おれの墓で踊れ (徳間文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198946661

作品紹介・あらすじ

フランソワ・オゾン監督「Summer of 85」原作!
'21年8月公開

はじめての「心の友」を失い
傷つき混乱する16歳の少年の心理を
深く描いた話題作。

16歳の少年ハルは、
「死んだ友人の墓を損壊した」という罪で
逮捕された。
だが「なぜそんなことを」という問いに、
ハルは答えようとしない。
深夜、18歳で死んだ友人バリーの墓で、
ハルは何をしようとしていたのか。
バリーはなぜ死んだのか…

ハルが唯一信頼する教師オズボーンの勧めで
書き始めた手記から、次第に、
ハルとバリーの絆と破局、
ふたりが交わした誓いが明らかになる…。

最も残酷な形で恋を失った少年の混乱と再生を描く、心に響く青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • おれの墓で踊れ 児童文学書評
    https://www.hico.jp/sakuhinn/1a/oreno.htm

    映画『Summer of 85』公式サイト
    https://summer85.jp/

    おれの墓で踊れ - 徳間書店
    https://www.tokuma.jp/book/b585791.html

  • フランソワ・オゾンの『Summer of 85』を見たので(https://booklog.jp/users/yamaitsu/archives/1/B09LVJ74JP)勢いでこちらの原作を。映画は監督がフランス人だからフランスが舞台になっていたけれど、原作はイギリス。ゆえにキャラクターの名前こそ、アレックス=ハル、ダヴィド=バリー、ケイト=カーリ、と全然違うけれど、映画はものすごく原作に忠実だったことがわかって意外なくらいだった。

    本国での出版は1982年、日本での翻訳が出たのが1997年、そして映画公開あわせで文庫化されたのが2021年。10代の男の子の独特の言葉遣い、ダジャレや言葉遊びなど、翻訳はとても難しかったのだろうなと思うけれど、25年前の翻訳は少し古いように感じた。そもそも物語の中の時間は80年代だから、その古臭さも時代背景に合っていると言えなくもないけれど、ちょっと読みにくかったかな。

    原作のほうがよかった点は、バリーがあくまでハルから見たバリー(ハルの手記なのだから当然か)として受け止められたこと。映画はどうしても映像で見るから、ハル=アレックスの視点ではなく観客である自分の目で見たバリー=ダヴィドになってしまい、いやこの男はやめとけ、絶対クズよ?みたいなね、私の主観が入ってしまったから(笑)

    映画でもとても好きだったケイト=カーリは原作でも好きでした。結局バリーの死から立ち直れないハルの「喪の仕事」に最後までつきあい、大変真実をついた適切なアドバイスでハルを立ち直らせたのは彼女だった。ちなみに映画ではフランスに来たイギリス人だった彼女、原作ではイギリスに来たノルウェー人となっています。

    ティーンエイジャーの心理描写はとても共感できた。自分自身が若い頃に読んだらもっと響いたかもしれない。

    あと余談だけれど、映画ではヨットショップだったダヴィド=バリーの家業が原作ではCDショップで、もし映画化がフランソワ・オゾンではなくイギリスが舞台のイギリス映画だったら、もっと音楽重視の作品になったのかもとちょっと想像した。

  • 映画を観る前に途中まで読んで放置していたのだが、
    文庫化されたことがなんだか嬉しくて
    読み直す。

    当たり前だろうけど…
    映画よりずっといい。

    ハルのバックグラウンドがよく分かるからかな。
    ヴォネガットが好きで、
    トールキンとその友だちの(ww)ルイスを馬鹿にしている。

    〈死〉に興味がある、取り憑かれている16歳の男の子ハル。墓荒らしの容疑で少年裁判所に起訴される。

    ハルが自ら再生?するために書きたおす、彼の手記の物語。それを書かせた、彼の文才に興味を持っていた教師のオジーが素晴らしい。(大丈夫、トールキンのすばらしさは、オジーがちゃんと訂正してます。「だがトールキンについてはまちがってるぞ。時とともに知恵がましたらわかるだろうが」と言った。がくっ。)

    それから、魅力的な18歳の男の子、ハルが子どもの頃から欲しがっていた、魔法の豆缶をもった少年、バリー。

    バリーに私もすっかり魅了されてしまった。
    スピードに惹かれることを、丁寧にハルに話して聞かせるシーンが好き。
    愛おしくて儚くて、この子が消えてしまうのは目に見える。その刹那的な怖さに依存してしまうハルの気持ちはわかる。

    ハルのゆめの欠片を、自分のことのように読んでしまう危険なほど好きな本だった。

  • 出来事や感情を小説のように書き出す事で、友人でありボーイフレンドの死を乗り越えようとする少年に、何度もうるうる…。
    また、情景描写がとても丁寧でした。知らない異国の地の物語ですが、あたかも自分も海辺の街で生まれ育ってきたかの様な気分にになれました。
    解説もとても良かったです。
    これは、映画も見てみたいです!独特なハルの雰囲気をどう映画に落とし込んでいるのか、とても気になります。

  • 「summer of 85」を見て登場人物が何を考えて行動していたのかが少しでもわかればと思い原作を読んだ。
    読み辛くて集中出来なかったから読了に時間がかかった。

