- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167921675
感想・レビュー・書評
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三越創業350周年に因んだアンソロジー「時ひらく」、名だたる豪華作家陣が名を連ねているだけで読んでみたくなる。
舞台は当然全作品三越デパートなのだが東野圭吾さんのみ少しだけ違った角度からの短編。
作品はというと面白かったか?と言えば面白かったのだが、文集の類いの様なものでどちらかというと各作家さんがどういう捉え方をし、どういう書き方をするのかに興味がいき、それを読ませてもらったという感じ。
昭和生まれの自分には百貨店には家族の思い出が詰まっている。東京23区の西側に生まれ育った自分には銀座三越には馴染みはなく、百貨店と言えば新宿伊勢丹だった。
銀座三越には幼き頃、母親に連れられてやはりアンモナイトを見に行った思い出がある。実際アンモナイトを初めて観たのは銀座三越。
作品にもあった通り百貨店には思い出が宿る。それは時代背景であり大衆の背伸びしたステータスも相まって普段と違う日常を味わうべき場所だったからだろう。
余所行きの格好をさせられて、丁寧な雰囲気にあたかも自分達も馴染む、というよりは誰もが異端であってはいけない、良識の節度という了解事項が漂う場所。
どんな人にもワンランク上のステータスを感じさせてくれる。
今にしてみれば少しだけノスタルジーを感じられる、いい時代だったなと思う。
渋谷の東急百貨店も昨年閉館し、ネット通販が主流の時代になっている。買い物も行かずにほしい物を安価で買える、便利だし効率的。
だけど百貨店に行くからこその価値もこの本のようにあるのも確か。それは後々思い出として付加される価値でもある。
文化としての価値も併せて考えられる。
自分はなるべく足を運ぼう、若い世代にも呼び掛けよう、そして百貨店の存続を強く願う。その場所には各々が積み上げた文化があるから。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
三越創業350年、6人の作家によるアンソロジー少し得した気分になり読んでみました。
イオン派なので三越のことはあまり知らないのですがここの包装紙は母がよく再利用していました。テープをアイロンで温めて破れないように剥がして中身よりも包装紙を大事にしてたくらいです。進物に三越の包装紙を使うと田舎の人からはたいそう喜ばれるとわざわざ包み変えて贈っていたことを思い出しました。
私自身は中身が同じなら安く買えた方がいいと思ってしまうのですが、年配の人にとっては三越は別格だったようでこの作品からも老舗百貨店のことを色々知ることができました。
なんとあの赤の石ころのようなデザインの包装紙にMitsukoshiと書いたのは、登時宣伝部にいたアンパンマンの作者だったとか、三越のライオンに跨ると願いが叶うとか、天女は京都の貴船神社の杉が使われたとか、屋上に神社、大理石の中にアンモナイト、お子様ランチの発祥に、日本一のパイプオルガン、雨が降ったり、止んだりで館内のBGMが変わるとか知らない事ばかり。時空を超えたSFファンタジーが繰り広げられて楽しく勉強できました。
そうそう、「はぶぁないすでい」ってひらがなで書いちゃったけど命令形なのかって件。
今日もいい日にしたいって思いました。 -
百貨店『三越』にまつわるアンソロジーです。創業350年を誇り、本館が国の重要文化財に指定されている日本橋三越本店。登場する豪華絢爛な施設・備品の数々、表紙や各話扉に使われた百貨店初のオリジナル包装紙「華ひらく」のデザインなど、その特別感が紙面から溢れ出るようです。(伊坂幸太郎さんの1篇は仙台三越が舞台)
6つの各話で、著者特有の味わいを醸し出していますが、強いて共通点を挙げるとすれば、「世代を超えて交錯する物語」だと思います。
三越の歴史と佇まいの為せる技でしょうが、脈々と過去から今に続く物語を中心に据え、作家諸氏の三越へのリスペクトを感じます。
