輝山 (文芸書)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198651893

作品紹介・あらすじ

第165回直木賞受賞作家の受賞第一作!
いま最も注目の歴史作家が描く命の輝き

あの山は命の輝きを永遠に宿し続けるいのちの山――

世界遺産・石見銀山を舞台に、懸命に生きる人々の
生きざまを活写した歴史群像。

代官・岩田鍬三郎の身辺を探るため、江戸から石見国大森銀山にやって来た金吾。代官所で中間として働き始めるが、そこで待っていたのは銀山を支えるため懸命に生きる人々との出会い。
命の危険にさらされながら間歩の中で鉱石を採掘する掘子、重い荷を運び母と妹を養う少年、世を憎み、酒浸りの日々を送る僧侶。そして彼らを慈悲深く見守る岩田鍬三郎……。
さまざまな思いに触れ、金吾はいつしか彼らに魅せられていく。

感想・レビュー・書評

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  • 輝く良作の一冊。

    主人公 金吾の目線を軸に描かれた石見銀山で生きる民と政の七年間。

    銀山で生活の糧を得る男たち、そこに絡むさまざまな出来事と共に思いもよらぬ気づき、世の常、人の常たるものが熱く溢れ続けていた。 

    表立って輝くものが全てではない。
    その裏で陰ながら放つ輝き、日々生きる民の生もまた誇れる輝き。
    そして民のための政とは裏の輝きを見つめ理解する土台があってこそ、なんだな。

    人たるもの、生き方を登場人物誰もの言葉にのせて届けてくれた作品にすっかり心掘り尽くされた気分。

    読後は輝きだけが心にキラリ残されるような良作。

  • しろがねの葉と同じ石見銀山の物語、と聞いて手に取りました。
    銀山で暮らす人々が皆、本当にいきいきと描かれていて
    素晴らしかったです。
    堀子の男達は、その職業病ともいえる病気で皆長くは生きられない。自分の短命がわかっているからこそ
    短い一生を、情熱を、命ある限り山へと注ぐ。
    その一生を思うと切なくなりますが
    物語は、気持ちのいい終わり方で良かったです。

  • 生き抜くために刹那的な人生を選ばなければならない人々の壮絶な生き様か描かれていた。

  • 『輝山』というタイトルの思いが込められた、
    とても素晴らしく輝く物語でした。
    江戸表から石見国大森代官所に赴いてきた金吾が、銀山の町で懸命に生きる人々と出会い、触れ合いながら魅せられていく様、またその銀山で暮らす人々のドラマ、そして時代劇特有の何か匂う役人たちのドラマ、全てが面白かった!
    堀子頭である与平次の存在、そして彼の生様が、この作品のタイトルさながらに輝いている。
    ***ネタばれ***
    短命とわかっていながらも、堀子という仕事に誇りを抱き、懸命に働き、周りの人々を思い、命が尽きる最後まで、町を、そこに暮らす人々を愛し、それによって自らの生を確め続けるという与平次の姿は、本当に輝いていて、お手本みたい。
    とうとう気絶えにやられ痩せ衰えた与平次を、金吾が背負う場面は、込み上げるものがあり、目が潤んでくる。物語の最後、二人が出会った徳一の飯屋で、金吾が「なぁ、与平次。明日も店に来るんだろう」と与平次に語りかける金吾の言葉に、金吾の思いが伝わってきて、この場合も込み上げるものがありました。

  • ゆるい感じが、古き良き時代だなぁ。
    澤田さんにハマってしまいそう。

  • 正直、何か大きな事件や陰謀が渦巻くわけでもなく、かなり淡白な話が続く。だから読むのが嫌になるのかというとそんなことはなく、江戸時代の往時の石見銀山の当時の生活ぶりが目の前に見えるような細かな描写を読んでいると、すっかり読者というか、その世界に入り込んだような気分になる。そういった意味で、作者の澤田瞳子氏はかなり稀有な存在といえるのかも。お話は地味だけど、ちゃんとしたものを読みたい読書好きの方にこそお薦めしたい一冊。あ、でもほんとに地味ですけど。

  • 読んでいるうちにどんどん気持ちが温かくなってきた。とても味のある本だった。命の重み、儚さを教えてくれた。

  • 時代物なので難解なのかと警戒して読み始めだが、読みやすく、どんどん話に引き込まれていった。死についての解釈が良かった。

  • 金吾、与平太、岩田代官、藤田幸蔵元締手代、お春、魅力的な登場人物に、幾重の伏線から骨太で清廉な物語を過酷な石見銀山の地を舞台に描き、きっちり懲悪的な時代劇も見せてくれた秀逸な作品でした。

  • 石見の銀山に密命を帯びて赴任した金吾。密命自体、ほとんど関わりのない上役から、下っ端に突然降りてきたような不自然なもので、金吾は困惑しながら江戸から遠い石見での仕事を始める。
    銀山を知らない金吾の目線で紡がれていく生活が、まるでそこにいるかのように感じられる。章ごとに一つの問題が解かれていき、大命題の石見大森代官の岩田を探るのは何故かという最終章にたどり着き、淡々と進む内容もむしろゆっくり楽しみながら読み進められた。輝山というタイトルに込められた思いと気絶(けだえ)で40前に亡くなってしまうのに銀鉱に潜り続ける石見の男衆の心持ちの描写が染みた。

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著者プロフィール

1977年京都府生まれ。2011年デビュー作『孤鷹の天』で中山義秀文学賞、’13年『満つる月の如し 仏師・定朝』で本屋が選ぶ時代小説大賞、新田次郎文学賞、’16年『若冲』で親鸞賞、歴史時代作家クラブ賞作品賞、’20年『駆け入りの寺』で舟橋聖一文学賞、’21年『星落ちて、なお』で直木賞を受賞。近著に『漆花ひとつ』『恋ふらむ鳥は』『吼えろ道真 大宰府の詩』がある。

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