アドルフに告ぐ (5) (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋 (1992年5月1日発売)
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784168110177

感想・レビュー・書評

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  • 学生時代以来の再読。アドルフ・ヒトラーにユダヤ人の血が流れていることの証拠文書をめぐり、翻弄されるドイツ人、ユダヤ人、日本人の物語。民族主義の悲惨な結末、国家がおかしくなるとその国民までおかしくなってくることがよくわかる。漫画というより、漫画という技を使った歴史小説だ。何度読んでも深い。

  • 「アドルフに告ぐ」完結の5巻。

    第二次世界大戦終戦で物語は終わるのだろうと予想していたのですが、全く違う結末。「アドルフ」の名をもつ人間が物語から退場しただけで、作品として伝えたかったものは終わることがないのだ、と強く思う。

    最後の瞬間まで、カミルとカウフマン二人のアドルフは互いを憎しみ続け、果てのない戦いの中に人生を置いてしまいました。少年時代の頃に戻れるかという期待、せめて死の間際には過去を懐かしみ、懺悔する瞬間が訪れるのではないかという希望は打ち砕かれました。娯楽作品ということを考えれば、物語上の結末として終わらせることもできたのでしょうが、その結末を選ばなかったことが「アドルフに告ぐ」を描き伝えたかったことなのだろう、と感じます。

    大義の為に殺人を正当化し、憎しみの連鎖を増やし続けること。どこかで止めなければならないが、憎しみに囚われてしまったら、そこから逃れることはできないのか。
    おそらく、始まってしまったら止めることは途方もない歳月がかかることで、やはり始まる前に止めなければならないのだ、という考えを強く思う。
    理想論ではあるけども、理想論がないと歯止めは効かないのではないでしょうか。
    戦争が始まってしまっては、そんなことは言えないとは思う。家族や友人知人の理不尽な死を受け入れることはできないと思う。
    だからこそ、そんな状況にしてはいけないのだ、ということではないかと思います。

    カミルとカウフマンが再会した時の一瞬の友誼。少年時代を振り返る二人の関係は健康的だったけれど、セリフの端々に相容れないものが散りばめられていて、読み返すと辛い。
    やはり、こういう社会はおかしいよ。

  • 眠気も忘れて、5巻まで読んだのだった。

  • “おれの人生はいったいなんだったんだろう 
    あちこちの国で正義というやつにつきあって 
    そしてなにもかも失った・・・肉親も・・・友情も・・・おれ自身まで・・・ ”

    第二次大戦後の日本・ドイツから、終盤は中東パレスチナ・イスラエルへ舞台は移り、「アドルフに告ぐ」は、ようやくその意味が明らかにされる。

    正義を繋ぐ事が、復讐を繋ぐ事であってはならない。

    GWじっくり読もうと思っていながら、
    足かけ一日で一気読みしてしまった。

  • 人種、民族とは何かを考えさせられた作品。また当時の街の様子やヒトラーの描写がリアルで実際に見てきたかのようだった。凄惨なシーンは目を背けたくなるが現実にあった事また現実で続いている事として今私達が何をすべきか考えさせられた。

  • 全巻を通して作者が伝えたかったこと。
    憎しみは憎しみの連鎖を産むだけ。私たちは戦争という歪んだ正義についてもっといろいろなことを考えなければならない(学ばなければいけない)のだと感じました。

  • ナチス興亡の時代を背景に、三人のアドルフの運命を国際的なスケールで描いた作品。

    三人のアドルフとは、
    ・ご存じアドルフ=ヒットラー
    ・神戸に居住しているユダヤ人で、パン屋の息子のアドルフ
    ・神戸のドイツ総領事館で外交官を務める父親を持つドイツ人のアドルフ

