風神秘抄

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (590ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198620165

感想・レビュー・書評

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  •  RDGを読み終え、その後でずっと以前に購入してまだ読んでいなかったこの本を読み始めた。いやぁ、入り込みました。久々に本の世界に入り込んでいく感覚を味わえた。RDGよりも、この感覚は強いかもしれない。これは素晴らしい小説だ。
     登場人物は何となく、RDGの泉水子と深行を逆転させたような感じだ。草十郎は泉水子のように自らの能力を知らない。糸世は深行のようにある程度は知っており、草十郎を導く存在だが、二人で一つの能力を発揮できる。だが、RDGよりも恋物語的な要素が多くあって、なかなかこれが良い。
     後半はほとんど「黄泉くだり」の様相を呈する。ちょうどオルフェウスの神話のようである。冥界までは行かないが、その間際にまでは行き、そして糸世を取り戻す。それが最後の最後にやっと出て来るので、正直ひやひやした。果たして糸世は帰ってこれるのだろうかと心配になったほどだ。
     いやはや、良い作品だった。多くの賞を受賞したようだが、それも当然だろう。

  •  鎌倉に行く前に図書館で借りた本だったけど、これがたまたま源氏に関わるお話だったのでタイミングがよかった。とても面白く読めた。

     主人公の草十郎は武士でありながら、笛に親しみ鳥と言葉を交わすこともできる。つまり、腕は立つし、イケメンだし、不思議な力も持っているんだけど、不器用でひたむきなところが好感がもてる。恵まれた才能がちっとも鼻につかない。鳥彦王とのかけあいも面白かった。
     糸世ちゃんはとにかくかわいかった。ちょっとツンデレの気がありますね。日満や、幸徳も好きだった。キャラがみんなよかった。
     実在の人物で一番濃かったのはなんといっても後白河でした。荻原さんたら、おBLの匂いを吐き気がしない程度に匂わせるのがホント好きねぇ。
     義平もすごく魅力的だったのに、すぐ死んじゃって残念。

     荻原さんの作品は、語彙が豊かなのに少しも難解ではなく、すっと頭に入ってくる。そして、すごく綺麗な日本語だ。
     若い人に向けた小説って、若い人が使うちょっと崩れた言葉を安易に選びがちだけど、そういう言葉はすぐに古くなる。大人になってから読み返したとき、その魅力は薄れてしまう。一生大事にしていける物語は、きっと一生古びない言葉で書かれているものなのだと思う。

     この後、草十郎はどうなったのだろう。頼朝の旗揚げに参加したのかな。荻原さんのあとがきからは、草十郎=足立四郎遠元? のような感じを受けるけど、足立遠元の息子に足立遠光というのがいたみたいだから、こっちが草十郎なのかな。
     ……などなど、いろいろ想像してみるのも楽しい。

  • 勾玉3部作のスピンウト的な作品。
    善くも悪くもファンタジーだったという印象です。

    16歳の少年、草十郎が主人公。16歳という年齢だから仕方ないのか、とにかくいきあたりばったりで猪突猛進に物語を進めていく。
    戦場が舞台でもあるのに生や死の重みは感じられず、主人公の生まれもった特別さだけが強調され、共感や感動できる場面は全くありません。
    それが勾玉にも共通するこのファンタジーの作風なのでしょうが。

    そういった部分を排除した物語はまとまりがあり、人物(カラスを含め)が綺麗に描かれています。この世の物ではないファンタジーの世界そのままで、昔話を聞き終えたような読後感です。
    話としては面白く、一気に読んでしまいました。

    勾玉は中高校生の時に読みました。
    神話や古事記に興味もあったことから大好きになり、なんと壮大で美しい物語かと思ったものです。
    この作品も10代で読んだなら感想が違ったのかなと思います。

  • 荻原作品に対する拭いきれない苦手意識を抱えつつもこの作品の舞台となっている時代設定に興味をもち手に取ってみました。  そんな「おっかなびっくり」の読み出しではあったものの、最初の数ページであっという間にこの物語の世界観にどっぷりと浸っていました。  これまでの荻原作品ではかなり強烈に感じ、KiKi の苦手意識を醸造してくれちゃっていたあの「少女マンガチックさ」がこの作品ではほとんど気になりませんでした。  そして、彼女が描く精緻な情景描写が、さながら「平安絵巻」のような、又は「曼荼羅絵図」のような美しさを思い起こさせ、耽美的な感動さえ呼び起こしてくれちゃったのです。  うん、うん、この作品は良い!!

    物語の中で出てくる「曼荼羅曼殊(まんだらまんじゅ)」というものがどういうものなのかは実際のところよくわからないんだけど(^^;)、感覚の世界でそれを観たような気分になった・・・・・とでも言いましょうか。

    この物語、本来の主人公は人間である草十郎と糸世(いとせ)なんだろうけれど、個人的にはカラスの「鳥彦王」がツボでした。  現代社会ではどちらかというと毛嫌いされがちなカラスだけど、この物語を読了した今、カラスを見ると何だか「神聖さ」を感じちゃうような気がしないでもない・・・・・ ^^;  と、同時に日本人にとってカラスって元々はどういう存在だったのか?が気になり始めてきました。 

    (全文はブログにて)

  • 勾玉シリーズの残滓…落ち武者&遊女なんで色々リアルにエグいけど青春初恋物語。少年頼朝やキモかっこいい後白河上皇が彩りを添える源平前夜な中世ファンタジー。最後のほう微厨二で微世界系…でもって面白かったぁ。

  • 面白い!荻原さんは和風ファンタジーが一番面白いと思う。なんて胸がときめくんだろう。

  • I kept avoiding reading this book because I knew it was going to be a challenge to read... but I finally just decided to pick it up and start reading it.

