鳩護 (文芸書)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198651695

作品紹介・あらすじ

「お前は鳩に選ばれたのだ」

小森椿27歳、会社員。
鳩に謎の使命を背負わされる!

文学界を席巻する新星が放つ、
摩訶不思議な鳩をめぐる物語。

一人暮らしのベランダに突然、真っ白な鳩がきた。
怪我をしているらしく、飛び立つ気配もない。
小森椿は仕方なく面倒をみることにする。
白鳩に愛着がわいてきた数日後――。
帰宅途中、謎の男に奇妙な宣告を受けた。

「お前は俺の次の『鳩護』になるんだ」

鳩を護ることを宿命づけられた者。
それが鳩護だという。
なにその宿命? どうして私が?
混乱する椿をよそに、
白鳩は椿の日常を否応なく浸食していく!

感想・レビュー・書評

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  • 鳩に"選ばれた"27歳の女性・椿。
    仕事に追われる日々を送っていた椿は突然、鳩を護ることを宿命づけられた"鳩護(はともり)"になる。

    今までの河崎さんとは全く異なる作風に驚いた。
    過酷な自然とのリアルな闘いの物語に対して、今回は…夢とうつつの間をさ迷うファンタジー?
    けれどそこは河崎さんらしく、動物が直面する厳しい現実を我々読者に訴えかけることも忘れない。
    鳩と言えば漠然と平和の象徴というイメージしか持っていなかったけれど、昔の戦場や新聞社における伝書鳩やレース用の鳩といった、人間に飼われる"家畜"の立場にあることを知った。
    そして時に、人間の食料となることも…。

    先輩"鳩護"の幣巻から「猫背」と勝手な仇名で呼ばれるくらい、いつも背中を丸めてつまらなそうにしていた椿。
    会社や日常生活にいつも不平不満を抱えていた彼女も、"鳩護"の役目を通して鳩のように飛び立てたように思う。
    人間がいくら鳩をコントロールしようとも、鳩はそんなに簡単に人間の思い通りにはならない。
    それはとても自然なこと。
    人間と動物との共存について考えさせられた。

  • とにかく不思議な話。最初っから最後まで。

    結局 鳩護って何やねん とか疑問は色々残ったが、鳩に対してすこし優しくなれた(気がする)。

  • 河崎秋子さんの本?
    似た名前の別人だったかなと二度見してしまったほど、これまでの著作と文体が違う。

    独り暮らしのアラサーOLの主人公のベランダに突然やって来た白鳩。知らない男に突然「おまえは鳩護だ」と言われ、夢の中で鳩と人との関わりの歴史を遡っていく。

    家畜としての鳩が、時代の流れの中で必要とされなくなっていく。ああ、やはり河崎秋子さんだ。
    抗えない機械化。人の都合で切り捨てられるもの。確かに、人と動物へ向ける眼差しは同じだ。
    でも現代を舞台にしたら、このようになるのかな。

    河崎秋子さんの新境地も楽しみだが、前作までの大地と動物の匂いでむせ返るような作品がとても好きだったから…

  • 『颶風の王』とか『肉弾』の重厚感とはうってかわってライトなファンタジー。
    鳩に選ばれたって言われても〜
    楽しく一気読みしました。

  • 大藪春彦賞、新田次郎文学賞 受賞の河崎秋子さん新刊『鳩護(はともり)』発売 |徳間書店のプレスリリース
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000296.000016935.html

    河﨑秋子 元羊飼いのつぶやき:北海道新聞 どうしん電子版
    https://www.hokkaido-np.co.jp/column/c_weekly_column/akiko_kawasaki/

    鳩護 - 徳間書店
    https://www.tokuma.jp/book/b535772.html

  • 「颶風の王」とは違いすこし軽やか
    なのは白い鳩のせいかも
    アラサー、【椿】の職場の人間関係モヤモヤに「もっと不満は小出しにすればいいのに」と同情する
    リアルな椿の生活よりも夢のほうがおそろしい
    鳩護を終えた【椿】はようやく、やっと、まだまだの三十路を迎えられそう
    もう少し広い視野で生きてゆけそうだ

