桃ノ木坂互助会 (文芸書)

著者 :
  • 徳間書店
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感想 : 57
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  • Amazon.co.jp ・本 (311ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198637507

作品紹介・あらすじ

のどかだった町は、すっかり変わってしまった――。移り住んできたよそ者たちの度重なるトラブルに頭を抱えていた桃ノ木坂互助会会長の光太郎。元海自曹長でもある彼は、町に害を及ぼす人物を仲間たちとともに次々と町から追放することに。次なるターゲットは、大家とトラブルを起こしていた男、武藤。しかし、男を狙っていたのは光太郎たちだけではなかった。とある事件を機に、互いの思惑は狂い始め……。江戸川乱歩賞作家の書下しミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 相変わらず、じいさんが良い味出す。ちょっと違う種類の女の子も描いた昨日を読んでみたい。

  • ───冒頭
    雨気を含んだ重い風が、住宅街をうねりながら吹き抜けていく。熊谷光太郎は飛びそうになったハンチングを押さえ、五月の空を仰いで目を細めた。分厚い層になったねずみ色の雲は、さっきよりも汚らしく赤味を帯びはじめている。湿った風を吸い込んだとたんに得体の知れない苦みを感じてむせ返った。


    素直に満足できる面白い作品だった。

    長く生まれ育った桃の木坂町を健全なまま残していくために老人で結成された桃の木坂互助会。
    なかでも“特務隊”は、言うことを聞かないよそ者やルールを守らない若者を排除するために存在する。
    その町に新しいターゲット、常識も倫理観もない男、武藤がやって来た。
    今までと同じように彼を排除しようと画策する特務隊だが、事はそう簡単には進まなかった------。

    有川浩の「三匹のおっさん」にサスペンス性を加えたような作品。
    愉快性を持ちながらも緊張感のある展開がページを捲らせる。
    文章も巧みで、情景描写やキャラクタの表現も非常にしっかりしている。
    最後のどんでん返しもなかなか秀逸。
    とてもデビュー三年目の新人とは思えない、瑕疵の少ない作品だった。

    著者は「よろずのことに気をつけよ」で第57回江戸川乱歩賞を受賞。
    この小説は純粋な推理小説ではなく、これまでの作品数もまだ少ないが、読後の爽快感は十分に満足できるものだ。
    川瀬七緒。将来が楽しみな作家がまた一人増えた。

    • 九月猫さん
      koshoujiさん、こんばんは♪

      川瀬さん、おもしろいですよね。
      この方の書かれる会話文が、すごく楽しくて大好きです。
      自分のリ...
      koshoujiさん、こんばんは♪

      川瀬さん、おもしろいですよね。
      この方の書かれる会話文が、すごく楽しくて大好きです。
      自分のリズムに合うみたいです。
      単行本では未読が「よろずのこと・・・」だけなのですが、
      一冊しか残ってない~と思うと勿体なくて読めません(笑)

      「桃ノ木坂」は最初、光太郎たちの活動が過激で共感できずに
      もやもやしていたのですが、沙月が出てくる辺りからおもしろくなってきて。
      沙月と老人たちの会話がやはりツボで、クライマックスはどきどき、
      お姉ちゃんにはほろっときて、最後の〆は明るい。
      終わってみれば大満足でした。

      法医昆虫学シリーズもおススメです。
      もしまだ読まれてなければ・・・そして、
      虫があまりニガテでなければ、ぜひ♪
      2014/06/04
    • koshoujiさん
      九月猫さん、こんにちは。
      「桃の木坂互助会」とても面白い作品でした。
      川瀬さんは法医学シリーズが有名なようですね。
      虫はあまり得意では...
      九月猫さん、こんにちは。
      「桃の木坂互助会」とても面白い作品でした。
      川瀬さんは法医学シリーズが有名なようですね。
      虫はあまり得意ではありませんが、近いうち、チャレンジしてみたいと思っています。
      2014/06/06
  • 桃ノ木坂町の老人たちの町内活動の会、それが桃ノ木坂互助会。通称「桃互助」。
    実はその中に会員たちも知らない「特務隊」の存在が!町の秩序を乱すよそ者たちを排除するため過激な行動も良しとする、曹長こと光太郎率いる組織。
    というと「三匹のおっさん」を思い出すけれど、こちらはもっと手段選ばず。
    その正義は独善的で、痛快どころかもやもやしてしまう。

    もう一方の軸となる沙月の「幽霊代行」は、ダークな仕事人。
    こちらももちろんワケあり。対象は女性の敵のDV男なので、がんがんやっつけちゃって!と言いたいところだけど、最終的に対象を追い込む先が「死」なので、やはりやりすぎ感が。

    この双方の今回のターゲットが同じ人物(極悪!)だったことから、お話は絡み合いひとつになっていく。ここからぐいんぐいん引き込まれる展開に!