    映画を見た時に何人かが感想で「初恋を知り少年が大人になった」と言っていた意味が一番最後のあたりのページでようやく理解できた。

    ハルは「本当の友達」という理想をバリーに押しつけて神聖視してしまっていた。それを理解する、認めることが「大人になる」ことへの第一歩なんだなと。

    ここが自分の中で腑に落ちたので苦しかったけど読んだ甲斐があったと思った。

  • 常田大輝がすきな本の一冊として紹介されていたから読み始めたら見たかった映画の原作だった。
    本当にあった出来事が元になっていると知って驚いた。

  • 映画の理解を更に深めたいと思って原作読了。
    正直、びっくりした。フランソワ・オゾンがここまで原作に忠実に作ってると思ってなくて。英→仏だったり、みんな名前が違ったけど、殆どのエピソードや流れは一緒。何より空気感が一緒。凄い。
    小説は立ち止まったり戻ったりして咀嚼出来るのが良い所だなぁ。

    ハルの小説風手記を中心に進んでいくんだけど、この文章がまさに"読書家で英文学が得意な16歳の男の子"が書いてるみたいで、めちゃくちゃ好感。変な例えしたりとか良くわからん冗談とかあったり。言葉の選び方、並べ方とかがリアルに少年。
    独特の読みにくさも含めて、とても良い。

    第三部ラスト
    「経験は、銀行に預けている金のように、自分の中でだんだん積もり積もっていくものなんだろうか?利息がついて、いずれ本当に大きなものが買えるくらいたまるんだろうか? 
    -略-
    オレなら何を買うだろう?ためこんだ経験の全部で。オレたちだったものの全部で。」
    で号泣した。。。
    この抜粋だけじゃ伝わらんか。
    ハルはバリーとの7週間+お墓の上で踊るまでの10日間を、今は抱えきれないこの経験を、いつかは過去にして自分の中から引き出して昇華させなきゃいけないと分かってた。でもそれに見合うだけの何を、バリー以上の何を、手に入れられるっていうの?
    って叫びに思えました


    ハルはバリーに理想をみてた。
    良いところしか見えない。
    見ようとしない。
    初恋なんてそんなもんだし、それで良いはずだった。
    あんなに燃えた初恋がお互いだんだん冷めていって次にいくとか、良いところしか見えてなかった相手の色々が見えてきて現実を知るとか、普通なら訪れるだろう未来が2人にはなかった。
    それを、最後のケンカの原因になった女の子の言葉でちゃんと受け止めたハルは本当に凄い。

    大丈夫。ハルは前を向いてる。

  • 第201回 おれの墓で踊れ

    ヤングアダルトを代表する本の一つですが、映画化されたんだね

    2021年11月15日

  • まさにYA小説と言った感じ
    高校生のハルがバリーとの出会いと別れを通して生き方を見つけるストーリーは多くのティーンネイジャー達を勇気づけてきたのだろうなと思う
    Summer of 85 はこの小説をかなり丁寧に実写してあったけど、やっぱり小説の方がハル(映画ではアレックス)の感情が分かりやすくて良かったな。
    映画での「ダビドは存在しなかった」この言葉の意味が引っかかってたのだけど、小説でじっくり読んで、「バリーは存在しなかった」の意味が分かった

  • 映画から入って、何年も経ってこれを読む。
    結局バリーはなんでハルに墓で踊れって言ったのかよく分からなかった(笑)
    相手を支配して楽しむ性格のバリーだからそう言う事で満足感を得てたのかな?
    そして、相手に支配されたがってたハルだからこそその約束を守ったのか。
    幕引きが呆気なさ過ぎて本当にバリーはハルに飽きてしまったの?と映画で思って読んだのだけどその通りだったみたい。
    でも最後追いかけて事故ったよね。
    愛はまだあったのかな。
    重過ぎたからちょっと逃げたかったんだよね。

    編集部注によると、原題dance on my graveは英語の慣用表現dance on your grave(おまえの墓の上で踊ってやる=お前が死ねば万々歳、と言うほどの挑発を意味する)を反転させたものだと言う。
    となると、ちょっと考え深いよね。

    本書はちょっと文がハルの心情を書き連ねてるから散文的で読み辛くお国柄の用語が読むのに苦労した。
    映像作品万々歳である←情景掴み易い(笑)

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著者プロフィール

1934年イギリス北部生まれ。15歳から文章を書き始める。ロンドンで教職課程を終え、この物語の舞台となったサウスエンド・オン・シーで英文学と演劇を教え始める。60年代にはグロスターに移り、教師を続けながら僧院の僧となる。僧院での生活で「沈黙と熟考の大切さ」を認識したという。68年に児童書の書評専門誌の編集に携わっていた夫人と結婚、70年には夫妻で出版社を興し、児童書の書評誌の出版を始め、現在も各国の優れた児童書をイギリスに紹介。この業績に対し82年にはエリナー・ファージョン賞を贈られた。『ブレイクタイム』(1978・未訳)や『おれの墓で踊れ』(徳間書店)、『ザ・トール・ブリッジ』(1992・未訳)等、寡作ながら質の高い作品を送り出す作家として注目を集め、『二つの旅の終わりに』(徳間書店)でカーネギー賞とプリンツ賞を、2002年には国際アンデルセン賞を受賞した。

「2021年 『おれの墓で踊れ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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