そして何と! 東野圭吾さんの「重命(かさな)る」に、まさかの湯川(ガリレオ)登場! え?もしかして新作短編? 東野さんだけでなく、"推し"をお持ちの皆さんには、外せない一冊ですね。
少々寂しいのは、地方の田舎に住んでいる者にとっては、その特別感や思い入れをなかなか共有できないことです。百貨店に限らず、地方では商業施設等の閉店ラッシュが続き‥、僻み根性ではないですが格差を感じています。
何とかしてくれー!と愚痴をこぼしながら、間違いなく三越を訪れてみたくなる一冊でした。-
本とコさん
こんにちは♬.*゚
私の住んでる市内でもガンガン商業施設が潰れ、数年前に唯一残っていたイトーヨーカドーが閉店しました ( ...本とコさん
こんにちは♬.*゚
私の住んでる市内でもガンガン商業施設が潰れ、数年前に唯一残っていたイトーヨーカドーが閉店しました ( ߹ㅁ߹)
商店街もシャッター街になっているのに…。
伊坂幸太郎さん、さすがブレずに舞台は仙台なんですね(´˘`*)2024/02/27 -
2024/02/27
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三越に通い詰めていればもっとこの世界を楽しめたであろう残念感。
でも詳しくしらなくても楽しめた。
辻村深月さんの話は楽しく、さくさく読めた。
伊坂幸太郎さんの話は途中まで非常に楽しめたが、いきなり違う作品に変わったのか?と慌てるくらい変わったので焦った。
あの題だけで1作品描いてもらいたかった。
まだ消化不良。
特に印象に残ったのはこの二作品かなぁ。 -
三越創業350周年を記念したアンソロジー。
伊坂幸太郎、恩田陸、東野圭吾・・・
ミステリー好きでも、手を出したくなるラインナップ。
日本橋三越にはあまり行ったことないのだけれど、どの作品も文章から日本橋三越の気品の高さがうかがえる(伊坂幸太郎の舞台は仙台)
しかし、その分ストーリー自体は軽いタッチが多く、気軽に読める作品が多い。
三越の歴史をSFタッチにしちゃう辻村、伊坂作品はさすがとしか言いようがない。
気品がありつつも、たくさんの人間の生き様を温かく受け入れて来た三越に赴いてみたくなる。
この作品でまさかガリレオの短編が読めるとは!
恩田陸ワールドも炸裂なので、ミステリー好きにもぜひ読んでもらいたい。 -
老舗百貨店”三越”にまつわる短篇集とは知らずに手にとったのだけれど、本の装丁を見て、あ〜あの包装紙の柄!と納得。
辻村深月さんの物語は建物の変遷と家族の今昔をうまく織り交ぜて、味わい深く温かいストーリー。
辻村さん作の好きな作品『東京會舘』を思いだしました。
阿川佐和子さんの物語のお母さんは「買物は三越」と決めている。母世代の人ってそういう所ありますね。私の母は「高島屋」一筋です(笑) -
三越が舞台で繰り広げる短編集
大好きな作家さんが多くて大満足!
東野圭吾さんはちょっとテイストが違ったけどすごく好き。
他の話も不思議な感じでとても良かった -
有名作家さんのアンソロジー。
各話、三越を題材にしてるので読み終わったら三越について少し詳しくなった気がした笑。
1話50ページ前後の短編で、作家さんも都度代わり、隙間時間に読むに最適でした。
ファンタジーありヒューマンドラマありミステリあり。
作家さんそれぞれの味付けも効いていて思わずニヤっとする場面があったりで最後まで楽しく読めました。 -
オール讀物2023年9,10月合併号辻村深月:思い出エレベーター、2024年1月号伊坂幸太郎:Have a nice day!、2023年8月号阿川佐和子:雨あがりに、7月号恩田陸:アニバーサリー、5月号柚木麻子:七階から愛をこめて、12月号東野圭吾:重命る(かさなる)、の三越350周年特集である6つの短編を2024年2月文春文庫刊。三越が登場するのは、あたり前だが、いずれの作品も、「時」がひとつのテーマになっているのは、そういう注文だったのか偶然(必然かも…)そうなったのかは、わからないが、うまく生かされていて、ファンタジックな運びになっているのが楽しい。