- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198652920
作品紹介・あらすじ
よりよく生きるためには哲学が必要だ!!
人間という複雑な存在のありようを哲学の視点から整理し、人生を前向きに生き抜いていくための考え方を示す――学校では教えてくれない人生の教養書。
いま世界はあらゆる境界があいまいとなり、確かなことが消失しつつある。子どもが大人へと成長していく過程で身につけていくべき常識が根底から崩れてしまっている。そんな多様で変容した世界のなかで生きるとは何か。人間とはどのような存在なのか。いかによりよく生きることができるのか。そうした根源的な問いにいま多くの若者が直面している。著者は国士館大学で大学生向けに人生とは何かを講義してきた。人間とはどのような存在なのかを正しく認識するための思考のプロセスを明確に示し、人生をどのように生き抜くべきかについての叡智をやさしく平易な言葉で説いた哲学的人生論。
【目次紹介】
第1章 人間とは何か
第2章 「心」とは何か
第3章 人は何のために生きるのか
第4章 「私」とは何か
第5章 人間関係のあり方を二つに分ける
第6章 「愛」とは何か――エロス的関係の区分
第7章 恋愛感情の特質
第8章 結婚の意義
第9章 家族とは何か
第10章 道徳の意義
第11章 働くことの意義
第12章 国家とは何か
第13章 戦争は悪か
感想・レビュー・書評
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労働の対価として適当な報酬を得ることによって、心(精神面)が安定し余裕が生じてくる、という内容が、ブーメランだなあと思った。なぜなら今の私は、「労働していない」と言う意味では、私は社会の一員として認知されていないということなんだろうなと思ったから。ただ、一大学生、個人としてのプライベート面では、私は友達や大学の先生などの信頼できる大人が周囲に居て、その集団の中では生きられている。だから孤立しているわけでもないんだよな、と言うことを感じた。
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113-O
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(個人的なメモ)
小浜逸郎は、ある時期から「十代の青少年が読んでも分かる易しい哲学の本」をときどき出すようになった。
正直、ぬるい。
もともとこの人は批評家だ。「私たちの日常的なごく当たり前の感覚」を丁寧に拾い上げていき、それを武器にして社会問題や哲学的な問題などに真正面から切り込んでいくという批評スタイルだ。
つまりこの人の思想というのは、何かの問題とがっぷり四つに組んだ時ほど、より一層鮮やかに際立ってくるという特徴がある。あくまでも思想家ではなく批評家なのだ。
で、そうした批評を繰り返しているうちに、いつの間にか「小浜逸郎の思想体系」が組み上がってきた。彼はそれを大学の講義で説明するようになり、『エロス身体論』などが代表的だが、その思想体系により一層磨きをかけるようになった。
そして、その磨き上げた思想体系を、この『人生のトリセツ』のように、易しく読める形にまとめ始めた。
だがやはりこの人は、何かの問題とがっぷり四つに組み合って、いわばその反作用で自らの思想を構築していくスタイルの方が合っていると思う。
彼の批評や思想は、私たちの日常感覚からスタートしているので、結論だけをまとめても退屈になってしまうのだ。どんな問題と取り組んだ結果、その「日常の思想」が輝くようになったのかという批評のプロセスとその結果としての思想表明までの流れが見えないと、この人の思想体系はどうも読んでいてつまらない。スリルがない。
Bzの歌に「敵がいなけりゃ」というタイトルのがあるが、まさにそれである。この人は論敵をやっつけている方がかっこいいのだ。
ただ、思想家であることをやめてほしいと言いたいわけではない。自らの磨き上げた思想体系を武器にして、彼は批評家として今も活躍している。
ただ、今までは時事問題や「現代の」日本の研究者や知識人の批判にとどまっていたのが、最近は思想史上に名を残す哲学者たちにも真正面から批評の刃を振るって切り込むようになった。『日本の七大思想家』『日本語は哲学する言語である』『倫理の起源』などがそうで、彼は批評家として構築した思想体系をさらに批評家として活かしているのである。個人的にはそっち方面でもっと活躍して欲しい。
一方で、彼の近年のMMT絶賛や反ワクチンへの傾斜はほとんど理解できない。彼があれほど大切にしてきた、我々のごく当たり前の日常感覚は、今のところトンデモとしか言いようのない経済理論や陰謀論スレスレの思想と本当に結びつくのだろうか?そこに批評はあるのだろうか?