有栖川有栖選 必読! Selection1 招かれざる客 (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198946838

作品紹介・あらすじ

あなたはまだ〝新本格作家〟笹沢左保の恐るべき
実力を知らない!

有栖川有栖がセレクトした、笹沢左保のベストミ
ステリ。

多重トリックで翻弄する記念すべき長篇第一作。

【有栖川有栖さん、大推薦!】
密室×アリバイ×暗号×?
いくつものトリックと罠を埋め込んだ1960年代の
華麗な〈新本格推理〉。
この面白さは決して古びない!

裏切り者を消せ!――組合を崩壊に追い込んだスパ
イとさらにその恋人に誤認された女性が相次いで
殺され、事件は容疑者の事故死で幕を閉じる。納
得の行かない結末に、倉田警部補は単独捜査に乗
り出すが……。アリバイ崩し、密室、暗号とミス
テリの醍醐味をぎっしり詰め込んだ、著者渾身の
デビュー作。虚無と生きる悲しさに満ちたラスト
に魂が震える。
〈トクマの特選!〉第一回配本。

〈目次〉

Introduction 有栖川有栖

招かれざる客

Closing 有栖川有栖

感想・レビュー・書評

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  • 笹沢佐保さんの長編

    容疑者の事故死で完結している事件に、納得のいかない倉田警部補が事件を追う(休暇中)
    前半は事件に関する報告記録、後半は警部補の報告録形式
    「男女の感覚」に時代を感じるものの、トリック、アリバイ、動機など複数の難題に向かっていく面白さがあり、題名の意味に震えた…タイトルがずしんと来る…

  • 第1部(資料)商産省労働組合スパイ殺害事件。被疑者死亡,捜査本部解散。
    第2部(刑事視点)倉田警部補が事件を執念で捜査。タイトル(招かれざる客)が犯行動機に繋がる。残酷な悲劇に胸が痛む。

  • 小松左京、かんべむさし、笹沢左保……SFミステリーの復刊続々! 「トクマの特選!」が仕掛ける、名作のアップデート|Real Sound|リアルサウンド ブック
    https://realsound.jp/book/2022/03/post-993452.html

    徳間文庫・復刊専門レーベル「トクマの特選!」始動 - 徳間書店
    https://www.tokuma.jp/news/n43801.html

    招かれざる客 - 徳間書店
    https://www.tokuma.jp/book/b592737.html

  • トリックなどは面白いのだが、とにかく前半が読みづらい。
    もし本屋で立ち読みしたら買わないレベルの読みづらさでした。

  • ● 感想
     有栖川有栖の「必読!Selecrtion」として選出されている笹沢左保のミステリのシリーズ第1弾。笹沢左保のデビュー作でもある。
     そのテイストは、本格ミステリっぽくはなく、社会派ミステリ的な雰囲気。その社会派ミステリっぽい体裁の中に、本格ミステリ要素が入っている。
     いくつかのプロットが入り組んでいるが、根っこにあるのは意外な動機。第1の被害者の鶴飼の恋人で、被害者側の人物だと思われた細川マミ子は、「子ども」に強い執着を持っており、堕胎させられたことから、鶴飼に殺意を抱いていた。「おなかの子の父親である鶴飼を殺害するわけがない」という動機のなさと、妊娠をしているのであれば、急な勾配の非常階段の上で殺害をすることは不可能という2つの点を、「おなかの子の堕胎を強いられたことが動機」に代え、そもそも妊娠していなかったので、鶴飼の殺害は可能にひっくりかえる。この意外性が、この作品のプロットの根っこの部分である。
     続いて、2つ目の殺人である二階堂殺し。こちらも、細川マミ子には動機がない。凶器がない。アリバイがある。という3つの謎がある。動機は、妊娠していないと気付かれたから。凶器はドライアイス。アリバイは、アリバイ証言をしていた貝塚という男を酔わせ、日時を誤信させ、嘘のアリバイ証言をさせていたというもの
     こちらは、どのトリックも弱め。それぞれ、1本のミステリを書けるほどのデキではないので、まとめて使ったという感じだろう。
     暗号も、郵便局の局番を利用した都道府県をいろはによませるという暗号が仕込まれている。これも、1本の作品にするほどのものではないので、デビュー作のサブトリックに盛り込んだのだろう。
     第1部が捜査資料であり、第2部が探偵役の倉田警部補の捜査という構成もそれなりに面白い。終盤は、探偵役の倉田警部補と、完全犯罪をなした細川マミ子の対決的な雰囲気まである。多数の本格ミステリ的な味付けを盛り込んだ秀作という雰囲気か。★3で。
    ● メモ
     組合を崩壊に追い込んだスパイとして、鶴飼範夫が殺害される。殺害現場は、商産省という勤め先の非常階段の上。その後、鶴飼の内縁の妻である細川マミ子と同室に住んでいた二階堂という女性が殺害される
     容疑者とされていたのは組合の執行委員でもあった亀田克之助という人物この人物は、自殺とも、事故ともとれる形で死ぬ。
     第1部では、この事件について、なるべく主観が入らないように、関係資料が収録されている。
     第2部は、倉田警部補という人物による捜査が記されている。倉田警部補は、容疑者である亀田にアリバイがないことを証言した亀田の元恋人が幸せそうな結婚をしている写真を偶然に見て、嘘の証言をしていることを疑ったことから、事件が進んでいく。
     倉田警部補は、亀田のスーツがラーメン屋でラーメン代のツケとして受け取られていることを割り出し、その背広から日記を見つけ出す。
     倉田警部補は、鶴飼が逃亡していた旅館を見つけ出し、暗号が書いてあった名刺が送られていたことを知る。名詞の暗号の解読。鶴飼と細川がかつて郵便局につとめていたことから、局番を利用した暗号を解読
     細川の二階堂殺しの凶器はドライアイス。これで消えた凶器の謎が解ける。
     二階堂殺しの際の細川のアリバイ。貝塚という男を酔わせ時間を誤信させ、嘘のアリバイ証言をさせた。
     「招かれざる客」というタイトルの意味。これは望まれないで生まれた子という意味。細川の鶴飼殺しの動機は、子供を堕ろさせられたから。
     細川マミ子が妊娠していれば、非常階段を上ることも困難であり、鶴飼殺しの犯行は不可能。しかし、堕胎しており、妊娠していないのであれば犯行は可能
     二階堂殺しの動機は、妊娠していないことがバレたため。

