首取物語

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198655273

作品紹介・あらすじ

少年は繰り返していた。空腹に耐えかねて、目の前にいる男の握り飯を奪う行為を何度も。それに気づいたとき、首だけの男と出会う。
その男は少年と同じく過去の記憶を無くしていた。侍だったと言うこと以外は。
彼らはなぜ、記憶を無くしているのか? 男はなぜ、首だけの姿になってしまっているのか?
第164回直木三十五賞を受賞した著者が、『千年鬼』(徳間文庫刊)に続いて贈る和風ファンタジー。

第一話 独楽の国
第二話 波鳥の国
第三話 碧青の国
第四話 雪意の国
第五話 消去の国
第六話 和茅国
第七話 波賀理の国

感想・レビュー・書評

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  • 西條さんの和風ファンタジーを読むのは久しぶり。

    記憶を無くした少年・トサと首だけ(生首)の武士・オビト、二人の旅物語。
    二人の旅路は摩訶不思議なことばかり。夢か現か幻か。二人が行く先々で出逢う者たちもまたこの世の者とは思えない不思議な空気をまとった者たちばかりで、読んでいてわくわくした。
    特に『波鳥の国』『碧青の国』が切なくて好き。

    旅の始まりは口喧嘩ばかりで何かと衝突していた二人だったけれど、旅が進むにつれ、心の距離も徐々に縮まり波長も合ってきて信頼度も増してくる。
    トサの悪ガキからの成長ぶりが好ましい。ナンダカンダ言ってもオビトを慕っているのがよく分かる。

    やがて二人の因果も解き放たれ、新たな旅が再開。
    それは独楽のように終わりのない不変のものなのか、それとも新天地へ突破できるものなのか。
    いずれにしても二人の旅路が、今後こそ楽しいものになることを願う。

    けれど…なぜこのタイトルなんだろう?
    内容にあまり合ってないような。。個人的に最後まで違和感を拭えず。。

  • せつない物語の一冊。

    記憶を失くした少年トサと生首オビトの出会いから、徐々にせつなさが浮き彫りになっていく物語。

    七つの国を順繰りに旅していく過程はシュールで時に微笑ましく、時に優しさも漂う好きな世界観。

    行く先々での人との出会いを機に記憶が微かに彼らの頭をよぎるシーンにざわざわし、二人のその記憶は果たして混じり合うものなのか目が離せなかった。

    波賀理の国は圧巻。
    奥が深い。

    世の中たるもの、人、立場で変わる善悪、正義についての言葉が絶え間なく心揺さぶり、せつなさもぽつん。

    二人が歩む道に常に優しい光がさしますように。

  • 西條さんの時代ファンタジー。

    「独楽の国」をループしていた少年は、あるとき“首だけ”になってしまった、元侍の男と出会います。
    過去の記憶をなくしていた二人は、少年を“トサ”、首男を“オビト”と呼ぶことにして、行動を共にすることに。
    一緒に諸国を巡るうちに、彼らの哀しい記憶の断片が明らかになってきて・・。

    連作七話構成で綴られる、哀しくも美しい物語。
    やんちゃなトサと口うるさいオビトが、喧嘩ばかりしながらも共に旅をしていくうちに、徐々に二人の間に情が生まれて、それが深まっていくのが良いですね。
    それだけに、後半にいくにつれて明らかになってくる、二人の哀しい因縁が切なすぎます。

    ファンタジーのもつ幻想的な世界観の中に、“罪”や“善悪”への問いかけがあって、とりわけ第七話「波賀理の国」では、トサとオビトがそれぞれかけがえのないものを失ってしまった哀しみと、それを奪った者に対しての怨みに苦しむ様から、“許し”に至るまでの展開には惹き込まれるものがありました。

    何だかんだで、お互いを大切に思うようになっていた、トサとオビトのコンビが、これからどのような旅路を歩んでいくのか・・まずはデジャヴのような“ループ”から抜け出さないとですね~。

    個人的に本書の挿絵のタッチが好みだったこともあって、この話はアニメ映画にしたら良いかも!と思いました。
    あ、でも“喋る生首”はビジュアル的に、ちょっとキツいかなぁ・・・。

  • 読楽2020年7,10月号、2021年1,4,7,10月号、2022年1,2月号掲載のものに加筆修正し、徳間書店刊。ああでもないこうでもないというようなぐだぐだな世界観に徒労感を覚えました。タイトルにも違和感あります。冗長な展開で、短編のアイデアを引き伸ばしたような気がしました。ところどころに面白いシーンがありましたが、読解力およばず残念です。

  • 【収録作品】第1話 独楽の国/第2話 波鳥の国/第3話 碧青の国/第4話 雪意の国/第5話 消去の国/第6話 和茅国/第7話 波賀理の国

    生首の「オビト」と、十二、三歳の「トサ」が旅するのは不思議な国。記憶を失っている二人が共に旅するということは、因縁があるわけで。訪れる先は不思議な地で、「オビト」は「御首さま」として受け入れられることもある。二人は記憶を取り戻し、「波賀理」に乗る。

