警視庁心理捜査官 KEEP OUT 〈新装版〉 (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198946494

作品紹介・あらすじ

警視庁初の心理捜査官として任命された吉村爽子。連続猟奇殺人事件を見事解決へと導いたが、職務の性質と爽子自身の性格のためか周囲との軋轢も深く、理不尽に責任を取らされて、所轄(多摩中央署)へと配置転換になった。左遷同様の異動である。爽子本領発揮の劇場型事件など起こるはずもなく、本庁以上にアクの強い叩き上げの刑事たちとの地道な捜査活動。それはそれで平穏な日々を送れるかに見えたが…。
過去に因縁のある上司、うるさ型の守旧派刑事、つかみどころのない同僚、爽子に憧れる新人女性刑事らと「日常的な事件」に関わりながら、心理捜査官として手腕を発揮。平凡に見える事件の思いもよらない深層を見抜く爽子の捜査眼にさすがの猛者たちも…。そうこうするうち、爽子にもある変化が…。

人間不信、自らの出自に対する不安、捜査官としての自信喪失…あらゆる負を背負い込んで傷ついていた爽子は人間らしさと自信を取り戻してゆく。

感想・レビュー・書評

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  • 黒崎視音『警視庁心理捜査官 KEEP OUT』徳間文庫。

    新装版が刊行されたので、11年ぶりに再読。前作で活躍した吉村爽子のその後を描くシリーズ第2弾。9編収録の連作短編集。

    警視庁初の心理捜査官として任命された吉村爽子は、無謀な単独行動による連続猟奇殺人事件の解決と引き換えに多摩中央署に左遷されていた。所轄の一癖も二癖もある刑事たちに揉まれながら、再び心理捜査官としての自信を取り戻していく吉村爽子。

    『第一話 所轄署刑事』。年の離れた夫婦の夫が突然死し、吉村爽子らが臨場する。夫の死は元看護婦だった若い妻による保険金目的の殺人なのか……

    『第二話 二二五』。タイトルの『二二五』は誘拐事件を表す警察の符丁。中学2年生の少年の身代金誘拐事件の背後にあるのは……

    『第三話 筋読み』。自宅の二階で急死した24歳の女性。心理捜査官としての自信を失いかけていた吉村爽子が検死官に促され、検死を担当し、抜群の推理力を発揮する。

    『第四話 ノビ師』。タイトルの『ノビ師』とは、忍び込み専門の常習窃盗犯のこと。女子中学生が被害にあった性犯罪事案と『ノビ師』がどう関わって来るのか。

    『第五話 ニューナンブ』。交番の警官を襲い、拳銃を強奪しようとした事案。実際の捜査から外された吉村爽子は独自の分析により犯人像を描く。そして、明かされる爽子の恩人との過去の出会い……

    『第六話 動機』。若い母親と同居する男が母親の前夫に刺されるという事案が発生。単純な愛憎事件と思われたのだが、幼い娘を警察署内に保護した吉村爽子は前夫の傷害に至った動機を解き明かす。

    『第七話 相勤者』。会社の上司がコンビニに買い出しに行った少しの間に起きた部下の男女の強姦事件。吉村爽子と部下の佐々木が事件を調査するが、佐々木は意外な人物を真犯人と推理する。その理由は……

    『第八話 地蔵背負い』。過去の事件で不起訴になった男の妻が自宅で縊死を遂げる。自殺か、他殺か……吉村爽子の推理が再び署内に波紋を投げ掛ける。

    『第九話 至急報』。幼い少女により吉村爽子にもたらされたシーズー犬の失踪事件はやがて、主婦が被害者となる傷害事件とも関連する。いよいよ過去の自身と決別する爽子……

    本体価格680円
    ★★★★★

  • シリーズ第2作。9話からなる短編集。短編集の割にはどれも構成がしっかりしており、特に第2話はよく練られていたように思う。全体としては心理捜査官というタイトルほど心理に特化した感もなく標準的な感が強かった。

