眠れない夜は体を脱いで (文芸書)

著者 :
  • 徳間書店
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感想 : 81
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198643454

感想・レビュー・書評

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  • 自分が自分であるために、人は何かを隠し、抑え、周囲から求められるものに応えようとしながら、自分の居場所を探し続けるものなのかもしれない。本当は、無いものにしている何かが、裸の自分であることに気づかずに…。苦しい時、淋しい夜、無意識に作り上げ、演じてきた自分という枠組みから離れ、期待される役割から自分を解放し、自分を覗く行為が私にも大切だと思う今日この頃。できれば掬い取った自分の気持ちは、ちゃんと誰か大事な人にも汲み取ってもらうと、力になるよなあ。彩瀬まるさん、久々だったけど良かった。

  • 深夜の掲示板を舞台にそれぞれの思いが連なる連作短編集。彩瀬まるの小説はいつもタイトルと装丁がきれい。

  • 何気なく日常を繰り返して、そこにあるもの、起こるものだけが自分を作り上げる。それは思い込みであって、誰しもが表現したくても出来ないものを持っている。自分自身を素直に受け止めることへの勇気。結構シビアな感じのことも、さらっとした嫌みのない優しさを感じさせるのは彩瀬まるさんらしさ。「眠れない夜は体を脱いで」というタイトルも素敵です。

  • 「手が大好きなので、いま起きてる人の手の画像ください!」というスレでつながっていた連作短編集。

    タイトルが印象的だなと手に取りましたが、どの話もこのタイトルがしっくりくるものでした。

    性や時代、生と死など様々なもので悩んだり苦しんだりする人はこれらの登場人物たちと同じように現実にもたくさんいて、物語を通して救われる部分も数多くあると思いました。

    印象に残ったのは『ままならない』という言葉。
    ままならないから時にもがき苦しむこともあるけど、その中でどう生きていくかってことが現実に生きる私たちに大切なことなのかも。

    個人的には1話の男子高校生が好きです。がんばれ。
    きっとどの話も誰かのままならなさを救ってくれるものになっているんじゃないかな。

  • ぜんぜん印象がない。

  • 私の中で、どうもホラーっぽくて、表現がややくどいイメージのあった作家さんだったけど、この一冊には心を激しくつかまれた。若い男女の機微だけでなく、おじさんおばさんの微妙な心理の描き方がなんて繊細なんだろう。わかりやすくて、心にすっと入ってきて、キーフレーズがどんと響く感じ。とても筆力のある作家さんだと思った。どのエピソードも読後感がよかったけれど、特に「鮮やかな熱病」がすてき。

    大人も子どもも、常にさまざまな肩書きを背負っていて、生きていくにはなんとなくみんなが思っているイメージや役割を守らないといけないような雰囲気がある。でもこの連作集は、つらくなったらそういうのをちょっと脱ぎ捨ててもいいんじゃない?と背中を押してくれている気がした。

    固定観念やイメージ、見た目の印象など、人は生きていく上でさまざまなものに捉われがちだけど、100人いれば100通りの生き方がある。それぞれの個性を受け入れ、認め合えるような人になりたいものだと思う。

  • こんなにタイトルがしっくりきて
    余韻を残す作品は初めてだな。

    ちゃんと生きている人たちがそこにいて
    嫌なところもあるけれど、優しくて
    見えていなかったものや、見る気のなかったものに
    触れて強くなっていく柔らかな希望が広がっていく
    物語だった。好きだなー。

    希望に当てられて、しんどくなることもあるけれど
    この作品の希望はほんのりと灯る光のようで
    苦しさをもたらさなかった。

  • この手をいつか貴方と繋げたら。

  • 連作短編のお手本のような見事な1冊。伏線回収がばっちり決まって心がすっとする。物語事態を感動する部分と別のところで、「1本とられた」的清々しさをしっかり味あわせてくれる。

    ミステリーではない(そういう要素を含んだ作品もあるが)ので、伏線回収だけが上手く行っても仕方ないわけであるが、そこはそこ、1つ1つの収録作品の出来も良い。イケメンに生まれた葛藤を書く話、死んでしまった短編映画のヒロインとの葛藤を描く話、ド真面目おじさんのちょっとした再生話…。俺は特に合気道にのめり込む女性の話が好き。

    合気道にはまるという設定もいいし、そこに「女性」であることを少し疑問視する主人公をたてるのもいい。合気道のステージが上がるにつれて、処世術も力づくではない受けて流せるスキルをつけていく過程の描き方が上手いなぁと思うのだ。

    来世を信じる方ではないが、次にのめり込むならラグビーと合気道かなぁ、とか、それはこの本と全然関係ないこと

  • 彩瀬マジックにすっかりやられた。
    彩瀬さんの静かに流れるような文章に心をぎゅっと掴まれた。

    真夜中のネット掲示板上で繋がる連作短編集。
    世の中はなんて儘ならないことが多いのだろう。
    顔や性別、年齢等、思い通りにいかずジタバタする主人公達の短編一つ一つに共感して切なくなる。
    誰しも人には言えないジレンマを心の奥に潜めながら吐き出すことも出来ずにいる。
    けれどそんな自分を受け止めてくれる味方はきっといる。
    人を信じる…底知れぬパワーを貰えた。
    人知れず思い悩んで眠れない夜は、重たい鎧を脱いで素の自分をさらけ出していけたらいいな…。

    彩瀬さんの短編の繋げ方が見事で最後に唸ってしまう。
    読み終えた後の爽快感がとてもいい。

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

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