純喫茶トルンカ (徳間文庫 や 38-1)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198937669

作品紹介・あらすじ

純喫茶トルンカは、下町情緒の色濃く残る商店街の、さらに路地を抜けた袋小路にある喫茶店。場所がわかりづらいこともあり、やってくるお客のほとんどが近所の人ばかり。でもコーヒーの味はなかなかのもの。マスターは物静かで無口な中年男性。大学生バイト・修一と一緒にお店をしているのだが、ある日、修一に「私たちは前世でお会いしてるんです!」と突然女の子に声をかけられた!一体どういうこと?

感想・レビュー・書評

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  • ショパンのピアノ曲が流れる喫茶店。
    コーヒーの香りが店内に満ち溢れ、ドアのベルがカラコロと鳴る。
    そんな喫茶店にふと立ち寄ってみたくなる。
    ここに流れてる空気がレトロな感じがして嬉しくなる。
    コーヒーのようにほろ苦い、ちょっと悲しい過去を背負っている人たちが、「トルンカ」で自分を見つめ直して丸くなっていくお話。
    私もそんな人たちに出会ったような気分になって、つい心惹かれて読んでいた。
    「日曜日のバレリーナ」「再会の街」「恋の雫」の三編。

  • 東京の下町にある「純喫茶トルンカ」でのさまざまな出会いを3つの短篇集にしている。

    日曜日のバレリーナは、バイト修一君と突然に現れた雪村千夏の懐かしい出会い。

    再会の街は、花屋でバイトをしている絢子さんと50代のおじさん・ヒロさんとの出会い。
    これは、ぐっと胸にくるものがあった。
    昔付き合っていた女性を捨てたあとの人生、振り返ってみても後悔しかなくて…
    彼女の行方を探したら既に亡くなっていて、娘さんをそっと見ているだけという。
    だが、最後に絢子さんの言った格言に良いなと思った。
    《再会とは、人生における一番身近な奇跡である。》

    恋の雫は、「純喫茶トルンカ」の看板娘・立花雫と亡き姉の恋人だった荻野さんとの再会。
    どうやら雫は、荻野さんの中に亡き姉の姿を見ていたようで、ちょうど7回忌もあって心の中で整理しきれていない姉への想いと重なったふうに思えた。
    好きだと伝えた気持ちは嘘ではないだろうが、姉になりきろうとしてもそれは違うのだと…
    気づかせてくれたのは、幼なじみの浩太だったんじゃないかな。

    どの3篇も悲しみや孤独を抱えているからウルっとしたのだが、決して暗くはならず良いほうへと繋がっていく気がする。

  • この本は、Instagram # 南沢奈央の読書日記 で知り、ずっと気になっていた一冊です。
    図書館ではティーンズコーナーに置いてあり、私のようなオヤジ向けではない?
    そんな無意味な決めつけは当然無視して借りてきた。

    物語は野良猫の多い下町の路地裏、店の前が猫たちの通り道になっている三角屋根の小さな喫茶店が舞台。

    マスターとその娘で店の手伝いをしている明るい高校生の雫。
    真面目な大学生アルバイトの修一と修一の居場所を探してある日訪ねてきた千夏という謙虚な女性。
    トルンカのなじみ客で近所の花屋で働く絢子と30年も前にトルンカになる前の喫茶店に通っていたというヒロさん。
    雫と幼馴染の浩太と雫の姉の恋人だった荻野さん。

    これらの人達の恋を描いた3話のどれもが、奇跡の再会をきっかけとしている。
    再会ということは、その背後には忘れがたい(忘れたい・忘れたくない)思い出があるということだ。
    再会の背景がちょっと辛い複雑な関係性であるだけに、どこかしらほろ苦く切ない気持ちになる。

    恋する気持ちの話なので、確かにオヤジ向けの本ではないかもしれない。
    大事な人の「死」が絡んでくるので、多感なティーンズが読めば涙腺が緩むだろう。

  • “純喫茶”という響きに惹かれて手に取った本。

    下町のあたたかい雰囲気や、珈琲の香りにふんわり包まれて、優しい気持ちになれる作品でした。

    行きつけの喫茶店がある生活っていいな〜。トルンカみたいな素敵な喫茶店に巡り合いたい!

  • 読む順番が前後してしまったが、純喫茶トルンカシリーズの初巻を読了。谷中の小道にひっそり佇む喫茶店トルンカに関わる人たちを順番に主人公とした物語で、1冊の中に3篇(3人)のお話が入っている。とても難しい事情を抱えていたり、過去に悲しい経験をしたり、それぞれが各々の人生を生きている模様がダイレクトに伝わってくる。トルンカのマスターをはじめ娘の雫、その周りの人々、お客さん、どの人も温かいのは、それぞれが人の痛みが分かるこそなのだと実感した。雫のお母さんがなぜ単身で海外に行っているのかも分かって良かった。現在は2巻までだが、続編を密かに期待している。

  • いろんな「再会」に出会えた本。一番身近な奇跡。

  • 続編から読んだので、色々と繋がりを感じられて楽しめた。どの話も優しい気持ちにしてくれ、珈琲が飲みたくなる。

  • いいですねぇこういうあったかい本。
    心の中がほんわかします。
    「純喫茶」という響きも非常によろしい。
    自分の家の近所にも、こういう場所があればきっとずっと入り浸ってしまうに違いない。
    そういう拠り所、憧れる。

  • 東京の下町・谷中を舞台に色々な人の過去と現在が交錯する。本書には3篇の物語が収録されているが、中でも「再会の街」は中々泣かせる。それは、小さな幸せに満足できずに外に飛び出したものの、結果はうまくいかず、過去を後悔する男が舞い戻った地で見たものについての話。「日曜日のバレリーナ」も、突拍子のない始まりと、感動のフィナーレが面白い。

  • 「純喫茶トルンカ」は美味しい珈琲が自慢のレトロな喫茶店。東京の下町にひっそり佇む店には、魔法をかけられたようなゆっくりとした時間が流れ、高校生の看板娘・立花雫の元気な声が響く。ある日バイトの修一と雫が店に出ていると、女性客が来店。突然「あなたと前世で恋人同士だったんです」と修一に語りだし…。孤独や悲しみを抱えた人々の心がやわらかくドリップされていく…。

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著者プロフィール

1977年千葉県生まれ。日本大学芸術学部卒業。「森崎書店の日々」で第三回ちよだ文学賞大賞受賞。同作品は映画化された。著書に「続・森崎書店の日々」「純喫茶トルンカ」「純喫茶トルンカ しあわせの香り」がある。

「2023年 『きみと暮らせば 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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