  • 歴代続く鳩護になった27歳の女子による不思議なエピソード。不思議と言えば夢だけで、白い鳩はたまたま主人公に纏わりついただけと言えなくもない。
    他愛無いストーリーを作者の筆致で読ませてくれるような印象。会社の同僚、福田の顛末は祖父の死だけなのが物足りない。主人公をイライラさせるために何度も出てきた割に役割が薄い。次期鳩護も語られず、打ち切りにあったような終わり方です。

  • 『颶風の王』『肉弾』『土に贖う』と、たて続けに手応えのある小説を送り出してきた個性的な作家さん。北海道の羊飼いから、北海道在住の小説家へと生活を移した作者の第1作は、これまでと、ちょっと違ったテイストのお話。読み初めは面食らってしまったほど。本の紹介文がおどろおどろしいけど、大丈夫、それだけじゃないから、もっと幅があって面白いから!と言いたいです。一気に読んでしまった。

    ちょっと猫背の普通のOL椿(27歳)と、会社の同僚。行きつけの店の常連といった、都会の話。それぞれの登場人物も個性があって、作者のこれまでと違うテイスト。とは言っても、やはり「河崎秋子」であることに変わりない。幣巻(ぬさまき)や、矢形(やかた)の持つ不気味さで、椿の日常が脅かされていく。

    夢が重要なファクターになっているが、現実離れしたファンタジックな夢とはならない。泥の感触、血のべとりとした感じ、羽が毟られるさまなど、目に見えるよう・・・どころではない。私は自分の体に、感触として感じられた。これまでどおり、「河崎秋子」の表現なのだ。(特に田野倉の、狂気を思わせるシーン)このリアリティは独特で、私は他の小説から、似たような感じを覚えたたことはない。(私がおっかない小説をたくさん読んでないこともあるかもですが)

    鳩が人にどう扱われてきたか、が椿の夢の中や、幣巻、矢形など鳩に関わってきた人物から語られるが、どれもリアルさが伝わってくる。食事している場面もなぜかゾッとする表現を感じてしまう。鳩の温かさ、黒い目で見つめられるときの可愛さも体温を感じるほどに伝わってくるのだが、同じように鳩を食らう場面や、引き裂かれる場面も同等の感触が伝わるのだ。

    感情の起伏の扱い方も、作者の個性と思うのだが、独特の表現だ。「怒り」が重要な物語のクライマックスになっているが、爽快!椿がふと毒づくところも伏線に思えてくる。読後感は、これまでのどの本よりも心地よかった。最後のユーモアのセンスも嬉しい。

    作者の独自の世界を表現しつつ、新しい境地に入っていく。次回作がますます楽しみ。
    これまで書かれた羊飼い(元羊飼い)のエッセイも、ユーモアのセンスが素晴らしいので、もっとたくさん書いていただいて、早く本になるように願っています。

  • 思いがけず鳩を飼うことになった主人公。現れた謎の男による不思議な話と、夢で見るようになった不思議な記憶。興味深いプロットがちりばめられているが、ストーリーの展開が強引で登場人物の造形も荒っぽく、雑に書き飛ばした小説という印象。子ども向けのファンタジー小説として丁寧に書き直せば面白いんじゃないかな。

  • 『颶風の王』や『肉弾』から見ると、文章のテイストが変わっててびっくり。ラフな文章もイケるのか。河崎さん。

    ハト子の体温を感じるところや、馬との関わりはリアルさを感じた。
    地のライトな感じの文章に入ってきて、独特な食いつかれ方。文章から読者に食いついて来るのも変な表現だけど、そんな感じ。

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著者プロフィール

1979年北海道別海町生まれ。2012年「東陬遺事」で第46回北海道新聞文学賞、14年『颶風の王』で三浦綾子文学賞、15年同作でJRA賞馬事文化賞、19年『肉弾』で第21回大藪春彦賞を受賞。『土に贖う』で新田次郎賞を受賞。

「2020年 『鳩護』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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