は割り箸へと姿を変え、ある若者に大切にされる。そこには同じように様々なものに姿を変えたものたちが。

    割り箸になった亜沙は、自分の手から食べ物を受け取ってくれることに大きな喜びを感じていた。
    ーーーそれは若者と離れ離れになるくらいなら、消える方がマシだ、と思えるほどに。

    『的になった七未』
    小さい頃から何を投げつけられても、当たらない。どうして私だけ、当たらないのだろう。

    周りの子達が声援を送る。
    「頑張れナナちゃん、早く早く。」
    当たればそちら側に行くことが、出来るのに。
    どうして私だけ、当たらないのだろう。
    誰か、何でも良いから、私のことを当てて。

    『ある夜の思い出』
    自堕落な生活。ある夜、地面に這いつくばって家を出る。
    そこで起きた奇妙な出会い。
    一体あれは何だったのだろう。

  • 自分の手渡したものを誰にも食べてもらえない亜沙

    的になっても決して誰からも当てられない七未

    たった一つのことだけなのに、こんなにも人生が孤独になっていくなんて…。

    わりばしになった亜沙は喜々と々としていて、若い男性もそれに応えるかのように気持ちよく食べていて、亜沙よかったね…と思いました。

    「ある夜の思い出」の、真由美にプロポーズした腹ばいの男性はなぜ人間に飼われていたのか?

    読み終わっても、頭の中から?がなくならず、不思議な世界に迷い込んだ気分。

  • 若者の部屋で暮らす亜沙の仲間たちの一員になれたらすごく居心地がいいのだろうな。その人の生前の絶望や希望が形になるとしたら、私はどんな姿になるんだろう。

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著者プロフィール

1980年広島県生まれ。2010年『あたらしい娘』で「太宰治賞」を受賞。『こちらあみ子』と改題し、同作と新作中短編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で、11年に「三島由紀夫賞」受賞する。17年『あひる』で「河合隼雄物語賞」、『星の子』で「野間文芸新人賞」、19年『むらさきのスカートの女』で「芥川賞」を受賞する。

今村夏子の作品

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