    事件や犯人は凶悪なのに、沙月や光太郎・清司の会話がぽんぽんとしていて、終わってみれば何だか明るい。読み始めは「ん?」と思ったけれど、やはり川瀬さんらしい。面白かったです。

  • 古き良き町を守ろうと、ひそかに結成された老人たちのチーム。彼らの目的は有害な人物の排除。……お年寄りと侮るなかれ。なかなかこの手段は地味に効きそうだなあ。
    一方で、DV被害を受けた女性のための「幽霊代行コンサルタント」としてターゲットを追い詰める姉妹。彼女たちのターゲットと老人たちのターゲットが重なり、そこから引き起こされる厄介ごとの数々はかなり緊迫感いっぱいで読みごたえありでした。ターゲットが追い詰められていく様子にも、爽快感が。
    そしてラストで明かされた意外な事実! これには驚かされました。まさかあの人が……。

  • 町の異分子と断定した余所者を特務隊として町から追い出す。中々の暴走老人達と怪しげな幽霊コンサル業の沙月の手口に最初は上手く入り込めませんでしたが、後半一気に話が進んで面白かったです。

    昨今の排他的な世の中の感じがとてもリンクしますが、2014年の作品なことに驚きました。

  • 川瀬さんの本なので読んでみた。街の異物を嫌がらせで追い出すという嫌な設定の話だったが、後半は川瀬さんらしいまとめ方で、嫌な話の流れを盛り返した作品という印象。光太郎と沙月の絡みは良かった。

  • のどかだった街を取り戻すため、特務隊と称して街の厄介者を追放する老人たち。

    最後まで「老人vs厄介者」の構図で物語が進むのかと思いきや、途中から思わぬ横やりが入ってきたり、ターゲットの男がとんでもなかったりで、そう単純ではない展開に。本来なら正義側に立つはずのご老人方の暴走っぷりもエグくて、なかなかの苦味でした。ある意味新鮮で面白かったのだけれど、登場人物が皆が皆、共感しづらいことになってしまっているので、読み進めるのがちょっと億劫になりがちだったかも。それでも、最後のオチは驚いた。すっかり騙されてしまいました。
    川瀬さんの作品では、赤堀涼子シリーズがとにかくイチオシですが、今回の作品でまた違った引き出しの中が見られて良かった。ますます楽しみな作家さんとなりました。

  • おもしろい。ラストのハラハラ感良い感じ。町内会の軽い話と思っていたが、裏切られて良かった。これからも会長に頑張ってもらいたい。「道徳と現実が一致しているのは、小学生ぐらいまでじゃないのかな。ずっと同一線上にある人って、聖人かすごいアホかのどっちかと思う」

  • 最初はこの2つの物語をどうやって絡めて物語を着地させるの…?無理じゃない?てか、途中から話変わったのか?と思いながら読むも、綺麗に回収されていって驚き。最後はまさかあの人が!?って感じでさらに驚かされた。こんな町は住みたくないし行きたくもないが、こういう形で客観的にみるのは面白い。

  • すごく面白かった。沙月と光太郎の切れのいい心の探り会いや、病的な行動に対しての分かりやすい指摘等、内面の描写に興味を引かれました。菊美の行為も
    驚きだし、ほんわりした表紙が事件の現場なのも全く気づかなかった。

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著者プロフィール

1970年、福島県生まれ。文化服装学院服装科・デザイン専攻科卒。服飾デザイン会社に就職し、子供服のデザイナーに。デザインのかたわら2007年から小説の創作活動に入り、’11年、『よろずのことに気をつけよ』で第57回江戸川乱歩賞を受賞して作家デビュー。’21年に『ヴィンテージガール 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介』(本書)で第4回細谷正充賞を受賞し、’22年に同作が第75回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門の候補となった。また’23年に同シリーズの『クローゼットファイル』所収の「美しさの定義」が第76回日本推理作家協会賞短編部門の候補に。ロングセラーで大人気の「法医昆虫学捜査官」シリーズには、『147ヘルツの警鐘』(文庫化にあたり『法医昆虫学捜査官』に改題)から最新の『スワロウテイルの消失点』までの7作がある。ほかに『女學生奇譚』『賞金稼ぎスリーサム! 二重拘束のアリア』『うらんぼんの夜』『四日間家族』など。

「2023年 『ヴィンテージガール 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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