勁草(BAD LANDS バッド・ランズ 映画原作) (徳間文庫)

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  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198942854

感想・レビュー・書評

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  • 大阪人の裏社会で生きる男たちが次々に事件に巻き込まれる様をコミカルに描く、相変わらずな黒川博行作品のすばらしきマンネリ。

    本作の主人公はオレオレ詐欺グループで中間管理職的立場の橋岡。ボスの指示の下、電話担当、金銭受取担当へ役割を割り振る。それなりの社会常識と知識を持ち合わせている橋岡はボスにとって、こき使いやすい存在だ。そんな橋岡が、常識を持たずカタギにもヤクザにもなり切れない男、矢代と知り合ってから、彼の運命は急転回する。大金を手にしたはいいが、殺人事件に巻き込まれ、ヤクザと警察から追われることになる。

    そんな運命に弄ばれる橋岡だが、警察捜査や金融機関とのやり取り、死体の処理まで、冷静に対応する。やることなすことがその場しのぎの矢代とは対照的で、橋岡の方をいつの間にか応援したくなり、追いかける大阪の刑事たちから逃げ切ってほしいと期待してしまう。そんな奇妙な魅力を持つダーティーヒーローが活躍しながら、オレオレ詐欺についての知識も学べるハードボイルド小説。

  • 詐欺世界では半端な人間が警察から極悪人として追われる。逃げ切れるはずは無いのだが、まさかの結末。
    テンポ良く軽く読み進めます。是非。

    追記
    2023.10.6.映画観てきました!!
    原作からの脚色がかなりありますが・・・、特に問題無し。安藤サクラがサイコーにヨカッタですよー!!

  • 勁草(けいそう): 風雪に耐える強い草 思想、節操の堅固な例え 疾風に勁草を知る

    オレオレ詐欺の詐欺グループのパシリ橋岡と矢代の二人が、元締めの高城を裏切り、犯罪を重ねて、逃亡するはなし

    9月に映画公開とのことで、どんな映像になるのだろうと想像しながら読んだ 電話のコード、ブルーシート、花柄の毛布、血みどろで殴られるシーン、刑事が追うシーンが浮かぶ
    オレオレ詐欺、自分は騙されないと高を括っていても、巧妙に練られたシナリオで畳み掛けられたら、私も騙されるかも この本は、旅先で読んでいたが、周りにいる人が全て犯罪者に思えて、常に疑心暗鬼になり、出歩くのが怖かった たった今も騙されている人がいて、本当に新聞やニュースに出てきそうなくらい臨場感がある 人気のない産廃施設には、何かがあると疑ってしまう
    元はと言えば、歳の若い半グレの矢代が賭場で作った借金(トロと言うらしい)250万円が事の発端 悪事を重ねると麻痺して、歯止めが効かなくなるのか 欲とは怖いものだ
    カッと血がのぼると止められない矢代に比べると、橋岡のほうが冷静で悪知恵が働く 最後まで逃げ切れるかもと思ったら、あっけない最後
    いつも思うのは、日本の警察は優秀だということ
    今回も一気に読めました
    小説が面白いので、映画は観ないかも

  • このような小説を面白いと言って良いのか疑問ですが、どんどん読めてしまうのは事実です。作者の切れのよさを凄く感じます。表題の「勁草を知る」は、刑事さんなのかな?

  • 特殊詐欺がテーマの犯罪小説。黒川博行は面白すぎる‼

  • 全貌が簡単には掴めないように、過ぎる程までに巧妙に組織された特殊詐欺の犯行グループの様子や、被害者を必死に護りながら犯行グループを追い、僅かな手掛かりを執念深く掘り起こす捜査陣の様子が、あの「黒川博行の筆致」で活写されている。一部に立寄ったこと、通り過ぎたことも在る「雰囲気が判る地域」の描写が在って、そんな中で作者が「上方落語の感じを意識」としている、大阪辺りの話し口調でやり取りをする作中人物達が各々の思惑で蠢く。
    「勁草」という題名に採られた語の意味は、「風雪に耐え続ける」というようなことであるらしい。本作の“主人公”は犯行グループ側の橋岡であろうが、橋岡は矢坂との行動が好くない方向に転がり続けて色々とややこしくなり、その始末に奔走する他方、本人の知らない所で捜査陣の手が伸びようとしている中、何とか逃げ延びて生き残ろうと「奮戦」する訳である。そういう様が「勁草」ということか?
    この顛末…是非とも紐解いて頂きたい!かなり夢中になってしまう…

  • これは映像化前提で作ったような作品だなあ。警察も特殊詐欺対策キャンペーンということで全面的にバックアップしてくれそうだし、「後妻業」のように大阪ネイティブで揃えて実現してほしい。それにしても黒川センセ、ディテールの細かさがファンの心をくすぐります。事件の舞台となるエリアとか大阪でもかなり物騒な町だけど完全実名だし、出てくるヤクザや筋者の名前がぴったりすぎ(大阪市〇〇区に多い名前)で、分かる人はニヤリとするはず。

  • 黒川ワールド 最高
    一気に読み終えた
    逃げる犯人 追う刑事二人 ドキドキ ワクワク
    おもしろい

  • よく覚えていないけど面白かった。

  • 【作品紹介】
    橋岡は「名簿屋」の高城に雇われていた。名簿屋とはオレ詐欺の標的リストを作る裏稼業だ。橋岡は被害者から金を受け取る「受け子」の手配も任されていた。騙し取った金の大半は高城に入る仕組みで、銀行口座には金がうなっているのだ。賭場で借金をつくった橋岡と矢代は高城に金の融通を迫るが…。一方で府警特殊詐欺班の刑事たちも捜査に動き出していた。最新犯罪の手口を描き尽くす問題作!

    【感想】
    色々な場所で並行で進行する事件が徐々に一つに繋がる。
    疫病神シリーズでみた黒川作品の手法で、作品にどんどん引き込まれる。
    そして、決してヒーローではない、どこのでもいるような刑事経ちの地道な捜査活動と、もしかしたら報われない評価。
    フィクションの中にも現実的な警察の世界が垣間見れる作品。

著者プロフィール

黒川博行
1949年、愛媛県生まれ。京都市立芸術大学彫刻科卒業後、会社員、府立高校の美術教師として勤務するが、83年「二度のお別れ」でサントリミステリー大賞佳作を受賞し、翌年、同作でデビュー。86年「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞を受賞、96年『カウント・プラン』で推理作家協会賞を、2014年『破門』で直木賞、20年ミステリー文学大賞を受賞した。

「2022年 『連鎖』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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