臣女 (徳間文庫)

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著者 : 吉村萬壱
  • 徳間書店 (2016年9月2日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198941499

臣女 (徳間文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 風呂上りにテレビつけたらアメトークで読書芸人やってたのでドライヤーかけながらぼんやり見ていたところ光浦さんが紹介していたこの本がとても気になったので早速翌日本屋さんへ行く。ミーハー。

    夫の浮気を知った妻は、その日からどんどん骨をきしませ巨大化していく。夫は償いの気持ちからか妻の世話を献身的にするが、妻の巨大化は進む一方。3か月で3メートルを超え、トイレに入れなくなり、室内の移動もままならず、しかし巨大化した分食事の量は増えそれに伴い当然排便の量も増えて・・・酷い言い方かもしれないけれどほとんど人間ではなく象かなにかの飼育状態。とにかく排泄物関係の表現が多く異臭騒ぎにまで発展するので読んでるうちに本から臭ってきそうな気持に(苦笑)

    妻はひたすら動物的に、食べる→排泄する→巨大化する→もっと食べる→もっと排泄する→もっと巨大化する、を繰り返し、最終的には進撃の巨人か!という大きさに・・・。かといってそれが夫の不倫に対する妻の復讐かというと、巨大化に伴う苦しみは妻自身のほうが大きく割に合わない。

    しかしそうなってはじめて夫は心から妻に献身的になり愛情を再確認する。解説で小池真理子が『死の棘』の話をしていたけれど、なるほど確かに、浮気夫のせいで狂気を発した妻、その狂気を目に見える形に具現化したらこういう物語になるのかもしれない。これは私小説ではもちろんないけれど、夫は兼業作家で、心の一部に「これは小説のネタになるかも」と他人事のように眺めていたりもして、なんだか人間の業の深さを思い知らされる。

    巨大化の過程で一瞬だけ、巨大なことを除けば完全な均衡を取り戻し美しくなった妻とまじわる場面があるのだけれど、ときどき引用されるボードレールの「巨女」の詩と相まって、妻が女神のようだった。おそらく作者が一番書きたかったのはこの場面だったのではなかろうか。本のタイトルが「巨女」ではなく「臣女(おみおんな)」となっているのは夫の誤字ゆえだけれど「おみおんな」と口にしてみるとなにかとても女性を崇める神聖な古語のような響きがある。

    元はといえばゲス不倫などする夫が最低なだけだが、30代息子を「文ちゃん」と呼び干渉し嫁いびりをする毒母、粘着質で嫉妬深い同僚男、虎視眈々と詮索・監視してくるご近所の老人たちなど、巨大化した妻より彼らのほうがよほどグロテスクな化け物じみていて気持ち悪い。醜悪に巨大化していく妻を献身的に支える夫はそれはそれで大変だったろうと思うのだけど、でも結局、何の罪もないのにそのような苦しみを背負わなければならなくなった妻が、ただひたすら痛ましい。結局最後に犠牲になるのは女のほうかーという不満はありつつも、なんだか神話のような余韻があった。

  • 2016.12.27-72
    夫の浮気を知り巨大化する奈緒美を家に閉じ込めて世話に追われるが、挙句トラックで逃避行するも死なれてしまう夫文行。中盤の奈緒美のグロテスクな描写に対し、最後の巨大化した理由が回想されるシーンが切ない。

  • 切実なる恋愛小説。

    浮気がバレた日を境に巨大化、異形化が止まらない妻。途中目を覆いたくなるような凄まじい描写があるのだけど、それでも夫の心情と同じように、妻のことが愛おしくなってくる。
    妻との生活はどう考えても負担が大きく逃げ出したくなるのだけど、なぜだか決して離れたくはない感覚。たぶんこれは純愛なのだと思う。

  • 私にはかなりキツかった。
    読後感が悪い、って言い方あるけど、この本は読中感がとにかく悪い。
    昔読んだ筒井康隆の『俗物図鑑』を思い出した。
    あれもかなりグロいと言うか想像するのが辛い描写が多かったけど、でもあっちの方が面白く読めたな。
    この作品に出てくる登場人物達がとにかく嫌で、(それは作者の意図するところなんだろうけど)読むのにかなり時間がかかった。
    主人公が全く好きになれないし、この旦那の「愛」は私には理解できない。
    恋愛文学賞とったみたいだけど。
    私はこの人の愛の形は好きになれない。

  • アメトークで光浦靖子が紹介していて、ちょっと面白そうだったので買ってみた!

    アメトークや帯で、妻への壮絶な愛が描かれているようなことが書かれていて、この流れをどう恋愛小説としてラストへ向かっていくのかなと思いながら読んでいたのだけれど、うーん、わたしはこれを、愛とは名付けられない。もちろん、全部を愛と呼べないわけではなくって。
    依存と抑圧と、絶望と。この状況を受け入れることができてしまうという彼の心は、強いのか、あるいは諦観か。

    自分の愛する人が異形化した時、わたしはそれを受け入れられるだろうか。そして、自分以外に愛する人を救ってあげる人はいると思うだろうか。わたしは、前者に対しての答えは、Noで、後者に対しての答えは、Yesだと思う。でも、主人公は、答えがいずれも逆だった。それは確かに、強さであり、愛かもしれない。

    お洒落なカフェでなんちゃらラテを飲みながら読んでいると、排泄のシーンなんかでそのなんちゃらラテがなんだかもうラテには見えなくなってきて、しかもその排泄のシーンはなかなかリアルで長いもんだから、よくカフェで本を読むことはおすすめしますが、この本の場合はすすめしません(笑)

  • 妻が大きくなるって風船のように膨らんでいくぐらいに思っていたのが、こんなにも痛々しく変形していくとは。でも汚いこと、グロテスクなことをありのまま描いているのに不思議と読みやすかった。
    いろんな思い(結構ゲスなことを考えたりしてますが、そういう部分って誰にでもあるんじゃないかなとちょっと共感)がよぎりながらも奈緒美の食事・排泄の面倒を見る主人公。最後に巨大化した理由が分かる奈緒美。二人の夫婦愛がテーマだと言えるんでしょうね。最後の保身すぎる主人公の台詞に感動しかけていたのが冷めましたが。

  • いやもう、最後泣きそうになったよ。

  • 読書芸人光浦靖子オススメ

  • 思った以上に表現がグロテスクで読むのしんどかった。食事前後は本当にお勧めできない。
    汚いものを本当に汚いまま描写されてるものが自分は苦手なんだと気づいた。胸糞悪かったなあ…。
    でも胸糞悪いだけじゃない後味の良さは確かにある。

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臣女 (徳間文庫)の作品紹介

夫の浮気を知った妻は身体が巨大化していった。絶望感と罪悪感に苛まれながら、夫は異形のものと化していく妻を世間の目から隠して懸命に介護する。しかし、大量の食料を必要とし、大量の排泄を続ける妻の存在はいつしか隠しきれなくなり、夫はひとつの決断を迫られることに??。恋愛小説に風穴を空ける作品との評を得、満票にて第22回島清恋愛文学賞を受賞した怪作が待望の文庫化!――解説小池真理子

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