「暗黙知」の経営―なぜマネジメントが壁を超えられないのか?

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著者 : 田坂広志
  • 徳間書店 (1998年10月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198609030

「暗黙知」の経営―なぜマネジメントが壁を超えられないのか?の感想・レビュー・書評

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  • マネジメントを行う上で常に心に留めておくべき心得の数々。大半の内容はすでに読んだ講義形式の「なぜマネジメントが壁に突き当たるのか」と同じだが、新たな気付きがいくつもあった。今後も何度も読み返したい一冊。マネジメントに携わる全ての人にオススメ。

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    【読書メモ】

    ●キーワード
    ・「言語知」と「暗黙知」
    ・「複雑系」「複雑性」
    ・「直観力」と「洞察力」
    ・「論理思考」から「大局観」へ
    ・「無我夢中」「無心」
    ・「直線構造」と「循環構造」
    ・「全体観察」
    ・「割り切り」と「矛盾との対峙」
    ・「創発性(emergence)」
    ・「自己組織性(self organaization)」
    ・「未来予測」と「未来創造」の融合
    ・「信念」
    ・「非線形性」「摂動敏感性」
    ・「こころの生態系」
    ・「完璧主義」と「瑣末主義」
    ・「細やか」と「細かい」
    ・成功の「原因」と「結果」の混同
    ・様々な能力の「バランス」
    ・「バランス」と「全体性」の獲得
    ・「対機説法」
    ・「知行合一」
    ・「知識」と「智恵」
    ・「経験」と「体験」
    ・「集中力」という基礎体力
    ・「人間通」
    ・「情報共有」から「情報共鳴」へ
    ・「操作主義」という過ち
    ・「聞く」と「聞き届ける」
    ・「正対」
    ・「一途」「一徹」
    ・「カオスの縁」
    ・「社員の自発性」と「企業の統一性」の両立
    ・「言霊」
    ・「教える」「育てる」から「育つ」へ
    ・「成長の方法」「こころの姿勢」を伝える
    ・「成長の目標」を持たせる
    ・「成長の場」を創る
    ・「セラピー」としてのマネジメント
    ・「エゴ」の存在を静かに見つめる
    ・暗黙知を伝える方法。「否定法」「隠喩法」「指示法」
    ・「MBWA(Management By Wandering Around)」「MBEC(Management By Electronic Community)」
    ・「テクニック」から「アート」へ

    ●これからの時代には一つの部門や部署だけで実施できるプロジェクトは少なくなり、異なった部門や部署が横断的に協働して実施するプロジェクトが増えていく。こうした時代において、現場は単独で「意思決定」をすることができなければならない。

    しかし、中央からの指示がなくとも、異なった現場が共同して意思決定を行い、円滑に協働作業を実施できるようにするためにするためには、社員一人ひとりの自発性と現場それぞれの自律性が高まらなければならず、そのためには、まず何よりも、全社員と全現場の間で十分な情報共有がなされていなければならないのである。

    そして、このことが、企業情報化の目的が、情報システム導入や情報共有を通じて社員の自発性を高め、企業の自律性を高めていくことであると著者が主張する理由に他ならない。


    ●平衡状態においては、分子は隣の分子しか見ていないが、非平衡状態においては、分子はシステム全体の分子を見つめている。そのとき、共鳴(コヒーレンス)が生じ、システム全体が自己組織化を遂げる

    ●企業というシステムにおいても、ただ情報システムを導入し、全社で情報を共有しただけでは、自己組織化は生じない。そのためには、単なる「情報共有」だけでなく、「情報共鳴」をこそ起こさなければならないのである。

    ●企業の自律性、すなわち自己組織性を高めるには、マネジャーは企業内での「情報共有」を徹底的に進めるだけでなく「情報共鳴」が起こりやすい状況を生み出さなければならない。そして、そのためには、何よりも、企業内に社員同士の「共感の場」を形成しておかなければならないのである。

    ●「ウィークリー・メッセージ」:週に一回、職場のメンバー全員が、短いエッセイのようなメッセージを作成し、これを他のメンバー全員に対して同報通信する。

    (ルール)
    1)何を書いても良い。必ずしも業務のことを書く必要はない。
    2)メッセージの内容を決してメンバー以外に決して転送しない。
    3)メンバーに対する誹謗、中傷、冷笑を決してしない。

    職場のメンバーの「相互理解」が深まる。この相互理解ということが「共感の場」を生み出すための絶対的条件。

    ●マネジャーと部下との間に共感が生まれるときというのは、いかなるときだろうか?それは、マネジャーの発想が「部下の共感を得る」という発想から「部下に共感をする」という発想に変わったときではないだろうか。

    ●いかなる計算もなく、いかなる駆け引きもない、一途さや、一徹さ。そうしたことが、マネジメントにおいて大切な価値とされる時代が回帰してくるのではないだろうか。

    ●企業とは高度な複雑系であると述べたが、複雑系の研究において「カオスの縁」ということが注目されている。それは、最も生命力溢れる現象は、完全な「秩序」(オーダー)でもなく、完全な「混沌」(カオス)でもない、その中間の「カオスの縁」とでも呼ぶべき精妙なバランスの領域に生じるからである。

    ●これからの知識集約型産業の時代においては、企業の統一性だけではなく、社員の自発性を高めるマネジメントが求められる。なぜならば、経営環境の急激な変化に対して迅速かつ柔軟に適応していくことが求められるからである。そのためには、これまでのトップダウン的な企業運営ではなく、社員一人ひとりの自発性を高め、企業が自律的に変化し、環境に適応していけるマネジメントこそが求められるのである。

    だが、そのことは、これからの時代におけるビジョンには矛盾した二つの役割が同時に求められることを意味している。すなわち、それを聞くことによって、メンバー全員が目指すべき方向を共有することができると同時に、メンバーそれぞれが、自発的に、そして個性的に、その企業の将来像を描くことができるビジョンが求められるのである。

    そのためには、語られるビジョンが、その企業の進むべき方向を示しながらも、メンバーの自由な発想を許すものであり、メンバーの想像力をかきたて、メンバーの自発性を引き出すものでなければならない。


    ●なぜ、現在の企業には様々なビジョンと称されるものが溢れているにもかかわらず、それらが魅力を持たないかを理解できる。それは、「言霊」が欠如しているからである。それらのビジョンを描き、それらのビジョンを語る経営者やマネジャーに深い信念が欠如しているからである。

    ●もし、信念を持ってビジョンを語ることがなければ、メンバーは自らの想像力を、そのビジョンに重ねることはない。なぜならば、マネジャーの語る単なる「願望」に、メンバーは決してついていかないからである。そして、マネジャーのこころの深くにある「迷い」は、優れたメンバーほど敏感に感じ取ってしまうからである。

    ●マネジャーがビジョンを語るとき、最も大切なことは、「何」を語るかではない。「誰」が語るかである。

    ●いかなる場合にも、新しい世代のリーダーは、旧い世代のリーダーとの心理的葛藤を経ることによってしか生まれてこない。だが、それは決して「猿山の猿」のごときリーダー間の争いを意味しているわけではない。それは、心理学的な意味における「対決」を、それも痛苦な「対決」を経なければ生まれてこないということを意味しているのである。それは、あたかも子供が親から自立していくプロセスに似ている。子供が闘っているのは、実は「親」と闘っているわけではない。自分のこころの中にある「親への依存心」と闘っているのである。そして、それは、マネジメントにおける次世代のマネジャーの自律のプロセスにおいても同様であろう。

    ●我々は、自らのこころの世界に光を得ているだろうか?

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