日本人のための宗教原論―あなたを宗教はどう助けてくれるのか

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198611682

感想・レビュー・書評

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  • 本当におもしろかった。
    この本で小室直樹先生を知りました。

  •  社会科学系学者の小室直樹氏による宗教原論。キリスト教、仏教、儒教、イスラム教の違いを解説している。日本人は日常生活の中で宗教を意識することは少ないかもしれないが、現代においても大きな影響を与えていることを指摘。
     上記の4宗教の中で日本人に一番なじみのないイスラム教が宗教としては最も分かりやすい教義をもっていることに驚き。他宗教の国家がイスラム教に改宗した事例は多いが、その逆は少ないという。小室氏はイスラム教が日本に入ってこなかったことを驚くべき事と指摘しているが、もし日本にイスラム教が入ってきていたら今頃どうなっていらだろうか?
     また、キリスト教の予定説が近代資本主義の原型となったというマックス・ウェーバーの説についても分かりやすく解説。米国のキリスト教保守派と市場原理主義者が重なるのも、キリスト教が資本主義の母体になったことを裏付けなのだろう。もし、カソリック教会が堕落しなかったら、宗教改革が起きなかったら、一体世の中はどうなっていただろう?宗教の影響は計り知れない。
     宗教が世界に大きな影響を与えている一方で、日本では様々な宗教や時の為政者の意図が入り混じり、自分達自身のアイデンティティが揺らいでいる。小室氏は理由なき凶悪犯罪の増加やカルト宗教の登場もアノミー(無規範)の蔓延が原因と指摘。最近、日本で起きている様々なデモはきっかけは様々だが、ある種の連帯を取り戻そうとする反作用なのかもしれない。

  • 小室直樹さんの本は何冊か読んでいるが、どれもすごい。ここまで断言していいのかというほど、明快な切り口と論理。
    本書は、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教、仏教、儒教の成り立ちの歴史、論理構造、そしてそれから影響を受ける人間の文化、思想の特色について鮮やかに解き明かしてくれる。
    特に他の著作でも解説されていた、キリスト教の思想がいかにして資本主義を生み出したかという点については、今回、他の宗教との比較において、いっそう納得感を感じた。
    さらには、日本独自の宗教観についても一刀両断。神道をベースに仏教などの宗教をロジックを分解して吸収したその柔軟性。明治以降ではそこに天皇を現人神として祭り上げて作り出した天皇教。戦後、天皇制が崩壊したことによるアノミーの発生。それが現代日本の精神的混乱の原因のひとつであるという指摘は私には新しく、思わず唸ってしまった。

  • 個人的に覚えておきたいことを雑多に。

    <全体>
    ・宗教=行動様式(ヴェーバー)。神や仏の有無は関係ない

    <キリスト教>
    ・「イエスは主であると口で言い表し、神はイエスを死から甦らせたもうたと心で信ずる」(117)だけでよい。行動規範はない
    ・パウロによって信仰(内面)と行動(外面)が切り離される
      →予定説によって神に選ばれたと信ずる人々が新法を設立していく
      →資本主義の精神が醸成されていく
    ・隣人愛を説くが異教徒に対してはこの限りではない
    ・ファンダメンタリストはキリスト教にのみ存在する
      ∵聖典を徹底的に信じ、かつその信仰のみを問うこと、だから
      ∴「イスラム原理主義」は存在しない

    <イスラム教>
    ・コーランを全面的に信じイスラム法を遵守して初めて教徒に
    ・イスラム教国ではコーランと法律が一致する
    ・ジハードによる戦死は自動的に天国行き

    <仏教>
    ・仏は存在しない。絶対的なものは法(ダルマ)のみ
    ・煩悩をなくし解脱して涅槃に入ることが目的


     日本は本当にアノミーに陥っているのだろうか。学校や就職活動など、「連帯」を常に求められる場でこれまでの人生の多くの時間を費やしてきたおかげで、その「外側」が見えていないのかもしれない。
     その疑問について考える例として、先日の震災が挙げられると思う。「がんばろう日本」「自粛ムード」「節電」などといった言葉が、日本人全体の連帯感を引き出しつつあるように見える。しかしこの連帯感はどこか表層的ではないだろうか。アノミーを解消するほどの「宗教」たりうるのか。不祥事を起こした者に対する、即座に辞任せよ、との大合唱からは、日本の将来に対する思考停止が透けて見え、結局はその場しのぎの群れ合いという感がある。このことはアノミーの証拠と言い得るのではないか。

  • 分かり易いが鵜呑みにするのもいかがなものか。

  • 多少、宗教のことはわかっているつもりでしたが、実は全然わかっていなかった、ということが認識できました。
    宗教とはこの上なく恐ろしいもの、しかし、社会にとっては欠かせないもということも理解できました。
    個人的には仏教の「空」を始めてわかったような気にさせてもらえました。

  • 比較宗教社会学の入門書
    宗教に関することは文系学問の探求にはほぼ必須な知識だと気づかされた

  • 宗教というものを学ぶ上では多大な書物や歴史を学ばないと本質部分には辿り着けないと思う。
    しかし、小室直樹による本書は一冊の内容で各宗教の本義、世界観、歴史背景、本質部分をあますことなく見事に論じている。
    これだけの内容であれば、小難しい記述になるのが常だが記述面に関しても大変わかりやすい内容であり、内容も決して阻害されていない。
    宗教をきちんと知る上では絶対に外せない一書だろう。

    全てのレビュー

  • とにかくわかりやすい。日本人は宗教に疎いが、人類の歴史あるいは現代社会を見る上で宗教は欠かせない。宗教に関して興味があるなら、先ずこの本を読んで、その上で高度な専門書を勉強することをおススメする。

  • 世界の人々はこの世は苦しいから来世はいいところへ行きたい
    日本人はこの世が一番来世なんかない

    仏教・・実在論を否定。人間の心の外に実在するものは何もない。

    religion繰り返し読む

    マックスヴェーバー
    宗教・・エトス・・行動様式

    存在論オントロジー

    人間が生きるために神を利用する・・・×

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著者プロフィール

1932年、東京生まれ。京都大学理学部数学科卒。大阪大学大学院経済学研究科中退、東京大学大学院法学政治学研究科修了。マサチューセッツ工科大学、ミシガン大学、ハーバード大学に留学。1972年、東京大学から法学博士号を授与される。2010年没。著書は『ソビエト帝国の崩壊』『韓国の悲劇』『日本人のための経済原論』『日本人のための宗教原論』『戦争と国際法を知らない日本人へ』他多数。渡部昇一氏との共著に『自ら国を潰すのか』『封印の昭和史』がある。

「2023年 『「天皇」の原理』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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