  • 1960年代のミステリー。有栖川有栖の帯文の通り、アリバイ有り、暗号有り、密室有りでてんこ盛り。探偵役の刑事の地道な捜査で一つ一つ、事件の紐を掴んで行く感じが良い。刑事の奥さんからしたら溜まったもんではないのだけども…。

    そしてタイトルの回収が切ない。犯人の動機というか、生きる目的というか…。刑事のところにもうすぐ望まれて産まれてくる命があるのもまた対比させるよね。
    犯人は身勝手なんだけど、それでも生きていく力を持った強かさは凄い。

  • 組合の計画を漏洩したスパイと、その恋人に誤認された女性が相次いで殺された!容疑者は固まっていたものの、その人物は不慮の事故死を遂げる!納得のいかない結末に、倉田警部補は単独捜査に乗り出すが──。

    物語の前半は事件の流れを追う捜査資料などが提示され、後半からは倉田が思わぬ偶然をきっかけに辿り始める真相への道が描かれる。犯人の目星はつく!だが、その道に立ちはだかるのはアリバイ崩し、密室、暗号など難問ばかり!提示された膨大な情報のピースがハマっていく後半が素晴らしい。

    著者は1960年に本作でデビューを飾る。松本清張を起点とする社会派推理小説ブームの中で、密室など本格ミステリの醍醐味を両立した作品。トリックも鮮やかながら、その背後にある犯人の動機。「招かれざる客」というタイトルの意味を知った時に訪れる悲哀がなんとも重く苦い。完成した絵に浮かぶ虚無感が余韻として響く。

    「裏切り」がテーマの本作。組合の寮建設要求を受けていながら裏切ろうとした商産省、組合を裏切ったスパイ・鶴飼、秘密裏に個人捜査を始める倉田など、この作品には多くの「裏切り」が潜んでいる。裏切りに見え隠れする利害、愛憎、信念。それを軸にして物語を振り返ってみると、また味わい深いものがある。

    あと、装画がめちゃくちゃカッコいい!!今まで読んだミステリの中で一番好きかも。

  • 裏切り者を消せ! ――組合を崩壊に追い込んだスパ
    イとさらにその恋人に誤認された女性が相次いで
    殺され、事件は容疑者の事故死で幕を閉じる。納
    得の行かない結末に、倉田警部補は単独捜査に乗
    り出すが……。アリバイ崩し、密室、暗号とミス
    テリの醍醐味をぎっしり詰め込んだ、著者渾身の
    デビュー作。

    ここまでトリッキーな作品だったとは。続刊も楽しみ。

  • 後半の謎解きの章はすらすら読めたな。
    タイトルの意味が分かると辛くなるな。状況には同情するけどやったことは計算高くて怖いな。

  • じぶんの読書地図を作ってくれた作家を挙げていくなら、有栖川有栖さんは欠かせない。そんなかたが選りすぐって撃ち込んでくれるという“必読! Selection”。迷ったが印象的な書影も相まって手を出してみた。笹沢左保さんは初めまして。さいきん読み慣れてきた派手さや特殊設定を伴うような小説ではなく、反対に地味な印象を受けた。ただこの地味さは当然ながらつまらないということではない。辛抱強く文字を辿っていった先に、非常に丁寧に謎の答えが並ぶ。この丁寧さも新本格の醍醐味のひとつであり、作家独自の魅力をあらわしていた。
    (令和に読むにはキツイ価値観もあったが、そこはさすがの有栖川さん。イントロダクションでさらりと一言を挟むことでショックを和らげてくれている。あの一文があるかないかで、作品を読み進められるかどうか変わってくると言っても過言ではないとおもう。常々有栖川さんの作品にある品性を心地よくおもっているが、今回も心構えができるようにとの配慮に感謝したい。)

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著者プロフィール

1930年生まれ。1960年、初長篇『招かれざる客』が第5回江戸川乱歩賞候補次席となり、本格的な小説家デビュー。 1961年『人喰い』で第14回日本探偵作家クラブ賞を受賞。 テレビドラマ化されて大ヒットした『木枯し紋次郎』シリーズの原作者として知られ、推理小説、サスペンス小説、恋愛論などのエッセイ他、歴史書等も著し、380冊近くもの著書がある。2002年、逝去。

「2023年 『有栖川有栖選 必読! Selection11 シェイクスピアの誘拐』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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