遠い日の呼び声: ウェストール短編集 (WESTALL COLLECTION)
- 徳間書店 (2014年11月12日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198638863
作品紹介・あらすじ
ひとりきりでいた夜に、パラシュートで降下してきた敵兵を発見してしまった少年は…?(「空襲の夜に」)。家にとりついている不気味な存在に気づいた猫たちは…?(「家に棲むもの」)。英国の児童文学を代表する作家であり、短編の名手としても知られたウェストールの、珠玉の短編9編を集めました。『ウェストール短編集 真夜中の電話』と合わせ、ウェストールの短編のベストセレクションとなります。徳間書店の子どもの本・二十周年記念作品。
感想・レビュー・書評
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徳間書店児童書20周年記念のウェストール短編集第二弾。原田勝氏訳の「真夜中の電話」も素晴らしかったけど、こちらも負けず劣らずのクォリティ!!一つ読み終えるたび余韻に浸り…を繰り返し、じっくりじっくり時間をかけて味わいました。原田氏訳はワイルドさが魅力だったけど、野沢さんセレクトは女性らしく繊細で、様々な感情が折り重なった、ウェストールの強さと優しさを感じさせる作品ばかりだ。ウェストール作品には珍しい?女性が主人公のものもいくつかあり、どれもキャラクターが素晴らしい。ウェストールは女性を描くのが苦手と評されたこともあったようだが、そうか~?と反論したくなるほどよかった。特に「ヘンリー・マールバラ」のジラ。自己中心的な女性と見る人もいるかもしれないけど、望まない結婚をした彼女が自分の生き方を模索する過程は、日本の女性にも共感できるのではないかと思う。
そして、ウェストールらしく猫が活躍する作品もまた印象的。ユーモラスでありながらどこか哀しかったり、怖かったり、ほのかに甘酸っぱかったり…一言で「こんな話」とは説明しにくい、複数のテーマを内包しているのが本書の特徴かなと思う。いくつか描かれている、父と子の心の乖離が何ともほろ苦く、深く心に刻まれた。こういうウェストールのシビアなところ…いい意味での容赦なさが、むしろ誠実さを感じさせるのだ。
今回は図書館から借りて読んだのだが、買ってもよかったな~。それほど気に入りました。他の未訳の短編も、出し惜しみせずどんどん出版して欲しいと心から思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ウェストール節絶好調!という感じの短編集。
長編でも繰り返し描かれた戦争の欺瞞、正義の移ろいやすさ、勝手な思い込みから突き進んだものの裏切られる話、父と子の断絶などが描かれている。
そしてやはり長編でも描かれた幽霊、賢く強い猫、バトル・オブ・ブリテンなども出てくる。
ウェストール好きにはエッセンスが凝縮されたようでたまらない。初めての人も、ウェストールという作家がどんな作家かわかる内容だと思う。
これには強く賢く勇気のある猫の物語が3つ入っていて、猫好きにもお勧めしたい。
戦争の正義を問う「アドルフ」「空襲の夜に」、『海辺の王国』『猫の帰還』的な「ヘンリー・マールバラ」、『青春のオフサイド』的な「遠い夏、テニスコートで」などもいいが、「じいちゃんの猫、スパルタン」は特に好き。 -
(15-10)まさに「珠玉の短編集」!ちょっと不気味だったり、不思議だったり、そんな話が多かった。親子関係もいろいろ考えてしまう。
短編ゆえの不満も。これで終わっちゃうの?その後の話を聞かせて!という話ばかりなんだもの。おかげで私の癖をすごく刺激してくれ、妄想が突っ走っちゃいました。一番気に入ったのは表紙にもなった「じいちゃんの猫、スパルタン」かな。絵を描いたのは宮崎駿さんです。 -
ウェストール短篇集。こちらは戦争をテーマにしたものが多い印象です。あと、猫が出てくる物語も多いかな。
お気に入りは、やはりホラー好きとしては「家に棲むもの」。このタイトルだけで読みたくなってしまいますよ。この「もの」はなかなかに恐ろしいのですが。猫の最強っぷりが素敵すぎます。
「赤い館の時計」もホラーチックな物語。でもなんだか素敵ですね、この時計。ちょっとほっこりする物語でもあります。
「ヘンリー・マールバラ」は決してホラーではないのですが、憑かれた人の物語という気もしてしまいました。まったく何も知らない「ヘンリー・マールバラ」という人物に思いを寄せるジラの姿には、読むごとにどんどん不安をかき立てられます。いったいどうなってしまうのか、とてもはらはらさせられました。 -
面白い。ウェストールという作家は、どの作品も、繊細な心の動きをドラマとして成り立たせるのがすごく上手くて、一つ一つの作品にしっかりとしたテーマ性がありながら、ストーリーに引き込んで深い余韻を残す。日常の事件、青春の思い出、戦時の苦い記憶、子供から大人への変化。ホラーま全部よいですが、『ヘンリー・マールバラ』『赤い館の時計』が好みだな。
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何故表紙宮崎駿・・・!!?
と思ったら、なんかこう・・・世界観は似てたな・・・ -
どの短編も素敵だったけれど、「アドルフ」・「家に棲むもの」・「ヘンリー・マールバラ」・「赤い館の時計」が特に気に入った。
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近所にすんでいるおじいさんの名前はアドルフ。おじいさんの買い物を頼まれたぼくは、奇妙な言動に翻弄される。あのヒトラーを思わせるそのおじいさんのことを、学校で話したことから取り返しのつかないことに…。
人の心の闇を描く物語や、日常に忍び寄るこの世ならざる者の話。短編の名手ウェストールは、目の前に鮮やかに情景を浮かび上がらせます。 -
この方の「かかし」を気になっていたけど、読んでませんでした。今回、短編集「真夜中の電話」を読んで面白かったので、こちらも読みました。表紙絵が、宮崎駿ですよ。児童書だけど、大人の女性の自立の話など面白かったですよ。