    真実は一つではない。出来事は一つだが、視点を何処に置くかで見え方は変わる。第7話はすっきりとは終わらない。振り出しに戻ったのだとしたら… 切ない。
    イラストの雰囲気がぴったり。

  • <禍>
     ああ,悩ましい。いつまでたっても西城加奈と西加奈子の明確な区別が僕の頭の中で付けられない。若いころからこういう現象はよくあったが,努力して途中からは色々と克服してきた。
     でもこの二人の混同現象はもう解決できそうにない。63歳を超えた僕の脳みそは一度や二度で「記憶」になるのは程遠く。仮に3度4度とチャンスが訪れてもそれが短期間に集中しないことには記憶となることは無い。仮にこの二人の作家さん達が月に一冊以上の新刊を上梓して下されば叶うのかもしれないが,まあそれは無理ってもんだろうて。

     んで,本の話である。と云っても前の話題を少し引きずりながらだが。西城加奈の作風は大体決まっている。基本時代劇なのである。それも戦国期以降が多い,たぶん。対して西の方は現代を舞台とする作品。これだけでも二人の違いは明白なので覚えられてもいいのだけどなぁw。

     西条の今作には「首」が登場する。のっけでいきなり登場する。物語が始まってほとんどすぐに登場するので,まあここで書いても大きなネタバレにはならないだろう。で,その生首なんですけどぉー・・・。おっと いかんいかん これ以上書くとネタバレになるわい。 

    で,この本実はむちゃくちゃ面白い。ズバリ りょうけん的おすすめ作品 である。でも,本の好き嫌いには大きな個人差があって 僕が読んで面白かったからと云って他の人にも面白いとは限らない。なのでそこはご勘弁だけど やはり無茶面白いので是非読んでみて欲しい!(あ,しつこいな。すまぬw)

     何度か読み返したがどうしても理解できない下りが本編にある。無粋だが本文210ページから引く。『・・・布の隙間から,朱雀大路の景色が飛び去るように遠ざかり,遂には切れた。都の南に築かれた,羅城門を抜けたのだ。』この時オビトとトサの二人は那良(奈良)にいた筈なのに,どうして急に京都の羅城門へ出るのだ。ファンタジーだとしてもここだけはどうにも理解が出来なく。一体何がどうなっているのだ。

     物語の中盤に「禍」という文字が出て来る。例えば”悪しき禍”という使われ方をしている。この本が某誌に連載されたのは 2020-2022年に掛けて。もちろん「コロナ禍」という言葉が世間には周知されている。それで西城も物語中に「禍」を使ったのだろうか。
     で,この「禍」という字の読み方だが 僕はずっと「まが」と読んでいる。普通は「か」なのかな。コロナ禍で最初の頃に「うず」と読んでる人が居て笑ったが,僕はずっと昔から「まが」と読んでいる。キチンとした理由があるが今回ここでは書かない。すまぬ。

    • ひまわりさん
      ryoukentさん、こんばんは。
      私も西城加奈さんと西加奈子さんの区別がついてなかったです。さっき図書館で西加奈子さんのおまじないという本...
      ryoukentさん、こんばんは。
      私も西城加奈さんと西加奈子さんの区別がついてなかったです。さっき図書館で西加奈子さんのおまじないという本をパラッとみて、今回は時代もんじゃないのねと思いましたもん。一緒です。このログを読んで間違えに気づきました。ありがとうございます
      2023/01/22
    • ryoukentさん
      ひまわりさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます。やはり僕と同じ 西間違いさん はいた事が 分かって、安心しました。やれ 嬉しい
      ひまわりさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます。やはり僕と同じ 西間違いさん はいた事が 分かって、安心しました。やれ 嬉しい
      2023/01/23
  • 自我を保つために、人は自分に都合の良い物語を作り出す。
    でもそれでは本当の救いにはならない。相手を赦すことによって、始めて己も赦されることになる。
    「波賀理の国」の掟は、理屈ではわかる。善悪は表裏一体。でも、世間にはそこに理など無いような理不尽な暴力が溢れている。それをも赦さねば救われないのだろうか?
    どうやら私は波賀理の国に閉じ込められそうだ。
    オオオオオンンンン——。

  • 今回はファンタジー過ぎた。

  • 時代は恐らく戦国時代だがファンタジー要素が強い。

    設定さえ受け入れられれば問題なく楽しめる。

    自分探しの旅を通じた主人公たちの心の繋がりが最期の悲劇を防がせるという展開はありがちな気もするが。

  • 最後にきて、驚いた。一気に切なくなった。
    また、これを繰り返すの?
    一縷の望みだけは残るラストだけど。
    罪と罰のバランスとは?
    二人にとって救いとは何だろう。

    でも、現実も簡単に思い通りになったりしない。
    同じように繰り返しの毎日。
    ささやかな喜びがあればまだ御の字ということ?

    いろいろ考えてしまう。

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著者プロフィール

1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー。12年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞、15年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞、21年『心淋し川』で第164回直木賞を受賞。著書に『九十九藤』『ごんたくれ』『猫の傀儡』『銀杏手ならい』『無暁の鈴』『曲亭の家』『秋葉原先留交番ゆうれい付き』『隠居すごろく』など多数。

「2023年 『隠居おてだま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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