    で、この三人の関係がどのような結末を迎えるのかが気になってほぼイッキに読んでしまった。

    中学〜高校生の間にこの作品に出会っていたなら。というか学校の教科書に載せてもいいくらい意義深い作品だと思う。

    マンガなんて読んでも意味ないとか言ってる大人にはぜひまずこれを読んでいただきたい。

    いままで読んだ手塚作品の中で一番いいと思います。

  • ワタクシの持っているこのシリーズは、単行本で全巻が初版本なのです。新しいのが出るのをワクワクしながら待ったものです。手塚先生の晩年の大作ですよね。ここには、手塚先生のメッセージが、これでもか、これでもかと、もりこまれています。漫画(コミック)を超えたものがあります。

  • 時代に翻弄されるという時代。
    切なさで胸が震える。

  • 2021年12月、1〜5巻読了。
    日本の舞台はまさかのなじみの場所だった。
    結局幼いアドルフも学校に入れられたら、簡単に変わってしまうというのは予想通りだけど悲しかった。
    暴力シーンが多く、1日1巻読むのが精一杯だった。
    私は小城先生の強さにも感服した。

  • アセチレン・ランプ、ハム・エッグがいい演技してますね。他のキャラにあまり生き生き感を感じない。

  • 第二次世界大戦下を生きた3人のアドルフの話。
    正義の名の下で行った暴力が暴力の連鎖を生んで、誰も彼も人生を壊されていく。

    史実に基づいていない点もあるだろうが、戦争の悲惨さを伝える漫画として、学校の図書館にでも置いて読み継がれていくべき作品だと思った。

  • すばらしい漫画を読んだ。
    ただ、そのひと言に尽きる。

  • 悲しいお話だった。

  • ポツダム宣言を受諾して日本の戦争が終わったところでこのお話も終われば…とも思うんだけど、その後のパレスチナ問題まで描いて終章を迎えます。
    地球上から戦争がなくなる日なんてこないのかもしれない。
    ズルいけど、今自分が住んでいるこの国が平和であって欲しいとつくづく思いました。
    なんだか実は日本も今キナ臭くなってるからねぇ…。
    全く古さを感じないお話だったよ。

  • ううむ。圧巻。壮大。ずしりと来る。
    色々なものが内側に渦巻きすぎて感想にまとめられぬ。

  • 3人のアドルフの中では、カウフマンの内面を描くことが多かったように感じます。それだけに、カウフマンの最期は悲しく感じました。 

  • 人間の愚かさを感じずにはいられません。
    戦争の愚かさを感じずにはいられません。
    多くの人がこの漫画を読んで、
    過去の過ちを感じて欲しいと思います。

    http://www.tv-aichi.co.jp/bp/wadatti/?p=7960

  • 第二次世界大戦前後、ナチスの台頭から終焉までを背景として、日本とドイツで繰り広げられる人生劇場。アドルフ・カウフマン、アドルフ・カミル、アドルフ・ヒットラーの3人を主軸に添えた、ドイツ人、ユダヤ人、そして日本人の悲しい物語。手塚治虫作品の中でも最も頻繁に読み返す作品のひとつです。文庫本に収録されている、関川夏央による解説が秀逸。

    今年2008年は手塚治虫生誕70周年。『アドルフに告ぐ』に限らず、改めて各作品が再評価されることでしょう。

  • 2008/4/13
    重い。
    結局アドルフはみんな憎しみに凝り固まってしまって悲しいよ。
    その輪から抜け出すことは出来なかったのだね。
    復讐は復讐しか呼ばないと言うのは簡単だけど許すのって難しい。

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著者プロフィール

1928年、大阪府豊中市生まれ。「治虫」というペンネームはオサムシという昆虫の名前からとったもの。本名・治。大阪大学附属医学専門部を卒業後、医学博士号を取得。46年、『マアチャンの日記帳』でデビュー。幅広い分野にわたる人気漫画を量産し、『ブラックジャック』『鉄腕アトム』『リボンの騎士』『火の鳥』『ジャングル大帝』など、国民的人気漫画を生み出してきた。

「2020年 『手塚治虫のマンガの教科書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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