    I am so glad that I read it. It just gave me a huge reminder why I'm such a big fan of 荻原則子。The way she's able to spin these magnificent stories is simply astounding.

    In this story, you have a character, 草十郎, who's struggling to find a way to live, his purpose in life and why living is so important. His journey lets him interact with many people those including 鳥彦王 and most importantly, 糸世, who not only shows him how to keep living but becomes the reason why he wants to live.

    Really sad that he's unable to talk to 鳥彦王 in the end, but their friendship is too strong for loss of words to get in the way.

    Great story, I highly recommend it! Can be read separately from the 勾玉 trilogy (which is a relief because I haven't read 白鳥異伝 or 薄紅天女 yet).

  • 好きですね〜、こういう作品。勾玉シリーズよりも時代が下っているせいなのか、非常に読みやすかったし。スタジオジブリでアニメ映画化して欲しい。絶対良い作品できますって。草十郎みたいに好きな人のために、迷ったりはしつつもまっすぐ行動できるっていうのは羨ましい限りです。私は音楽に関してはまったくの門外漢でセンスもなにもないのですが、読み終わると音楽や舞の持つ神聖性というのでしょうか、この世ならざるものと繋がる感覚に触れられた感じがします。世界中、どの土地でも音楽や踊りが神事と関わっているのも偶然などではないのでしょうね。……一定のリズムで精神が…とかそういう話は言いっこなしです。鳥彦王のキャラが良かったですね。人間のことを知るためにお前のところに来たんだなんて最初に言いますが、神懸かった主人公二人よりもなんだか人間臭く感じてしまうのはナゼ?許婚3人(?)に頭を悩ませて、「しゃべらない雌の子と平穏な巣が持ちたいよ」なんて台詞は実感をもって同情する人もいるのでは?(笑)。その許婚の姫たちもいい性格していたし。

  • 予想もしてなかった勾玉3部作の鳥彦の子孫が登場~。
    この鳥彦王が素敵な人なんですよ!じゃなくて素敵なカラスなんですよ!
    手違いで定められた3羽の許嫁もいいですね。イヤぼやいている鳥彦王のいうとおりキッツいものはあるんですが(笑)。
    散々女子への心得を語って見せたのは伊達でも耳年増でもなかったですね。苦労してるなあ鳥彦王…頑張れ~。妃を誰にするのかとっても楽しみです (^_^;。
    話はまあありがちといえばありがちで、惹かれ会う男女が離されてしまうものの苦労の末にまた出会う、という物語なのですが、先が読めるというのにワクワクして話を読み進めたくてたまりませんでした。
    出てくる登場人物(カラス含め)がとてもいいのです。
    戦に参加した後盗賊に拾われ、糸世と出会い、力を欲するようになった末に糸世を失って、糸世を取り戻す旅に出て~という話の流れにすっかり夢中になってしまいましたけど、この話も元はといえば源氏方の闘いから始まってたんですよね。その武士だった部分と笛を追及していく草十郎とにちょっと違和感を覚えていたのですが、再会した齋藤別当とのやりとりでその部分がつながったことが理解できました。
    武士ですね武士!武士の一分ですよ!
    そして糸世。糸世がまあかわいいのなんのって。
    小生意気で口が達者で覚悟があって肝も据わってて素直で健気で剛胆で意地っ張りで誇り高くていじらしい――て、かわいらしいにも程がありますね。

  • もう荻原さんのファンタジーに欠かせない
    日本神話的・少女浪漫的な要素がいっぱい詰まった作品。

    少年少女の大きなうねり人為・人外問わず起こされる
    すれ違いにワクワクする気持ちが、この年になってもムクムクと…!!
    草十郎の齢の割に色ごとに鈍感で、
    なのに無意識の"たらし"っぷりに「コラ!」と思いつつ
    恋しい糸世に貫く真っ直ぐすぎる想いにハラハラ。

    後半は2人のすれ違いのヘビーさに滅入ってしまいそうな位だけど、
    それを憂鬱な重さだけにさせない鳥彦王(人語を話すカラス)の
    軽快さがテンポよくすらすら読めてしまいます。

    ただ、同作者の勾玉シリーズに比べて個人的に
    何か一味欠けるなぁ…と物足りなさを感じたのは
    少女的な展開に偏り過ぎて、序盤に匂わせた源平の動乱や
    神話を絡めた伝奇の面がさほど充実しなかった事が原因かも…。

    せっかくこの時代設定なのだから、
    恋愛ベースでも微量の血なまぐささを出しても良い位かと。

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著者プロフィール

荻原規子・東京生まれ。早稲田大学卒。『空色勾玉』でデビュー。以来、ファンタジー作家として活躍。2006年『風神秘抄』(徳間書店)で小学館児童出版文化賞、産経児童出版文化賞(JR賞)、日本児童文学者協会賞を受賞。著作に「西の良き魔女」シリーズ、「RDGレッドデータガール」シリーズ(KADOKAWA)『あまねく神竜住まう国』(徳間書店)「荻原規子の源氏物語」完訳シリーズ(理論社)、他多数。

「2021年 『エチュード春一番 第三曲 幻想組曲 [狼]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

荻原規子の作品

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