ジブリの教科書18 風立ちぬ (文春ジブリ文庫 1-18 ジブリの教科書 18)

制作 : 文春文庫編集部 
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784168120176

作品紹介・あらすじ

実在の人物である零戦の設計家、堀越二郎をモデルに、堀辰雄の小説『風立ちぬ』にも着想を得て描かれた、宮崎駿原作・脚本・監督による2013年公開の作品。国内外で高い評価を受けた本作について、柳田邦男をはじめ、武田頼政、小橋めぐみ、岡崎琢磨、岩宮恵子、半藤一利らが読み解く。

感想・レビュー・書評

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  • 巻を重ねるごとに物理的にも内容的にも薄くなっていくこのジブリの教科書シリーズ、値段は反比例して高くなっている! 千円をゆうに超える!
    今回も駿の関わった鼎談の再録くらいしか意義のある記事はないが、
    唯一意義深く感じたのは、高坂希太郎(「若おかみは小学生!」の監督)が駿の魅力を、ストーリーやテーマではなくカットだと断言。そして画集のようなものだと。ここでぱらぱらっと眼から鱗、いやすでに感じていたことだから言い方は違うかもしれないが、そうそうそれそれ! と見事に言語化してくれた。

    ナビゲーター・柳田邦男 夢がついえた後に残るもの
    Part1 映画『風立ちぬ』誕生
    スタジオジブリ物語 力を尽くした『風立ちぬ』。その後の引退と再始動
    鈴木敏夫 数々の葛藤や偶然の末に生まれた
    宮崎 駿 企画書「飛行機は美しい夢」★
    宮崎駿イメージボード 空を飛ぶ夢
    Part2 映画『風立ちぬ』完成報告会見
    特別収録 ファンタジーを作れない時代に“力を尽くした”映画
    庵野秀明×松任谷由実×宮崎駿 司会:中山秀征★
    Part3 『風立ちぬ』の制作現場
    [作画監督] 高坂希太郎 カットの表現力こそ宮崎映画の真価★
    [美術監督] 武重洋二 今まで以上に思い切りが必要でした
    [色彩設計] 保田道世 試写を観て清々しい気分になりました
    声の出演 ヒロイン菜穂子と二郎を導くカプローニ 瀧本美織/野村萬斎
    Part4 作品の背景を読み解く
    ・viewpoint・ 武田頼政 わずかな零戦の登場シーンに心が揺さぶられる理由
    小橋めぐみ 美しい風
    岡崎琢磨 美しき愛と生への礼賛の物語
    岩宮恵子 思春期のうつくしい夢とかなしみ
    半藤一利 献辞「堀辰雄に敬意を込めて」の意味

    出典一覧
    宮崎駿プロフィール
    映画クレジット

    ■柳田邦男。結核時代の寄り添い方。「死後生」を考えることで、どう生きるべきかが照射される。雲がみなエピソードを含んでいる。
    ■駿企画書。夢は狂気をはらむ、その毒もかくしてはならない。美しすぎるものへの憧れは、人生の罠でもある。美に傾く代償は少くない。リアルに、幻想的に 時にマンガに 全体には美しい映画をつくろうと思う 2011.1.10(311直前。関東大震災の絵コンテを描いた直後に311)
    ■鼎談。庵野は現代で一番傷つきながら生きている。零戦好きが堀越二郎を私物化している。実像と違っても精神においては、これが堀越二郎。ご子息が喜んでくれた。セリフも逃げない姿勢と言われるが、映画の時間もないし、本人たちの時間もない。切迫した時代に生きた人たちは、みんなそうだった。これからも、そういう時代が来る。中国の重慶爆撃……歴史的にも残る無差別爆撃を、描く覚悟はあったが、そのシーンをはずした。実際は、戦後まで国民は零戦という名前も知らなかった。アメリカからゼロファイターという名前が伝わってきてはじめて。聖書に「汝の手に堪るかぎり力を尽くして生きろ」とある、と堀田善衛が「空の空」というエッセイで書いていた。カプローニの曾孫から「紅の豚」のあとに本を送ってもらった。福島の原発が吹いたあと、風がごうごうと吹いた。その放射能を含んだ風も、風の一部なんだ。風っていうのはこの世界のことだと思いますよ。スタッフはずいぶん傷んだが、この傷み方は回復するだろう。実際、打ち上げのときに若いスタッフは浴衣を着てぞろぞろ来て、やってよかった。
    ■高坂希太郎。2年かけて人物が成長していく。駿はキャラ表ではなく原画で決めるから。ここ数作でいわれているが、本当は隠されたメッセージなどない。菜穂子への思い入れが強くなって、死なせたくない駿に「じゃあカプローニと一緒に出せばいいじゃないですか」。駿のメッセージはドラマやストーリーではなく絵。読み切り漫画みたいに絵コンテを描くのであって、最初にテーマがあるわけではない。ストーリーやテーマがないといわれるが、そう。真骨頂はカットの説得力、表現力。映画ではなく画集だ。感情表現のためのストーリー上のコンテクストではなく、瞬間瞬間の情動みたいなもの。だから子供にもわかりやすいし、大人も思い出すところがある映画になる。人間に対する共感というよりは、こうあるべきだという考え方でできているから、意外な人は出てこない。二面性のある人は出てこない。薄っぺらに見えるが、重い直球。
    ■武重洋二。凄い夕焼けが続いた時期があって、あれを描けと言われるんだろうなーと思っていたら、あれを見ちゃったらしょうがないよな、あれ描け、と言われた。菜穂子の家に二郎が駆けつけるシーンで、チェーホフの芝居をアニメでやろうとしているんだな、と思った。
    ■武田頼政。実在の堀越は、日本の戦争指導者を狂人と断罪し「私は職業の選択に失敗したと思う」。

  • 【堀越二郎を何度も取材した柳田邦男氏も絶賛】零戦を設計した堀越二郎をモデルに、堀辰雄の小説にも着想を得て作られた。これを最後に宮崎駿が一度は引退発表した作品を読み解く。

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