火の闇 飴売り三左事件帖

著者 : 北重人

• 徳間書店 (2009年12月16日発売)

作品紹介・あらすじ

武士を捨て、飴売りとなった三左。腕が立ち、肝も据わり、頼りになる。市井のもめ事・難事件を鮮やかに処理。殺人事件の下手人捜し、敵討ちの助っ人、よろず決着。

感想・レビュー・書評

[タマキン君さんの感想 · 2021年7月21日]

シンプルな文章でうまい。でも，藤沢周平や宮部みゆきの時代物にはまってしまった私には，少しあわない感じがしました。本当にこれから円熟していく方だったのだろうな。遺作なのですね。合掌。

[orchidstarさんの感想 · 2013年2月12日]

飴売り三左こと土屋三左衛門は、元は腕の立つ武士だったが、家中の派閥争いに巻き込まれ、嫌気が差して武士を捨て、江戸で飴売りをしている。
本書は三左衛門を主人公とした、「観音のお辰」「唐辛子売り宗次」「鳥笛の了五」「佛のお円」「火の闇」の５編からなる短篇集である。
第１編「観音のお辰」の序盤で三左衛門が元は武士であったことと、妻の小紋は同じ家中の後輩の想い人であったことが明かされるが、その詳しい経緯はまだ語られない。各編は「飴売り三左事件帳」という副題のイメージとは異なり「難事件を解決する」という事に重点を置いた話ではなく、むしろ登場人物それぞれの心意気、思い入れ、優しさ、懸命さなどが伝わってくる人情話という印象が強い。
三左衛門の現在に至る経緯が一気に明かされる最終編の表題作「火の闇」は、短編ながら読み応えがある。
三左衛門が国元から江戸に出てきて御家騒動に巻き込まれ、親しかった後輩八瀬与十郎が無実の罪で詰め腹を切らされた際に介錯をすることになり、自らの命も危うくしながらも、与十郎の遺志を継いで御家騒動を収め、託された想い人を妻とする。与十郎の思いを大事に抱えている三左衛門を通して、逝った人々の思い、残された人々の思いを大切にする事が語られている。読後感の爽やかな一冊である。本作が著者の絶筆となり、続編を望めないことがつくづく残念。

[ena1203さんの感想 · 2010年2月25日]

武士を捨て飴売りをしながら見事に難事件を解決する三佐。温かい時代小説。

[adgさんの感想 · 2010年1月20日]

三左の続きがもっと読みたかった