本日は、お日柄もよく (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198937065

感想・レビュー・書評

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  • 出だしは良かった。「言葉には力がある」、確かにそうだ。「スピーチライター」?、そんな職業があるのねぇ。と、とても期待が膨らんだものの、途中から、嫌な予感・・・

    この本はもう何年も前に「読みたい本リスト」に入れていたにも関わらず、ずっと手に取る機会もなく、積極的に読もうともしていなかったところ、知人が貸してくれてラッキーとすぐに読み出した。

    幼馴染の結婚式がきっかけでスピーチライターという職業を知り、関わっていくことになる主人公こと葉。こと葉がスピーチライター久遠久美の事務所に通うようになり、話が「政治的」になっていき、思っていた物語の内容と違ってきたので、少し驚いた。この「政治的な」話は、「スピーチ」というものの重要性を説くうえで必要であって、一時的に政治的な話にページを割いているのかな、それにしてはなんだか作者の政治的な考え、政党批判が表に出すぎてないかな、なんて思っていると、ガッツリ政治の話になった。

    正直、苦手分野である。こんな歳で情けなく、恥ずかしいことでもあるが、政治にそんなに興味はない。(興味はないけれど、だからといって政治が先述した「嫌な予感」に直接つながったわけではないけれど)

    それでも、人の心を動かすスピーチ、後世まで残る名スピーチがあることからもスピーチの重要性はすんなり納得できたし、スピーチライターという人がいて、政治や選挙に関わっているということ、それもちょっと関わっているというのではなく、選挙戦ならば状況を左右するほど関わっているということを知ったのは、単純に新鮮でおもしろかった。
    今まで考えたことがなかっただけで、言われてみればスピーチをする方のプロではなく、スピーチ原稿を書き上げるプロやスピーチの仕方を伝授するプロがいたって何の不思議はないのに。

    「政治かぁ、選挙かぁ」とブツクサ思っていた私も、選挙戦を追っているうちに、こと葉と同じように、
    「選挙って、ちょっとおもしろいかもしれない。自分たちが動けば、世の中が変わるかもしれない。」
    と思った。それだけでも、私としては大収穫。

    ただ、こんなに人気で評判の高い作品について、こういってしまうのもなんだけど、私の中ではそこまで評価が高い小説ではなかった。ここが「嫌な予感」の根本原因。たくさんの人が「良かった」「感動した」「大切な一冊になった」と高評価をつけている作品に、自分があまり馴染めない悲しさというか。私ってどこか変なのかな、と一瞬思ってしまったり。

    なんといったらいいのだろう、こと葉にとって全てがうまくいきすぎ、というのか、環境に恵まれすぎ、というのか。初っ端から、友人の結婚式の場だから偶然とはいえ、大企業の社長さんと話す機会があり、典型的な一般庶民の私からしたら「え?主人公もセレブ?」なんて浅い感想を持ってしまい、さらに祖母は高名な俳人で、家族ぐるみで付き合いのある幼馴染のお父さんは議員さん・・・会社では抜擢され、仕事のできるちょっといい男にプロジェクトチームに誘われ、スピーチライターの師匠についていくうちに野党党首にも新人なのに期待されるわ、ついには爽やかイケメンの幼馴染も立候補することになり、スピーチライターとしてサポートすることになるわ・・・ってどんだけトントンやねん!と。ひがみですかね、これは。フィクションだから、と言ってしまえばそれまでなんだけど、まぁ、現実味がなくて。

    だからなのか、それとも私に原田マハ作品が(あまり)刺さらないからなのか、どっちなのかわからないけれど、感情があまり動かされなかった。こう、感情というものに表面があるとしたら、その表面を「感動しそうな場面」や「感動的な言葉たち」がスルスル~と滑っていっちゃう感じだった。私の感情の表面を滑っていっちゃうだけだから、私の感情は不動・・・そんな感じだった。

    なにしろスピーチがそんなに響かなかった。

    とはいえ、思わず涙ぐむ場面は2~3回あったのだけれど、全体的には「う~ん」というか・・・。「惜しい」というのも変なのだが、ちょっとそんな感じ。私がよっぽどひねくれているんだろうな(笑)前にもどこかで書いたけれど、小川糸さんの作品を読んだ後と同じような感覚がある。高評価なのに私には刺さらない。

    あ、でも読んで損した、とかはないです。機会があれば喜んで原田マハさんの作品を読むだろうと思います。

  • 確かに言葉ってすごい力があるよな、とか、そうは言ってもそんなことだけでものごと(政治とか)決まってほしくないよな、とか、揺れながら読んでいた。

  • 初原田マハさん
    政治が絡むまでの前半部分、泣けた…

    お風呂だったので、遠慮なく涙をポロポロこぼしながら読めた

    実は私の人生の中にも良いスピーチをする人がいたかも知れない?と考えたが、やはりまともに人のスピーチを聴いた記憶がない&覚えていない。残念だ。

    平凡なお気楽?OLは今時あんまりいない気もするが、現状の仕事に行き詰まりを感じたり退屈している人はきっと沢山いるんだろう。この主人公みたいに出会いがあり、何か(誰か)に夢中になってのめり込み、結果仕事に出来るのはとっても幸せな事。頑張る人が報われる物語は大好き。後味良かった。

    一点だけ。オバマや小泉さんっぽい話が出てくると、急に古さを感じてのめり込めなかった。ここも完全にフィクションにしてくれたら、何年経って読んでも楽しめる本になったのでは