  • 警視庁心理捜査官シリーズ2・・・順番は守ろうw
    主人公の吉村爽子はこの手の作品にそぐわず、欠点
    は前作にあったようだがなかなかの出来物
    任命されたプロファイラー(警視庁初心理捜査官)
    の役割をはみ出した単独行動で左遷されたようです
    (連続猟奇殺人事件を解決したが手柄にならない)
    短編だが所轄の捜査員としての能力は秀逸で、しか
    も自身の疵(幼い時の性的被害者)もあり特定犯罪
    には信念からの徹底捜査を行う、事件が進むにつれ
    て強くなっていく捜査官の姿に応援する(´・ω・`)

    ラストの手紙・・・心理捜査官復活は近いな

  • 警察ミステリー。
    黒崎視音氏、女性作家さんか どうかわからないけど、とてもわかり易く、それでいて、警察の上下関係など、凄く詳しい。
    主人公の吉村爽子が、男性社会の警察の中で、活躍して行く姿。
    そして、10歳の時に我が身に降りかかった災難の汚点に、未だ、ぬぐいきれない思いを秘めている事、そして、それだけでなく、その事で、家庭内から、母親からの疎外感が、この9話からなる話の中から、にじみ出ている。

    最初に読み出して、第2話の爽子の、原級差し止めという立場が、どのようにして、なったのか、前後の作品を読まずにいたのを、少し悔やみながら、読み進む。

    子供の誘拐犯、それも、この2話の展開にも、予想外であった。
    第3話の事件性のない、自殺現場から、どのように筋読みして行くのか?
    殺人と言い切る、爽子の洞察力。

    第4話 ノビ師・・・何だろうと、思いながら読むと、忍び・・・からの通称。
    この話から、爽子の身に起きた話が、ようやく分かりかけて来て、女性の敵を、告発するのには、なかなか、勇気が必要だという事も、・・・・

    第5話位から、面白さが、増長してくる。
    拳銃の事は、よくわからないが、ニューナンブという種類の拳銃目当て・・・囮になり、そして、堀田警部補が、爽子の10歳の時にお世話になった警察官である事も・・・

    第6話、ここでは、母親というより、鬼畜のような親である。
    身勝手な自分の思いの為に、幼い娘を人身御供にしているのには、読んでいても腹立たしい。
    その母親を怪しいと、見た佐々木巡査長。
    その自分自身の失敗した 人の見かたを逆手にとって、人を色んな角度から見据えるという。
    人を不幸にさせたくないという思い。
    そして、その佐々木の背中に、爽子が、投げかけた、不幸にならなかった最初の人間になる自身がある!との答え方も、凄く良かった。

    第8話、お金の為に、裕福な人を不幸に落とし入れる。
    ここでは、人殺し、それも完全犯罪になる所であった。警察一方的な、復讐であると怖いが、前科を推定すると、やはり加害者が、怪しく思える。
    少し手間のかかる調査だっただろうが、手間を惜しまず調査した結果が、逮捕にむすびついたと、思う。

    第9話、動物虐待が、人間に迄及ぶという怖さ。
    そして、母親が、良いと思っている事が、息子を駄目にしている。
    小説なのだが、子供に怪我も無くて、良かったと、主人公には悪いが、息をホッと吐いた。

    最後の爽子が、母親への手紙、これは、母へ伝えたい爽子の悲鳴でもあるのだろう。

    この後の作品も読んでみたい。
    この1冊で、9話の話は、読みがいが、あった。

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著者プロフィール

岡山県在住。『警視庁心理捜査官』で鮮烈デビュー。この作品は人気TVドラマとしてシリーズ化された。吉村爽子と柳原明日香という女性捜査官二人を主人公とする「心理捜査官シリーズ」は好評を博し、その続篇も読者に熱狂を持って迎えられている。警視庁特殊部隊を描く「六機の特殊シリーズ」も、組織や装備などのリアルな描写と作品内で展開される戦略の緻密さが凄いと評判になり多くの読者を獲得した。この2シリーズで警察小説の書き手として不動の地位を築いたが、近著はなんと時代物! 幕末の世を疾風のように通り過ぎた美少女剣士の物語、『緋色の華 新徴組おんな組士 中沢琴』。新境地を開いたのち、次にいかなる作品を引っ提げて打って出てくるのか、固唾を飲んで待たれている現況である。

「2023年 『交戦規則 ROE 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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