  • 言葉の力
    はたまた
    言葉をあやつる力が
    世界をも変えれる力がある

    世界までは変えなくても
    人の心を動かす力がある。

    いってらっしゃい。
    まっすぐに
    いますぐに。

    そんな簡単な言葉も、
    想いを込めて意味をもって使えば
    通りすがりの人の心にも
    残るものなんだな。

    「言葉はメッセージカードのようなものよ。
    とっておくのもよし。
    日々眺めるのもよし。
    必要なくなれば破って捨ててもよし。
    死ぬまでずっと心にしまっておいてもいい。」

    私も
    人前で話す時には書いてあることを
    うまく喋ろうとするのではなく
    伝えたいことは何かだけ自覚して。
    あとは、「静」という紙を見てから
    始めよう

  • 最後はスッキリとした終わり方でした。ただ思ったよりスピーチを作る部分が少なく、そこをもっと深堀してほしかったなぁと‥こういうスピーチが感動させる!!と言う何か決めてみたいなものがもっと盛り込まれているのかと思ったので、若干私の思ったものとは違いました。仕事を頑張りたいと思える!そんな本だとおもったのですが、なんと言うかどちらかと言うと政治の話がメイン??私の苦手分野だったのであまりのめり込めなかったのもあるのかもしれません。あとは話が良すぎるというか、ちょっとハッピーエンドすぎて物足りませんでした。(ハッピーエンド好きなんですが、なんかちょっと違う)

  • あらすじを普段から読まないので、表紙と序盤から想像される話とはかなり広がった展開で、舞台は政治が主ではあっても読み易く楽しめた。一方で、もっと裏側はややこしいのではとか、現実とリンクするような内容に腑に落ちない点があったりとか、ハマり切れない部分も感じた。クセが強い人物が多く登場するが、どこかに絞ってもっと掘り下げてくれた方が好みかな。そうは言っても最後までとても良い流れで、締め方もとても良かった。

  • なかなか馴染みのない、スピーチライターという職業のお話ですが、話の展開はよくあるお話です。
    でも、言葉の大切さを伝えてくれる作品だと思います。
    言葉の使い方で世界が変わるかもしれない。
    日常でも「あの時こう言っていれば状況は変わっていたかもしれない」と思うこと、ありますよね。。
    それを日本全体巻き込んで展開しているのが、このお話。
    スピーチライターのお仕事もカッコいいなと思います。
    読み終わった後、ちょっとスッキリした気持ちになれます。

  • 最初の久遠さんのスピーチは、はっとさせられた。スピーチの極意も幾つか知ることができ、言葉の大切さが身に染みる。中盤、政治の話になったら頁をめくるのが遅くなった。こと葉のいちずな奮闘ぶりは伝わるが、一見普通のOLがなぜそこまで久遠さんに目に掛けてもらえたのか。
    周りの人々がいい人ばかり。おばあちゃんも、久遠さんも、厚志くんも、こと葉恵まれてるな。文中のスピーチで、自身の闘病、身内の体の不調を折り込む場面があるが、これは・・ちょっとなあ、と思ってしまった。ラストに向かって、出来すぎた感を感じてしまった。

  • お気楽なOLがスピーチライター、言葉に魅入られ成長していく話…と思っていたら後半はガッツリめに政治のトピックが出てきて緊張しました。
    難しいかなこれと焦りましたが、分かりやすく読みやすく進んでいくので大丈夫でした。

    こと葉には最初は共感し易いかなと思ったのだけど、なんか良い家育ちのお嬢様だし、出てくる他の登場人物も“育ちの良さ”が溢れ出してて、物語からは距離を置いて読んでしまった。
    それでも楽しく読めて、最後の久美さんとのやりとりは胸にくるものがるなと感じた。

  • 結婚式のスピーチを専門に扱う「スピーカー」の話かと思って、日々疲れていたので、おめでたい話でも読んでみるかと、軽い気持ちで手に取った1冊だったが、見事に裏切られれる結果に…
    幼馴染の結婚式に出席していた主人公・こと葉は来賓のスピーチの長さに眠気を催し、サーブされていたスープに顔面を突っ込んでしまう。その後、新郎の友人・スピーカーの久美に出会い、言葉の持つ魅力に取りつかれたこと葉は、同僚の結婚式のスピーチの為に久美にスピーチのコツを教えてもらうことに。
    とここまでは結婚式にまつわる話かと思いきや、後半は国政を左右する選挙戦の話に。
    凄い内容の飛躍だが、「総理の夫」などで政治関係の安定さもあることが分かっているので、どんな展開になるのか、少しワクワク。そして、作者のこの手の作品に良く見られる悪者が出て来ない展開で、ラストまでワクワクしながら読める。
    内容は思っていたものと違ったものの、解説にもある一節がとても印象に残る。
    「3時間後の君、涙が止まっている。24時間後の君、涙は乾いている。2日後の君、顔を上げている。3日後の君、歩き出している」
    落ち込んだ時、この言葉を思い出そう。
    そう思える一説に出会える作品だった。
    「楽園のカンヴァス」から読み始めた原田ファンの自分を少し恥じた。

    • ことぶきジローさん
      自分も『楽園のカンヴァス』が原田マハとの出会いでした。これからゆっくり色んな作品を楽しみたいと思います。
      自分も『楽園のカンヴァス』が原田マハとの出会いでした。これからゆっくり色んな作品を楽しみたいと思います。
      2019/06/04

著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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